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2021年03月16日
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カテゴリ:牧場
皆様はじめまして!

帯広畜産大学・大学院生の矢野と申します。



現在、私は楽天競馬様と共同でばんえい競走馬を対象に「飼料」「微生物」「疾病」の3つの要素に着目し、これらの相互関係を調査することで競走馬をより健康に管理するための基盤データを構築することを目指した研究に着手しています。

今回は、太田アナウンサーより私たちの研究をご紹介する機会をいただきましたので簡単にではありますが、
1. この研究に取り組む目的
2. どうして「微生物」の解析を?
3. この研究が今後のばんえい競走馬に対してどの様に役立つか
4. 現在の進捗状況
といった内容を書かせていただきます。



1. この研究に取り組む目的

上述した様に、この研究の目的はばんえい競走馬を健康に管理するための基盤データを集めることです。

では現行の飼養管理は不健康な管理なのか!?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう訳ではありません。

実際、競馬場のほとんどの競走馬は1シーズン通してレースに出走し、我々競馬ファンを楽しませてくれています。

ですが、その中には蹄葉炎(蹄の病気)や疝痛(腹痛)といった病気になってしまう子達がいるのも事実です。

この様な病気は穀物飼料などの高栄養価飼料を多給する管理形態が一因とされていますが、レースで高いパフォーマンスが求められる競走馬においては穀物飼料の給与は不可欠です。

大切なのは健康を害さずに能力を最大限に発揮させることができる給与飼料のバランス。

しかしながら、ばんえい競走馬においてはこれを実現するためのデータがサラブレッドと比較して不足している現状にあります。

この様な状況下で、ばんえい競走馬を管理されている厩務員さんは、担当馬の状態を見極めながら、これまでの経験をもとに飼料設計を組まれていることだと思いますが、今のところ明確な基準はなく、さじ加減はそれぞれの厩務員さんや調教師さんに委ねられています。

想像してみてください。

もしも、馬体重が○○ kgで運動強度が△△のウマには□□の飼料を×× kg給与、といった様に飼料設計が標準化されていれば、飼養管理はうんとやり易くなると思いませんか!?

こういった情報を蓄積し、整備するのには膨大なデータと時間を要しますが、私たちが現在進めている研究はその基盤として必ず役に立つものだと思っています。



2. どうして「微生物」の解析を?

ばんえい競走馬を健康に管理するのだから飼料や疾病データを集めるのはわかるけど、どうして微生物?と思われる方も沢山いらっしゃると思います。

端的に言うと、ウマの栄養獲得において消化管内に共生する微生物は必要不可欠だからです。

ウマは自身の消化酵素では摂取した牧草飼料などを分解・利用することができないので、その役割は消化管内の微生物が担っています。

一口に微生物と言ってもその種類は多岐に渡ります。

牧草を分解するのが得意なヤツ(繊維分解菌)もいれば、穀物を分解するのが得意なヤツ(デンプン分解菌)もいます。

ばんえい競馬でも障害は苦手だけど降りたら速いキタノサムライみたいな子もいれば、
直行でも登坂できるけど降りてからはゆっくり歩くヤマノホシみたいな子もいますよね。

ウマの教科書を開くと、繊維分解菌が・・・、デンプン分解菌が・・・、と書かれていますが、大まかな分類はできても飼料の分解能力やウマのエネルギーとなる物質の特性は微生物の種類によって大きく違います。

そんなヤツらがばんえい競走馬の消化管内には何千種類と居て、互いに協力・競合しながら絶妙なバランスを保ちウマのエネルギー源をせっせと作り出しています。

この様に、ウマが摂取した飼料分解の大部分を担う彼らの特性を紐解いていくことはウマの栄養獲得や健康状態を理解する上でとても大切なことなんです!

「待てよ、飼料の分解を担うのは微生物で、しかもそいつらには得意不得意がある・・・じゃあウマが食べる飼料によって微生物の種類とか存在比率が変わるんじゃないか??」と思った方がいるかもしれませんが・・・

その通りです!

微生物は宿主が摂取した飼料の種類によって組成が変化します。

そしてこの変化が悪い方向に行くと、上述した蹄葉炎や疝痛の発症に繋がってしまいます。

だからこそ、「飼料」「微生物」「疾病」の3つの要素を統合的に解析していく必要があり、給与する飼料の種類や量が異なるウマのデータを集める必要があるのです。



3. この研究が今後のばんえい競走馬に対してどの様に役立つか

ずーっと先の未来の話を書かせてもらえるのであれば、微生物動態を起点とした健康かつ強い競走馬作りのための飼養管理基準の構築に役立つ研究です。

先述した「馬体重が○○ kgで運動強度が△△のウマ・・・」ってヤツですね。

とは言っても、この研究は3ヶ年計画で進めている研究なので、できることには限りがあります。

ですから、第一段階としてはこれまで取り組んできた「飼料設計の差異が微生物叢構成に与える影響」や「微生物叢構成の差異と疾病罹患頻度の関連」に関する研究をより規模拡大したうえで実施し、より正確で汎用性の高いデータを集めていくことが当面の課題になるかと思います。

そのうえで、穀物飼料の適性給与量や疾病の発症に関与する細菌群を特定できれば、今まで以上に健康なばんえい競走馬の維持・確保に役立てることができます。

そして競馬場だけでなく、生産牧場にもデータを応用させ、健康な競走馬資源の確保や引退して競馬場を去った後も種牡馬や繁殖馬としてより長く活躍できる環境整備に役立てていきたいです。

また、ばんえい競走馬だけでなく、飼養管理者に対しても役立つ研究だと思っています。


具体的には、「エンバク〇〇 kg以上給与すると体調崩すからダメ」ではなく

 ↓

「エンバク〇〇 kg以上給与すると、消化管内で△△や□□の菌が増えて××になるからダメなんだよな」


という風に、一連の流れを理解し、説明できるための知識を深めていただく絶好の機会だと思っています。



4. 現在の進捗状況

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、当初の予定通りに研究を進めることができていませんが、先日本研究にご賛同いただいている厩舎を数件訪問させていただき、厩舎で使用している飼料を少しばかり拝見しました。

具体的な給与量等はこれから調査させていただきますが、やはり厩舎によって使用する飼料に違いがあり、同じ厩舎でも競走馬によって若干変える場合もあるとのこと。

他にもサンプリング時間を統一できなかった場合を想定し、異なる飼料条件下で管理されているばんえい競走馬の糞便内細菌叢構成の経時的変化を調査させていただきました。

一定の時間内であれば糞便内細菌叢構成は大きく変化しないという解析結果が得られたので、今後の試験設計に活用していきます。

やるべきことはまだまだありますが、できる範囲で少しずつ研究は進めております。

これから忙しくなっていきますが、体調に気をつけながら精一杯頑張りますので応援のほどよろしくお願い致します!






最終更新日  2021年03月16日 17時08分24秒



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