紹介文
オーストラリア・カウラの連合軍捕虜収容所で起きた第二次大戦史上最大の日本人暴動。先頭に立って突撃ラッパを吹き鳴らしたのは何者か? 偽名で死んだ若き零戦パイロットの謎を追ううちに、取材の足は豪州から東京、さらに四国へ。そして明らかになった40年目の真実とは…。日本ノンフィクション賞受賞作。
コチラに在住の日本人ならまず知っているであろう
この事件。
そして日本にいるワタシ世代には(第2次ベビーブーマー)まず
知られていないであろうと思われるこの事件。
例に漏れずワタシもコチラに着てから知ったクチですが
・ ・・すみません、あまり興味が無く縁も無くほとんど
概要しか知りませんでした。
で、たまたま手に入ったこの本。
帰国される方の帰国セールの時の箱買いにでも入っていたのか
本棚に入れっぱなしにしていたのですが
このたびめでたく読む気になって読んで見ました。
カウラ事件だけではなくダーウィン空爆の経緯なども
書かれていてとても興味深く読みました。
割と恵まれた捕虜生活だったのに何故に死を意味する
暴動に走ったのか。
そこにはやはり戦中の軍国教育の影響が濃く見とれるのだけれど
生存者の証言や記録から浮かび上がるのは
強く自分の意見を主張しないよく言えば協調性のある
羊のような日本人気質も見え隠れ。
実は暴動に反対なのに最後の投票(意外と民主的)で
賛成と投票してしまった人がほとんど、というのだから。
反対の理由はそんなことをしてどうなるね、というもっともな理由。
賛成してしまったのは理由は大義名分を大声で叫ばれると
ついしたがってしまった、みたいな。
印象的だったのは暴動の前に動けない捕虜は
「自己を処理」するようにいわれ何人かが並んで首をつり
次に首をつる人たちが前の人たちを梁から降ろし・・
ってところ。
証言によると淡々と行われたようですが・・。
投票と言う民主的な方法で、でもなんだかよく分からない理由で
暴動実行が決まり動けないからという理由で自ら命を絶つ。
極限に追い込まれて、というより「なんだかなぁ」と思うような理由で。
無念だったでしょうね。
ある意味激戦地でどうにもならなく亡くなった方たちよりも
痛ましい気がします。
この本では日折の人物に特にスポットを当てています。
収容所内ではそれが普通だったようですがこの人物も
偽名を使っており最後にこの人物の素性がわかります。
そして、決起に至るまでの彼の素の顔が想像されます。
皆、普通の人たちだったのに。
世界中で戦争が行われていない日はないほど
人間、戦争をしないで共存できるほど成熟していないのかもしれません。
それでも一部のカリスマが大義名分を持って
戦争を正当化させるとき、それを回避できる知恵と勇気を
国民全員がもっていれば避けられる悲劇というものも
あるのではと願ってやみません。
格好いいプロバガンダなんかに惑わされて
気がついたら自分の夫や息子を戦争に送ることになっていた、
なんて洒落になりませんからね。