社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 会長 林 英樹様
平成21年10月26日社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 会長 林 英樹 様 川田 隆一 謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は地域福祉の増進に格別のご尽力を賜り、ありがたく御礼申し上げます。 早速でございますが、私は全盲のフリーライターで、川田隆一と申します。今般、林様にぜひともお聞き届けいただきたいことがございまして、失礼を省みず手紙を差し上げた次第です。なお、この文章は音声ワープロにて作成いたしております。誤字等の失礼がございましたら、何卒お許しください。実は先日私は、貴会の主催により神奈川県社会福祉会館で開催された「障害福祉ボランティアリーダー研修」(平成21年10月23日)に、パネラーとしてお招きいただきました。会のテーマは、「もっと自然に、もっと気軽に!~くらしの中の身近な『移動』を考える~」というものでございました。 この研修会に出席させていただくに際し、私自身が全盲で地理に不案内なため、最寄り駅から会場までの誘導をお願い致しましたところ、貴会ご担当者より、以下のようなお断りのメールをいただきました。 ※メール全文を原文のまま引用します。(引用ここから)Subject: 障害福祉ボランティアリーダー研修について Date: Wed, 21 Oct 2009 20:09:24 +0900川田隆一様遅くに失礼いたします。昨日はありがとうございました。23日の件なのですが、実はうちの課のシフトの関係で、当日のボランティアセンターにいる職員が1人しかおらず、横浜駅までお迎えにいくのが難しい状態になってしまいました。会館までお越しいただくのに大変恐縮なのですが、お一人で来て頂く事は可能でしょうか。こちらの都合で大変申し訳ありません。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。************************* 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会 県民活動推進部 福祉ボランティア・シニア活動支援担当 ※以下、担当者署名(略)。*************************(引用ここまで) 以下に、経緯をご説明申し上げます。 ご担当の**様のご希望で、10月20日に、かながわ県民センター内の貴会の事務所にて、打ち合わせをさせていただきました。その際、私から、○当日は一人でお伺いすること、○会場にはお邪魔したことがなく、道中が不安なので、最寄りのJR横浜駅から誘導していただきたいことをお願いいたしました。**様は、追って待ち合わせ場所と時間を連絡する旨、約束してくださいました。 そして1日待ちましたが、ご連絡がありませんでしたので、21日夕刻に、私から確認のメールを差し上げました。それに対して**様から頂戴しましたのが、上記のメールでございます。 私といたしましては、障害者の気軽で自然な移動をテーマとした研修会で、貴会が出席を依頼した全盲のパネラーの移動の保障よりも組織の都合を優先するのは、本末転倒と考えました。また、横浜駅から徒歩15分とお聞きした会場までの単独での移動にも危険を感じました。事前に横浜在住の視覚障害者に確認いたしましたところ、会場は慣れた視覚障害者にも行きづらく、危険箇所があるとのことでございました。 そのため、22日早朝に貴会へご連絡して、研修会出席をお断り申し上げましたところ、その後、**様から何度となくお電話を頂戴し、当日の誘導がかなうことになりましたので、予定通り出席させていただきました。 その間、**様には、一度上司の方とお話しさせて頂きたい旨、再三お願い申し上げました。しかしながら、上司の方からは電話1本頂戴できませんでした。また、研修会当日に、課長の**様からごく短い謝罪の言葉を頂戴しましたが、その言葉からはお気持ちを感じ取ることは到底出来ませんでした。**様は、私にお名刺すらくださいませんでした。このことだけでも、貴会の謝罪がいかに形式的で、誠実さを欠くものかを、如実に表しているかと存じます。 最終的には誘導してくださったのだからそれでよい、ということでは断じてありません。社会福祉の専門機関である貴会職員から上記のようなメールが発信されたこと、また、上司の方が新人の担当者に責任を押し付けて誠実な謝罪をなさらなかったことこそ、大問題だと痛感いたしております。 障害者の自然で気軽な移動について考える研修会にパネラーとして出席するために、私は沢山の時間を費やし、神経をすり減らしてお願いしなければ、安心して移動する自由すら得られませんでした。今回のご対応は、私たち視覚障害者の歩行環境の実情や移動の保障について、貴会の認識が皆無であることを図らずも露呈したもので、あまりに無神経なものと言わざるを得ません。 貴会に問いたいのは、社会福祉従事者としての職員の資質や意識ではありません。それ以前の人間性の問題です。会合に招いた全盲のパネラーから、「初めてで不安なので、最寄り駅から誘導してもらいたい」と依頼を受けたら、人間としてどんな行動を取るべきなのでしょうか。貴会職員には、社会福祉従事者である以前に、人としての思いやりややさしさが欠けているのではありませんか。 林様、社会に対して障害者への理解を啓発してくださるはずの貴会職員の皆様の意識を、一刻も早く変革してください。どうか、どうか、お願いいたします。 具体的には、次の2点につきましてお願い申し上げます。 1.本状において指摘させていただいた事柄につきまして、貴会の最高責任者として事実関係を把握してください。また、把握した事実関係を、書面にてお知らせください。 2.指摘させていただいた出来事について、貴会としての正式なご見解、ならびに 再発防止への具体的な取り組みについて、林様のお考えを書面にてお聞かせください。 なお、この手紙につきましては、一部の個人情報を除いて、全文をインターネットを通じて公開させていただいております。誠に勝手ながら、ご回答は平成21年11月6日(金曜日)までに頂戴できますようお願い申し上げます。また、全盲のため活字の書面を拝読できませんので、点字または電子メールにてご返信頂けましたら幸甚でございます。 末筆ながら、貴会のますますのご発展をお祈り申し上げます。 謹 白