2021/08/13(金)09:10
ばんば牧場便り【 Vol.38 】トレジャーハンターがいる網走市の佐藤久夫さん
オホーツク牧場めぐり、訓子府町の次は網走市へ。網走監獄や流氷が有名な観光地です。
看板を目印に、能取湖沿いにある佐藤牧場さんにお邪魔します。牛舎がずらっと並び、入ってはみたものの…佐藤さんはどこに?!
広すぎて電話してしまいました。
こちらには昨年から種牡馬入りしたトレジャーハンターがいます。2012年ポプラ賞、2013年ドリームエイジカップを制し、ばんえい記念にも出走していますがスピード馬のイメージもある馬です。
兄インフィニティー、妹クインフェスタも重賞勝ち馬という名血です。
筋肉が目立つかっこいい馬を発見。トレジャーハンターでした。とてもおとなしい。
佐藤さんによると「隣にいる牝馬とグルーミングするんだ。珍しい」と。その牝馬は、昨年ナナカマド賞を制したアバシリサクラの母、琴桜だそう。種付けのときはパワフルだそうで、オンオフがはっきりしているのですね。
今年生まれるはずのトレジャーの子は流産してしまったそうなので、来年に期待です。
トレジャーハンターが来たのは昨年春。種牡馬として導入した理由は「ほっぺすごいでしょう。あごの張りがすごい!」
また、血統的な理由ももちろん。きょうだいが走っていることと、タカラコマが入っていることが魅力だそう。
「帯広で、いかにオープン馬を作るか」。今の活躍馬を見ると、帯広ではパワーだけではなくスピードも必要ですよね。「サラブレッドと同じように血統を大事にすることで、安定した馬づくりにつながる」といいます。いい馬はどうしてできるのかな、と日々考え続けているそうです。
その佐藤さんが「私以上に血統を求めた」というのがウンカイを生産した帯広三井牧場・三井樹雄さん。「今は血統を語れる人が少なくなった」と話していました。
繁殖牝馬は6頭。生産馬のほか、タカラコマの血を引く馬など、血統的魅力のある馬たちが大事に育てられています。「障害力は遺伝が多いな」とのこと。
2019年の第17回北海道総合畜産共進会で最高位を受賞したウィナーサラも元気でしたよ!
https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201910020000/
このときの記事でも書きましたが、サラが引退した2018年は、ばんえいが存続できるか心配で、3歳で黒ユリ賞4着の活躍馬が引退することに驚きました。ばんえいが続くと信じ生産を続けた佐藤さんの勇気が実を結んだと感じます。
1歳馬は買った馬も含めて3頭いました。体力が付きそうな山の上の放牧地と下とを行ったり来たりしていました。
この山の上に放牧地があるそうです
肉牛を営む佐藤さんは1972年に網走市内から、今の場所に移動。
最初はお父様が馬、佐藤さんが牛を中心に営み、30年ほど前は馬が80頭ほどいたこともあったとか。「(重賞の)肩掛け30本だよ!」
今では200町の牧場に600頭近くの和牛がいる大牧場です。
息子さんが社長となった今は、佐藤さんが熱心に馬の面倒を見ます。
佐藤さんは共進会でも1等が多く、とても丁寧に馬を仕上げられます。
十勝のグランドチャンピオンとなったニュータカラコマもはじめは佐藤さんの馬でした。
部屋に所狭しと並ぶ馬の写真を見ると、引退時は違うオーナーだったような…?という活躍馬が多く、この馬の話を聞いてもいいのかな?と思うのですが「その馬が一番高いときにどうするか、なんです。経済を回す」。
ばんえいの世界は、馬の売り買いが盛んに思います。そのようにして、経済を回していくのが昔ながらの馬社会なのかな、と感じます。
以前は「ウィナー」という冠でしたが、網走市内の牧場が佐藤さんだけになってしまったということで、今は「アバシリ」。
今は少なくなってしまいましたが、網走、北見は名馬が多くいた地でした。
二世ロッシーニがいたのも網走市藻琴。楓朝(ふうちょう)は紋別市、
タカラコマがいたのは、網走市の東、北見市常呂町でした。「タカラコマの子は全部テスト(能検)受かったんだ」。
北見競馬のレース名にもなったペルシュロンのオナシスは網走の卯原内にいたそう。
オナシスの産駒には、初めて牝馬でばんえい記念を勝ったダイニミハル、その前年の優勝馬カツタローなどがいます。
過去のばんえい記念優勝馬を見ていたら、父がオナシス、楓朝、二世ロッシーニとこのあたりの馬たちが並んでいました。
ここからは想像ですが、オホーツク地区は林業が盛んだからパワータイプの馬が多く、結果ばんえい記念を勝つ馬が多かったのでしょうか…?
さて、馬が走り出したのは、コロちゃんという捨て犬が数十年前に家にやってきてから。
漁師町らしく、アラをコロちゃんのために魚屋に頼むなど大事にしてきたそうです。
その後もいろいろな犬が佐藤家にはいたそうです。守り神なのでしょうね。
猫もたくさんいました。
馬は「生きがい」。「夢をいかに追い続けるか」と80歳の佐藤さんは話します。
牧場の見学は可能で、すでにファンも訪れているそうです。
網走のアプト・フォーという商店街には、直営場外馬券場「アプスポット網走」があります。
網走市出身の七夕裕次郎騎手(浦和、岩手で限定騎乗中)の情報も展示されていました!
取材/小久保友香・小久保巌義