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カテゴリ:Tomoest
その41 ~美形~
金糸雀の反応にちょびっと満足した私は金糸雀の後ろの存在に絶叫してしまった。 「痛ぇーな、ったく! なんで俺まで…。」 金糸雀の後ろでドシンと言う音と共に尻餅をついて現れた男性が一人…。しゃっべった。 誰? っていうかなんで? まさか…? 想定の範囲外ってのはこの事? 私、何やった? なんかした? 召喚魔術? ありえない!? 私、魔術師じゃないもん。 未知なる者の影響は思考を徹底的に破壊するらしい。 目を大きく見開いたままで必死になって考える。って言うか、驚いた顔を戻せない。 えーっと、ちょっと待って。私、ベリーベルを実体化させようとして、それから…。 思いついた言葉は…理論的にあっていそうだけどそれを認めるのが怖くって、それに…。 でも現実にそうだから、ええっと、う~ん…。どうしよう? 聞いてみようか? いや、それはできれば…。じゃなくて聞かないといけないのよね。でも…ありえない。 それは十数年、私が信じ込んできた事を裏切られる事になりそうだし…。 やっぱり………、女は度胸だ! よし、聞いちゃえ! 「も、もしかしてピチカート?」 恐る恐る金糸雀の後ろに座り込んでいる男性に聞いてみる。 声を出して少しは緊張が解けたのか、男性の顔をじっくりと見ることが出来た。 すごい美形だ。なんていうかギリシャ彫刻を現代っぽくした感じ。 本物のギリシャ人よりギリシャ人ぽいと言うか、美しすぎる。 ハリウッドスターでもここまでの美形がいるだろうか? ただ…、なんというかTシャツにジーンズと言う姿はギリシャ彫刻っぽくないのだが。 「なんだよ。そうじゃなかったら俺は誰なんだ? 雛苺様のマスターさんよ。」 いかにも迷惑そうな厳しい視線を私に向けて男(超美形)は言った。 そして髪をポリポリと書きながら、ゆっくり立ち上がってベリーベルを睨みつける。 「おいベリーベル! これはいったいどういうことなんだ? 禁忌を解除、それも実体化なんてたかが人間にできることじゃないぞ。 それにこんな強力な聖句があるなんて俺には聞いたことがねえ。って、ん?」 男はそこまでいいかけて、はっとなって口を閉ざした。目の前の金糸雀を見て固まる。 金糸雀は金糸雀で私の質問に驚いて振り返ったまま大きくぽかんと口を開けたまま固まっていた。 一瞬の静寂…というより時間が止まったって感じ。 「ピ、チ、カート…かしら…?」 ようやく金糸雀が声を出した。 その声に反応するように男は金糸雀に向かって土下座した。 私の部屋には違和感たっぷりの超美形の大柄な男性。しかも筋肉質で引き締まっているボディ。 土下座と言う態度がこれほど似合わない男はいないだろう。いやその姿でさえ美しいかもしれない。 本当にピチカートなの? そんな疑問でいっぱいになった。 「お、恐れ入ります、シスター。俺、いや私(わたくし)めがピチカートでございます。 このような姿をわが敬愛なるシスターにお見せするのは心苦しいのですが、 これが私(わたくし)めの本当の姿でございまして、その…、禁忌を犯した罰はうけますゆえ。 その…どうかお許し下さい。これは不可抗力なのです。雛苺様のマスターがした事でして…。」 私がずーっと前からイメージしていたのはなんだったの? 小さく愛らしくてかわいいメイドさん姿のピチカート像が音を立てて崩れていく。 確かにベリーベルのように人工精霊には男もいるかもしれないけど、ピチカートは女だと思っていた。 …つづく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007/06/08 03:00:16 AM
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