紹介文
不幸なことなど何もない、しかし決して幸福ではない佐和子・25歳。その彼女の生き方を変えたのは、残された祖父の日記帳だった。パリで暮らした祖父の本当の姿を捜し求めることで、大切な何かを追い求めていく彼女が見つけた答えは!?息づまる展開の中、普通の一人の女性の成長を描いた宮本文学の傑作。
オレンジの壺 上 講談社文庫 / 宮本輝 【文庫】
主人公が悩んでいようが苦しんでいようが貧乏してようが、なんとはなしにお上品な雰囲気の宮本作品、嫌いではないのですが。
なぜか女性が主人公のお話は、大体の主人公がお金持ちのお嬢様育ちでお嬢様がお困りになっていたら周りの男たちはよってたかってお助けに参る的なのが多くないデスカ?
いや、
主人公ががつがつしてたらこのふわふわした作風にはならないから、主人公も
世間知らずなふわふわした乙女であることは仕方がないのかもしれないけれど、残念ながら女性の主人公に共感できる宮本作品にはまだ出あっておりません。
ということで好きなような嫌いなような微妙な宮本作品、久しぶりに読んでみました。
相もかわらず何不自由ないけど離婚したばかりの傷心のお嬢様が祖父の残した日記をもとに、もしかしたら生きているかもしれない叔母をヨーロッパまで探しに行くお嬢様・アドベンチャーです。
なにしろ父親は大企業の社長だし、働く必要もなければせっぱつまってもいない。
自分が始めた人探しの途中だって『そうだ、私はかよわい女なのだからパリでの行動はすべて滝井に寄りかかっていればいい』なんてごく自然に思って納得できてしまう
ざ・他力本願。
その上『お前はつまらない女だ』と言われ離婚されたのを根に持って、父親や、お嬢様アドベンチャーのお供の男にねちねちねちねちと何かと『私はつまらない女だから』『私は石のような女だから』と相手が『そんなことはない』というのを期待して(いないわけがないでしょう?)いるかのような発言の連発。
面倒くさい女ー。
ワタシはお友達になれそうもありません、あ、そちらからもお断りデスカ、そうですか。
ま、お誂えのようにこの旅のお供と恋の予感
ってところでお話は終わります。
祖父の日記に隠された謎!祖父はスパイだったのか?叔母は生きているのか?生きているならどうしてその母はうそをついたのか?ってあたりは面白く読めたので余計にこのお嬢様アドベンチャーエピソード、残念です。
ま、連載されたのが『クラシィ』だそうで、この甘々な何不自由ないけど傷ついている若くて(実は)魅力的な女のロマンスと冒険という設定は仕方なかったんでしょうかねぇ。
ワタシはもっと強く生きようとする女性のほうが好きだわ。
ま、カワイイ奥さんになり損ねた私のひがみかもしれないけどね┐(´д`)┌ヤレヤ