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ペトラプト・パルテプト

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< Scene.2-2>
I could not say, “Thank you” and I could not see the truth.



今からおよそ300年ほど前、人類にとって科学が発達しだした頃、錬金術や魔術は衰退の憂き目を見るようになった。

万人に扱える科学とごく一部の限られた者しか扱えない魔術では当然の結果だと言える。

科学は大衆の目に映るものであり、魔術は秘匿を常とするものだからだ。

いくら優れた魔術を開発してもそれを安易に他人に教える魔術師なんかいない。


そもそも科学と魔術は相反するものだから当然、人類に与えられた選択肢は一つ…。

そして、ごく自然に導かれるように科学は選ばれた。

今から見ればそれは当たり前の事だろう。

人類の文明の発達のために正しい選択であったことは今日の歴史が既に証明している。

人間だけが他の動物に抜きんでて優れた文明を築いている。悪い事ではない。

むしろ自然界では非力な人類がこの星で繁栄を極めているのだからいいことだろう。

俺だって現代に生きる人間だ。科学の恩恵にあやかり過ぎている位だからな。

では選ばれなかった魔術は完全に滅んだかと言うとそうでもない。

世の中には科学では証明できないが魔術では実践できる事がまだまだ多いという事実がある。

科学で解明されていない奇跡や神秘とかで表現される事象も魔術的にほぼ実践可能だからだ。

実践…そう実践、魔術って奴を的確に表現するならそうなるだろう。


ただ魔術としての性格上、秘匿であることには変わりなく、一般の人々には認識されていない。

違う意味でなら現代においてはTVや映画の中でありふれたものになってしまった感があり、ご都合主義にはもってつけの材料となった。

でも現実は…そう現代においても魔術は滅びることなく今も続いている。

滅びるわけがない。世界は未だに神秘に満ちている。

ならばそれを探求する者がいても何の不思議もない。


科学が発達しだした当時の魔術師たちはそれらに何の脅威も感じていなかった。

科学が世にはびこれば自分たちの領域が侵されるなんて考えるものは一人としていなかった。

科学と魔術では目指すものが根本的に違うからだと言う魔術師もいたが、そうかもしれない。

まぁ、もっとも現代じゃそれもかなり曖昧なのかもしれないがな。

それに魔術師なんてものは知識に対してかなりの貪欲だといえる。

いかに相反するとは言え利用する価値はないとは言えない。

だから科学の発展を自分たちの探求に応用し、さらなる深みを目指した。

魔術が全体的に衰退したとしても、個々で己の目指す魔術を修練すればいい。

ただそれだけだ。


こうして科学者たちは魔術を頭から否定するが魔術師たちは科学を受け入れた。

そのことが現代社会にどう影響与えたのかは言うまでもないだろう。

魔術なんてものは過去の幻想とやらになっちまった。空想でもいいだろう。


それでも魔術を世間に広めようと馬鹿な考えを起こした魔術師もいたらしい。

気持ちはわからなくもないが誰も相手にされない事は子供でもわかるだろう。

そういうのは真面目にひっそりと魔術を研究している者にとってはいい迷惑だ。

迷惑だけならまだぬるいってところだな。その先にあるものは人類にとっての危機だからだ。

いくら自分が出来るからって、それを広めると言う事は科学文明を退化させる可能性も否定できないってことらしい。

そう考える魔術師が大勢いたのは確かだ。

いたというより科学を受け入れた時点で近代の魔術師たちはそれを危惧し始めた。

科学文明の退化は自分たちにとってマイナス要因にしかならないと。

俺だって隣町に行くのにわざわざ魔術を浪費するより、小銭を払って電車に乗ったほうがいい。

危険な多次元魔術法程式で空間を捻じ曲げて転移するより飛行機に乗ったほうがはるかに安全だ。

たばこに火をつけるのも100円ライターで充分用が足りる。

見世物なら話は別だが結局は手品扱いだ。…まあ確かに要領は手品とさほどかわらんがな。

そういうわけで一見、魔術と科学は相反するものながら、科学の発達に関しては現実問題として容認せざるを得ない。

むしろそれだけではなく擁護せざるを得ないまでに科学が発達してしまったのだ。

魔術師が科学の発達を擁護? 不思議に見えるこの行為もそうせざるを得ない事情がある。

科学の発達に伴う経済社会の繁栄もまた魔術の探求と言う点において障害になり始めたからだ。

それはわからんでもない。金がなくては飯も食えないからな。

そうでなくても探求って奴は金がかかるもんだし、中世の頃のように王侯貴族がスポンサーになってくれる時代でもない。

かと言って商売などに手を出すほど魔術師たちは落ちぶれていない。いや暇ではないと言ったほうが正しいか。

だったら自分たちの手で魔術の秘匿を守り、資金を調達して、かつ科学の発達を擁護すればいいという結論に達した。

安易に思える結論だが魔術師たちにギルドと言う概念が生まれた事を考えると悪くはない。

むしろそのことで飛躍的に魔術が発達する要因を作ったのだから。


18世紀になって科学の発達を阻害するものを抑制しようとする名目で魔術師ギルドと呼ばれる団体が欧州各地に生まれ、それらが統廃合を繰り返し、世界的な組織である魔術協会が設立された。

それが1747年のロンドンでの出来事だ。もちろん表の歴史年表には載っていない。

あくまでも裏社会の裏組織、歴史の影の存在なのは言うまでもない。

そう『魔術は秘匿を常とする』ってやつだからな。

それが僅か数年で欧州中のほとんどの魔術師たちを魔術協会の会員に収めた。

ここで何故、他人と係わりたがらない魔術師たちが団体を組むと言う矛盾した行為をするのか疑問が生まれると思うが、それには理由がある。

魔術協会は魅惑的な餌をもって入会させたのだ。

そうそれが当時の革命的な魔術である『魔術法程式による魔術の実践』だ。

組織と言うやつは大きければ大きいほど強くなる。

魔術協会は欧州に限らず全世界各国も含めて世界規模の組織を瞬く間に作り上げた。

魔術師を名乗るものならば協会に属さなければ偽者と言われるほどまでに。

そういうわけで魔術師は魔術協会の管理の下、科学万能のこの現代でも存在する。



          to be continue…





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最終更新日  2008/02/07 04:03:53 AM
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