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2021年11月25日
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カテゴリ:牧場
11月13日、帯広市内で「令和3年度 第2回馬の担い手養成研修会」が開かれました。
重種馬生産の担い手を養成、確保するために日本馬事協会が主催。対象は「重種馬生産に興味のある方」で、興味があれば誰でも参加できる講座です。参加者が10人ほどと少なかったのは残念。今後コロナも明けて、行き来ができるような時期に行われるといいですね。

最初は馬文化について、NPO法人とかち馬文化を支える会の専務理事で、馬関連の著書もある旋丸巴さんの講演「十勝の馬文化」です。
「馬、といったらどんな場面を思い浮かべますか」。
初心者対象といっても、会場は馬にかかわる人が多くマニアックな答えが出ましたが(笑)、一般の方は競馬や乗馬など、馬の背中に乗る「騎馬」のシーンを思い浮かべるのでは、と思います。
でも実は、馬が家畜化されたとされる6000年(諸説あり)の歴史のうち、騎馬の歴史はというとそう長くはない。
最初の騎馬民族といわれるスキタイが存在したのが2800年前とされ、すぐ馬に乗ったとしてもそのくらいの歴史しかない。
それならば、それまでの間は馬は何をしていたのか―というと、それは牽引文化なのだ、ということにつながります。
ばんえい競馬が文化といわれる所以なのですよね。

次に十勝の馬の歴史を、昔の写真とともに説明していただきました。
馬耕をしながら子馬が近くをうろうろしている写真、かわいかった。資料館などでも馬耕をする馬は母馬ですよね。
話を聞いた方からは「子馬が畑荒らして大変だったー!はははー!」と言いながらも、子供は母が働く姿を見ているので馴致をしやすかった、という話も教えていただきました。


木材を運ぶ馬搬では、手綱のない馬の写真を見せていただきました。馬が自分で働いているんですね。
たまに馬そりに乗ったお嫁さんの写真を見ることがあるかと思いますが、これが必ず冬。
馬車ではなく馬そりなのはなぜか、というとほとんどの方が農業をされているので農閑期しか結婚式はできなかったということからです。
大津漁港でも馬は船を引き上げるのに活躍します。帯広の町中を、馬車が走ります。
「本当に馬なしでは生きられなかった」と、大げさな話ではなく、多くの方が話していたと聞きました。産婆が来るのも、誰かが亡くなったというときも。

今、帯広競馬場ではNPOが主催した思い出の写真コンテストの入選作が展示されています。場内には資料館もあります。
最初は「昔はこうだったんだなぁ」と感じるだけかもしれませんが、馬について知っていくうちに、1枚の写真から生活とのかかわりなど、いろいろなものが見えてくるかと思います。
道内の資料館ではほとんどの地域で、馬が開拓した歴史を残す道具や写真が展示されています。インターネットでも探せば出てくると思いますので、新たな視点で見ていければ、と思います。

それからは出前事業の紹介もありました。
NPOでは長年出前授業を行っているので、そりに乗って喜ぶ子どもの写真を見たことがあるかと思います。ただ、あくまでも「授業」。馬の歴史や文化について授業を行ったうえで、馬と親しんでいるとのことです。

馬文化を残すのに、ばんえい競馬は必要ないんじゃないか、と言われることもあるそうです。
それでもなぜ、ばんえい競馬が存在しているか。
それは、ばんえい競馬自体が産業として成り立っている(資料だけを残すとなると莫大な費用がかかる)。そしてさまざまな技術も残ります。馬の扱いだけではなく、馬具、診療技術、などもそうですね。
「『文化です』と自信を持って言える理由を学んでいってほしい」とおっしゃられていました。「十勝には歴史財産が残っているのだと皆に語っていってほしい」とも。

「馬の担い手」というと直接馬に触れ合うことばかりを考えてしまいますが、文化を知ることもその一つ。
重種馬生産が増えてほしいけれど、どうしても馬に触れ合うことができる環境にない、という方はこちら方面で学びを深めていくのも一つの手かな、と思います。そしていろんな人に語っていく人が増えれば…と思っています。

