ばんば牧場便り【 Vol.069 】道南馬めぐり2025
大変遅くなりましたが、2月に道南を訪れた時のお話です。以前も紹介いたしました、江差町の五厘沢という地区で、デビュー前の2歳馬の調教を見に行ってきました。前回のブログ日本海を真横に、馬主や育成牧場の方が馬をトレーニングしています。育成名人、乙部町の澤井節夫さんはコウシュハウンカイとシウンの明け2歳馬を調教しています。更新が遅れている間に能検が終わってしまいましたが、澤井さんが調教した2頭はホクトノユメとディレクティオで、9頭しかいない2分台の好タイムで合格!ディレクティオは22日に初勝利を挙げました。 2人で調教を行います。素敵な時間だな…と見とれていました。もちろん、山田さんの馬の父はアサヒリュウセイ。(こちらの馬はヤマツネラインです)この調教のすぐあとに競馬場に向かいました。初日は晴れ間も出ていましたが、2日目は大雪!馬運車を出せず、調教時間も遅くなりました。それから、近隣の牧場にお邪魔しました。ヤマカツエースの馬主、厚沢部町の高野勝紀さんも繁殖牝馬を所有しています。サツキヤッテマレがいました。ヤマカツプリンセスの娘、ヤマカツレイナとヤマカツサファイアも母となり、お腹に子を宿しています。左からレイナ、サツキヤッテマレ、サファイアサファイアは2年前、五厘沢の調教を初めて見させていただいた時の馬。時の流れの速さに驚きます。出産前に繁殖牝馬たちは、放牧地でそりを引かせて運動をしています。基本的には、高野さんの奥様が担当。この日はちょうど雪が降ったので、壁が出来て(人にとっては)走りやすいコースになりました。楽するためのショートカットはできません(笑)厚沢部町の川村貴樹さんの牧場にもお邪魔しました。絵のモデル、ヤマサンキレイ(左)は相変わらずキレイ。ヤマサンブラック(右)は、南北海道産駒特別で優勝したブラックウンカイの母です。ブラックウンカイの姉にあたるヤマサンティアラも繁殖入りしました。ティアラも一昨年、五厘沢で調教をしていた娘です。道南の方々は、距離をいとわずコウシュハウンカイやメジロゴーリキなど、十勝の一線級の種牡馬を付けています。長い距離を運転して名馬への夢をつなぎます。このとき、厚沢部郷土資料館にも寄りました。北海道の資料館ではたいてい馬にまつわる展示物があり、その地でどのように馬が使われていたかがわかっておもしろく、できるだけ寄るようにしています。しかし思ったより馬具が少なかった…。だからといって馬がいなかったわけではありません。資料館によって、展示物の多さに差があるのもおもしろいところです。当たり前すぎて資料がないのか、産業の中で動力であった馬を歴史とみるか。前者を埋めるために、多くの人に話を聞いておきたいと考えています。高野さんに聞くとこのあたりは運搬をする「馬車追い」がメインだったそう。仕事に行く前に、ふきんにたっぷりご飯を置いて焼いて食べた、大きなおにぎりの記憶があるそうです。上ノ国のそば店では「馬車追いおむすび」という大きなおにぎりのメニューがあります。検索していたら、いくつかの場所で、馬車追いという名の大盛りメニューを見つけました。若い方が多かったのでしょうし、仕事をしながら食べられる大きなおむすび、ということもあって今は「大盛り」のみが引き継がれているようです。話の中で、昔、森町砂原では当歳の草ばん馬があった聞いて驚きました。馬が多かったぶん、歴史も各地でさまざま。びっくりするような歴史が、たくさん埋もれているのだと思います。取材/小久保友香・小久保巌義