烏のいない日曜日
突然の病が彼らを襲った。それは多分海外からもたらされたもの。免疫力の高い一族が、運んできたんだ。彼らは、その病原菌に弱い。感染は、そのまま、死を意味した。あちこちで、仲間が倒れた。長老が、とうとう、宣言した。「この街はもうだめだ。生き延びるために、症状の出ていない若い仲間よ、ほかの地域に伝えてくれ。決してこの街に入ってはならぬ、と。感染したものは、すみやかに、ここに来て死すべし、と。我々の病んだ仲間の墓場にするのだ。隔離、それだけが全滅をさける唯一の道。」渡り鳥がはこんできた鳥インフルエンザ。それはカラスにとって、死の病であった。感染した仲間が群れを離れること、健康な仲間を、この病の伝わっていない地域で生き延びさせること。賢い彼ら、誇り高き黒い鳥、オオソドリ、ハシブトガラスは、ここTOKYOを、死の街に選んだのだ。死骸は生ごみとして、巡回する清掃車が処理していたから。「最近、カラスを見ないわねぇ。」公園の老女がつぶやいた。