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カテゴリ:女シリーズ
あれはまだ夏になる前のことだった。
私はいつものように、街市(市場)へと買い物に行った。 その帰り道、私がいつも行っている 家の近くのスーパーに寄ってから家に帰るはずだった。 確かにその予定だった。 市場帰りともあって、かなりの買い物袋をぶら下げていた。 信号を渡ったらスーパーである。 だが、この信号待ちをしている時に バスケットボールを持った青年らしき中年? (どっちかわかりません)と目が合った。 あごのホクロから長い毛が垂れている。 げ・・・・ 信号が青になりスーパーの階段を上り始めた途端 背後から声を掛けられた。 私は地元に知り合いはいないので 声なんて掛けられるのは警察か、勧誘ぐらいである。 その私がどうして?何か落としたか? するとさっきの信号で目があった ホクロから長い毛が垂れた 見栄晴似の青年である。←(欽ちゃんの見栄晴) 「○△マタキテ□☆◎・・朋友 好0馬?」 広東語は少ししかわからないので はっきり何を言ったかはわからない。 「朋友(ポンヤウ)」(=友達)だけは聞き取れた。 するとまた同じ事を言っている。 うん、確かに友達と言っている。 コイツは私と友達になりたいと言ってるのか?←(自己解釈) あごから毛垂れてるこの人が? ヤップンヤン(=日本人)の私と? この人は私がヤップンヤンて知ってて言ってるのか?? 私は日本人とバレないように ただ訝しげな顔をして顔を振ってみせ スーパーの中へと入っていった。 するとどうだろう。 なんと、コイツ(怪しげなのでいきなり変体扱い)も 一緒になってスーパーに入ってきたではないか。 ぎょぎょっ! 何か知らないけど私の周りをうろちょろする。 さっきからあっち行き、こっち行き 私の視界に入ってくるではないか! き、きもい・・・ 私はコイツを撒いてやろうと スーパーの中を各陳列ごとに廻り始めた。←(出口は1つしかないスーパーで撒けるのか?) それも私は楽しい買い物をしてます と言わんばかりのスローだ。これで撒けるだろう。←(ちがうだろ?) するとすかさす視界に入ってきて、近づいてくる。 げっ!また何か言ってるよ・・・来るなよ・・・ 各陳列ごと廻ってるはいいが 誰もいない通りに差し掛かり 立ち止まっているとまた、ヤツが来る。 私に笑顔を向けて「いかないのか?」と ホクロから長い毛が言っている。←(毛が言っている?) ヤツはその通りに私を呼び込むかのように 入って行ったので私はすかさずUターンをし また一から廻り始めた。←(追い込まれているじゃん) とうとう、袋小路状態になってしまった私は どうしたものかと考えあぐねていたら電話が目に止まった。 だ、旦那に電話だ・・・ さっそく豊に電話をし、状況を話し 気持ち悪いんだけど どうすればいいのか聞いてみた。 すると、豊も豊でどうすればいいんだ?と 判断しかねていた。 ヤツは電話の近くのレジに並び始めた。 しかし、時間稼ぎをしているのか、 あっちのレジ、こっちのレジと何度も並びなおしている。 私達の話している言語が ヤツにバレないようにこそこそ話になる。 なんで被害者の私がこそこそしなくちゃいかんのだ!! でも、日本人とバレてもいけない。 すると、豊が「そいつを出せ」と言う。 え?コイツを電話口に出す? 肩をトントンと叩いて「電話です」と 逆に声を掛けろと言うのか? で、電話を切って現場に残っている私が 何かされたらどうするのだ? そんなことはできない。怖すぎる。 豊にできないと告げ、 また一から考え始めた時にも ヤツはまだレジで時間稼ぎをしている。 「会社に来い」と豊が言った。 「会社までは来ないだろ。来たら事務所に電話して来い」 おおっっ!頼もしいお言葉! 私は意を決し、豊の会社に行く事に決めた。 さっそくレジを済ませる。 ヤツの姿は見えない。 よし、今だ!と 私はまるで軍隊のように突撃するかのごとく 前進し店を出た。 げっ!外で待っていやがった!!! 私は立ち止まることなく バス停まで進んだ。 ヤツは私が家に帰るものだと思って付いてくる。 バスケットボールがポイントだ。 バスケットボールの色がやけに映えるから窺いやすい。 そして、未だ、バスケットボールが追っかけてくる。 家の近くの道を通ってはならない だから、普段あまり通った事のない道を行く。 何ブロックしたら曲がらなければならないが、 何ブロック先で曲がるのかもよくわからないが、 道を間違えることなく進まなくてはならない。 途中、迷っていたらすかさず声を掛けられるからだ。 何ブロックしてから右に曲がりバス停へと行く。 だが、普段通らない道だったが故 ポールで行く道が塞がれていた。 私は急いでポールから抜け出し バス停へと出た。 ここに着いたらヤツの姿は見えなくなり 家に帰ろうか? と一瞬思ったが、道端でばったり会ってもいけないので やはりバスに乗って豊の会社へと行かねばなるまい。 まだ、汗をかく季節でもないのに 私一人汗をかいている。 こんなことは初めてだ。 追われるのは鬼ごっこくらいだろう。 しかし、なんとも気持ち悪い。 喉に何かへばり付いているくらい、 気持ちがすっきりしない。 心臓に悪すぎる。 私はぜえぜえ汗をかきながらバスへ乗り込み、 買い物袋からネギの頭を出しながら 豊のいる会社へと向かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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