次はストレートに「ばんえい競馬について」という講演。帯広市農政部参事で、前室長の佐藤徹也さんによるお話で、ばんえい競馬のトップにいる方直々に解説してくださいました。
佐藤さんは、ばんえい振興室に来たのが2007年度。新生ばんえいになってからずっと競馬を見続けている貴重な方です。実は平地競馬のファンだったそう!思い出の馬はレガシーワールドだとか(笑)。

最初に画面に出てきたのは、競馬法第1条。どのような内容かご存知ですか。
「この法律は、馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るために行う競馬に関し規定するものとする。」
地方財政の改善を図るための競馬なのです。「今年ようやく寄与できるようになりました」との一言に重みがあります。
成り立ちなどの歴史についてはここでは割愛します。ばんえいホームページからダウンロードできる10周年記念誌などをご覧ください。
2007年(平成19年)、一市開催になってからの流れも紹介いただきました。「5、6年はどうすれば赤字にならないかのみ考えていた」。
そして平成23年に転機が訪れます。それは3連単のスタート。それまでもナイター競馬という取り組みがありました。そしてネット売上が増加します。平成19年は2割だったというのが今では、92%をネットが占めているそうです(コロナの影響もあります)。


これまでのPR活動、経済波及効果のほか歳出内訳、振興課の取り組みについても紹介していただきました。
平成27年度から生産者賞をスタートし、厩舎や駐車場のライン引きなどの改修。最近は「明るい競馬場へ」ということで、イルミネーションが増えています。
いいことばかりではありませんでした。本来馬券を買ってはいけない厩舎の人間への処分。今年の能検の件(電話が殺到したが市民からはなかったそう)。
そしてコロナ禍。ここで「来場者増」から「来場のない」中での運営へと、経営方針を変更します。
なかなか聞くことのない、競馬運営の話をざっとまとめると、努力や苦労などの気づきがありました。
そのうえで、競馬が行われていることを実感できます。ファンみんなに知ってほしい内容でした!



そして最後は、十勝管内の生産者によるパネルディスカッションが開かれました。
十勝馬事振興会の佐々木啓文会長(帯広)、宝田浩二副会長(豊頃)、青年部部長の川端陽一さん(音更)の3人です。進行役は家畜改良センター十勝牧場で馬を担当している田中翔子さんです。かいつまんで紹介します。会話内容は前後している部分もあります。
馬事振興会は、今は130人の生産者がいるそうです。以前は500人いたころもあったそうで、道東地区の他の振興会と集まったり、内地の競馬場を見たりしているそう。当初からの目的は「仲間づくり」。馬の世界は人とのつながりが大事だと、生産地にいくたびに思います。
青年部ができたのは平成4年ですが、当時は50人以下でそれだけ跡継ぎがいなかったと。青年部の活動としては、いつもばんえい記念の日にスタンド入り口近くで馬券の買い方講座を行っています。今年4代目となった川端さんは「気軽に来てくれれば」と話していました。生産に興味がある方は話しかけてみてください。




まず最初は「繁殖牝馬の交配相手をどうやって決めているか」。
これについて佐々木さんは「人間関係が強い」。その市町村で種馬を扱う人がいて、その人たちとの絆が強いということ。
ばん馬の血統をよく見ると、その町にいる父馬が、その町のいろいろな牧場の繁殖牝馬と交配しているのがなんとなく見て取れるかと思います。川端さんは「種馬を飼っている方に手取り足取り教えてもらっている」そうです。これぞ「担い手育成」ですよね。
馬の売買について、市場か、庭先取引か、という話も出ましたがみなさん庭先が多いとのことでした。「人脈がないなら市場を使う手もある」と。

