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カテゴリ:漫画アニメ評論
英訳どころか、日本人でも、一こま一こまの意味がわからないかもしれない。
夕凪の街桜の国(者:こうの史代)出版社:双葉社 ISBN:4575297445 みなもと太郎が”マンガ史にまた一つ、宝石が増えました。”と書いていたが…。 せつない。 何度も読み返した。 しばらく、他の本が読めなかった。 「広島のある日本のあるこの世界を 愛する全ての人たちへ」 ああ、原爆漫画、と、簡単に思わないで欲しい。 ”この街は不自然だ 誰もあの事を言わない いまだにわけがわからないのだ。 わかっているのは「死ねばいい」と 誰かに思われたということ 思われたのに生き延びたということ” 最初の『夕凪の街』は、被爆して生き残った女性が、恋人もできて、やっと”自分は生きていてもいい人間なんだ”と思った矢先に、原爆症を発症し、死亡する話だ。 ”嬉しい?十年経ったけど、原爆を落とした人はわたしを見て「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?ひどいなぁ。てっきりわたしは死なずにすんだ人かと思ったのに” 『桜の国』は、被爆二世の話だ。『夕凪の街』の女性には、弟がいて、疎開していたので被爆しなかった。妻が被爆者だ。その二人の娘の話だ。 ”母さんが三十八で死んだのが原爆のせいかどうか誰も教えてはくれなかったよ。おばあちゃんが八十で死んだ時は原爆のせいだなんて言う人はもういなかったよ”それなのに、自分も弟もいつ原爆症で死んでもおかしくない人間と決め付けられている。女の子の弟は病弱で、女の子の友人は、その弟が好きなんだけど、親に”会うな”と言われている。 話の中に、父親の墓参りの場面がある 平野家之墓 昭和二十年八月七日 享年四十一歳 昭和二十年八月六日 享年十二歳 昭和二十年十月十日 享年十五歳 昭和三十年九月八日 享年二十三歳 昭和六十二年八月二十七日 享年八十歳 少女の父の妹は原爆投下の日に、父の父は翌日に、上の姉は二ヶ月後に、下の姉は十年後に、被爆によって死んだのだ。 父の母、少女の祖母は八十歳まで生きた。 死ぬ前は、少女が孫だとわからずに、八月六日に死んでとうとう遺体が見つからなかった末の娘の友達だと思った。 「ああ、翠のお友達ね?ごめんねぇ、翠はまだ戻って来んのよ。 ほいで?あんたぁどこへ居りさったん? なんであんたァ助かったん?」 広島で、昭和二十年八月六日の、そしてその数日後の墓が立ち並んでいるのを見た人にしか、意味がわからないだろう、と、人に言われた。 感じ取ることは、人それぞれだろう。 けれど。 全く意味がわからない日本人もいるのではないだろうか。 まして、台詞だけ英訳しても、理解されることはないような気がする。 巻末に注釈はあるけれど、それでも、わからない、いや、わたしにもわかっていないのかもしれない。 それぐらい、深い作品だ。 ---追記--- bk1はてなのレビュー5漫画にトラバ送りました。
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