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K/Night

K/Night

序章

「・・・・おい」
「あ、先生」
「何処へ行く」
「いや、ちょっと忘れ物を・・・・」
「お前、先刻もその手を使って逃げようとしたではないか。もう騙されんぞ。今日という今日はお前をみっちり指導してやるからな」
「え゛ー?!」
「なぁ、今日の帰り甘味屋行かね?」
「また団子か?好きだなぁ、お前も」
「・・・・っ!・・・・僕は何も見なかった・・・・良いじゃん!な?」
「あぁ・・・・もう嫌だなぁ・・・・姿見えないのに耳元でボショボショ言われるのっていじめだよねぇ・・・・」
「・・・・・・・・」
「おい、其処。立ち止まらない!」
「へぇ・・・・中々面白い人間がいるんだな・・・・」
「面白いとか面白くないというのは問題ではなくてな、その前にいい加減たい焼きを食い終わったらどうだ?聞いているのか?!『仄夜』!」

男は振り返る。脇を通り過ぎていった『彼ら』の後姿が見えた。当然の如く、『彼ら』は気付いていない。
男は満足そうに口の端を上げた。
         ――――ある晴れた日、学校の昼下がりにて――――


手紙が届いた。白い封筒に白い便箋。繊細な文字。
“風吹きて 再び現る 現世(うつつよ)かな”
差出人は分らない。皆に言おうか言うまいか。・・・・。よし、言おう。
「朔!縁!変なのが家に届いた!見てみてよ!」
2人は面倒くさそうに手紙を受け取り、一通り目を通す。しばしの沈黙。
「・・・・僕は何も見なかった」
「第一声がそれか!!?もっと他に言う事があるだろうが!!」
「めんどくさいなぁ、もう。アンタらでどうにかすればいいだろう?僕は無視するよ」
そう言い終わると1人でスタスタと歩き出してしまった。慌てて2人で追いかける。しかし縁の歩きの速いこと。その姿風のごとし。そんなに嫌なのか。
だが2人も負けてはいない。縁は風のようでそれでなし。
果涙が鉛筆を投げれば頭に命中。当たり。当たり。縁転ぶ。
恐る恐る見上げし顔2つ般若の仮面。
(そう!今の2人の顔は妖しより恐ろしいのだ!!)
「ご・・・・ごめんなさい」
喉の奥から搾り出した震えた声。
「俺たち友達だもんな?仲良く謎解きしような?分ってるよな!?」
朔の威しは絶対効力。

縁は諦めるように首を振った。
「・・・・分ったよ。果涙、もう1度手紙見せて」

所拠に友達同士にみえる少年3人。そうそうこの子達でさぁ。
一見“普通”の学生にしか見えぬ彼等ですが、彼等には“彼等”にしか分らぬある秘め事があったンですよ・・・・それは何だって?
さぁさぁ皆様御拝聴!
少年達に憑いてしまった数奇な“縁”数奇な“運命”数奇な“宿命”
彼等の出会いをお話ししましょう!
そうそう、初めに注意を1つ。
どうか最後までお聞きくださいますよう――――
言の葉とは感染るもの。
中途半端に聞こうものなら大変な事になりまさぁ。

ほーら・・・・“彼等の話し”に気付いた“妖し”が騒ぎ出してきている。
おっと恐がらないで!
“恐怖”は彼らの好物の1つですからねぇ・・・・

さぁ!まっこと不思議で奇怪、毀壊(キカイ)、規誨(キカイ)な話の始まりだよ!


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