「生産していて嬉しかったこと」という質問に、佐々木さんは「ばんえい記念に出したこと」。オイドンですね。
ばんえい記念に限らず、生産馬がレースに出るのは「子供が運動会に出るような気持ち」といいます。
「何にも代え難い経験ができるのは間違いない。儲けるなら難しいし、金目的ならやめたほうがいい」。
宝田さんも「佐々木さんの言う通り」。そして「今日まで続けられたことが嬉しい」。一緒に馬を始めた中で、残っている人は周りにそういないそう。
川端さんは「馬主に買われ、レースを走って上位に行くのを見ていくこと。考えていたより高い値段で買われたこと」。出産には事故もつきものです。今年も辛い経験をされたそうで「元気な馬を生産して行きたい」とのことでした。

参加者からの質問で、交配は人工授精か、本交か(サラブレッドのような馬と馬との交配)、という話が出ました。ばん馬は人工授精も認められているのです。
今回の参加者3人はほとんどが本交。それは、最初の話にも出たように交配相手ば人付き合いによるものだから、ということがあります。
佐々木さんは人工授精はやらない理由として、創業者である祖父から「馬は因縁の強い家畜」と言われてきたことがあると話していました。生命の尊厳に対する礼儀である、と。考え方は人それぞれですが、気持ちはわかりますね。
ここで、十勝牧場の田中さんから、純粋種の人工授精を十勝牧場で行っていることについて説明がありました。牧場には技術者もいて受胎率は8割と高い割合であるそうです。
ここ最近はヤマトタイコーやアルジャンノオーなど、十勝牧場出身の親から生まれた産駒が競馬場でも活躍していますね。

また、話の中で佐々木さんは「今やっていることが正しいんだと思わないこと」。血統も、育成方法も変わっていきます。今は競馬場で働く人が少なく、馴致にも時間がかかる。夏は広い放牧地に馬を放しますが、みなさん「クマが出て移動した」「クマがいるようだ」という話になりました。北海道の山なので、いるんですよね……。

さて、私からもばんブロで紹介するにあたり「これから生産をやってみたいという人にアドバイスを」とお願いしました。
佐々木さんからは、「腰を据えて生産してほしい。今回のような会で人間関係を作り、いろいろな人に聞けば、始める切り口はいくらでもある」。
そして「馬好きなら。金好きはやめたほうがいい」。昔「馬は儲かる」と聞いて入ってきた人はある程度経ったらいなくなっていったそう。そういうのを繰り返し、人が減ってきたのを見てきたこともあって勧めるのにも慎重な様子でした。
宝田さんは「必要なのは、土地、資産、技術、人脈」。そして「財力は間違いなくいる」。土地があれば夢を持てるかもしれないが、馬では食べていけないし、生産は24時間必要だから、時間の使い方も考えなくてはいけない。人脈を使っても、片手間にできない。素人が手を出すものではない。と、なかなか厳しい意見でした。それだけの覚悟は必要ということですよね。厳しいけれどおっしゃるとおりだと思います。
馬が好きなら自分で生産をしなくても、人に預ける手もあるという話もしていました。
川端さんも「本業あっての生産。馬を飼うのは難しい。経費がかかる、それに尽きる」。

話を聞きながら、20年以上前、私がサラブレットや乗馬の世界で話を聞いたときも、このような雰囲気だったなと思いました。
サラブレッドの世界では就業応援サイトの「BOKUJOB」開設など以前よりは体制も整い始めているとはいえ、それでも人不足。難しい問題ですね。
人脈が必要というのは強く思います。どの世界でもそうですが、人の縁を信じ、話を聞いて受け入れていく柔軟性がある人はすっとその世界に入っていくなぁと思います。全ては行動力。20年前、そのような状況の中、競馬の世界に入っていった人たちが活躍している話を聞くたび、ばんえいの世界でも…と思います。
馬の担い手を増やすための企画はこれからも行われていくと思いますので、今後も紹介していきたいと思います。

取材/小久保友香





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最終更新日  2021年11月29日 11時33分17秒



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