めんどうはごめんだ

2015/05/24(日)14:58

突発性難聴 高圧酸素治療・・・やるなら一刻も早く

突発性難聴体験記(34)

突発性難聴治療のゴールデンタイムは2週間といわれており、治療開始は早ければ早いほどよいことに間違いは無い。高圧酸素治療(HBO)についても当然早く始めた方がいいのだが、前にも述べたシステムの矛盾が早期からのHBOを妨げているのが現状である。 最初に受診、または紹介された病院にたまたまHBOの設備があり、なおかつそこの耳鼻科医がHBOの効果を知っているという条件が揃わないと無理である。(設備があっても耳鼻科医がHBO反対派という病院が実際にあり、そこではHBOは行えない。)・・・すなわち何度も言うが運次第である。 HBO治療開始のタイミングと治療効果の関係について調べた論文「高圧酸素療法を併用した突発性難聴522症例の治療成績」 が2000年に日本で出されている。香川労災病院での症例を基にしたものである。RCTではなく後方視的検討なので突っ込みどころはあるかもしれないが、症例数が多いのでかなり説得力がある。 (ここには敢えて引用しないが、図1のグラフは特にRCTでないことに留意すべきで、高圧酸素治療群には重症例が偏って入っていることが本文を読めばわかる。従って高圧酸素治療群の方が成績が悪いのは当然なのである。) この論文で注目すべきは以下のグラフである。 I群は発症7日以内にHBOを開始できた患者で、具体的には最初から香川労災病院でステロイド+HBOを開始した患者か、最初他院でステロイド治療を行っていたが極早い時期に香川労災に紹介されたおかげで発症7日以内にHBOを開始できた患者である。 II群は前医でステロイド治療を受けて無効であり、かつ紹介時期が遅く発症8日以後にHBOを開始した患者である。(私の場合こちらに入る) I群とII群との差はグラフから明らかである。I群の方が明らかに改善している患者が多い。 「著明回復」や「回復」などの細かい定義は本文を参照していただければいいが、改善率はI群で66.6%、II群で38.8%と発症7日以内に開始した方が断然成績がいい。発症7日以内に開始すれば7割近くの例で聴力が改善するのである。 さらにHBO開始時期を細かく分類して比較したのが下のグラフ。(紛らわしいが、この文献では高圧酸素治療をOHPと略している) 縦軸がHBOを開始した時期で、開始時期が遅いほどHBOの効果も低くなるのがわかる。特に発症15日以後の開始例からガタンと効果が落ちる。 実は私はこの文献を入院前に読んでいたので、何としても発症14日以内にHBOを受けられるようにと考えていたのである。(実際にはシステムの問題と、私のとまどいから17日目からの開始になってしまったのは以前書いた通り) 昨日今日と長々と書いてきたが、結論は自明である。 突発性難聴に対してHBOは有効であるが、発症7日以内、ギリギリ遅くとも14日以内に開始しないと効果が期待できないということである。 しかるに現在の医療システムの中で発症7日内にHBOを受けるのはかなりむずかしい。多くの場合ステロイドの効果が無かったときに初めてHBOのある施設に紹介されるからである。 どこにHBO設備があってかつ突発性難聴に使用可能かなどを患者の側で調べて強引に計画を立てていかないと無理なのである。 患者の立場というのは弱い。患者から担当医に自分の希望をあからさまに主張するのは憚られる、あるいは担当医に全てをお任せすべきと考える人の方が多いだろう。しかし実は突発性難聴に限っては耳鼻科医も何がベストかわかっていない。医学的な矛盾が無い限り患者の希望が最優先されるべき疾患なのである。

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