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テーマ:ショートショート。(1084)
カテゴリ:自薦集1
私は生まれたとき、呪いを受けました。
『16歳の誕生日に糸車のつむに指を刺して死ぬ』、と。 良い魔法使いが呪いの効果を変えた。 『死ぬのではなく、百年眠るように』、と。 やがては目覚める。 その時、私の両親も知人も生きてはいないでしょう。 しかし、私は生き返る。 死ぬわけではないのです。 それで、充分ではないですか? 私の両親にとっては充分ではなかったようです。 国中の糸車を焼き捨てた。 決して私が糸車に触れることのないように。 なぜ、両親は、糸車を焼いたのでしょう? なぜ、私に、糸車の操り方を覚えさせようとは考えなかったのでしょうか? 16歳の誕生日前なら、怪我をしてもいいのです。 失敗して指を刺しても、魔女の呪いは効果がない。 16歳の誕生日のその日だけ、糸車に触れなければいい。 私は糸車を知らなかった。 決して危ないものではないのに。 さわると危ない部分がどこなのか、知らなかった。 だから、「つむ」で指を傷つけたのです。 目覚めた時、私の前には、生涯の伴侶が立っていました。 両親も知人も、みな、私とともに眠ったので、私が眠りにつく前の百年前と、何も変わらなかった。 私は夫を愛しています。 私は両親に感謝しています。 でも… 胸のうちに湧き上がる消せない疑問。 (私は本当に幸せですか?) |
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