プロローグフェルメリア大陸。其処はあらゆる種族が共存している大陸だった。 人間はもちろん、時に人を襲う魔物。人の魂を糧に生き、魂を与えた人と契約を結ぶ悪魔。大きさは様々だが、美しい姿をした巨大な魔力を秘めている妖精。自然を愛し、怪力を誇るドワーフ。辺境の地には人獣等もいる。 その大陸の東に位置するラングレス国で、その出来事は起こった。 軍事国家という歴史を持つラングレス国も、もう既に何百年という歳月を他国と協調し、平和を守っていた。軍事国家の名残を見せるのは、今やラングレス王率いる近衛部隊、セルヴェイスを筆頭とした白騎士団だけだった。 城下の民は大きな争い事が時に起こるが、長く続く平和に不満を持つ事もなく暮らしていた。 そのラングレス国には美しい姫がいた。父親であるラングレス王譲りの賢明さと、母親である王妃譲りの美しい金髪を持った姫は、シーナと言った。 姫の美しさはフェルメリア大陸を超え、隣大陸の魔法国家ゲイエンス、そして機械国家コーラングにまで行き届いていた。 不穏な影がラングレス国に落ち始めたのはシーナ姫が17歳になった時である。 年頃になったシーナ姫に、求婚を申し込む者は多かったが、姫はどれも断っていた。その中に、あの、フェルメリア大陸の端に住む巨大な魔力を持つ黒魔法使い、エイグも入っていた。 エイグは強欲な男だった。そして残忍だった。近隣にある街をや村を襲い、魔物や悪魔、妖精を捕らえては操り、狂暴化させて災いの種を振りまいていた。 そんなエイグがシーナ姫に断られて黙っているはずもない。エイグは北の山、ノスリープに住むドラゴンを操り、シーナ姫を連れ去った。 去り際に、王にエイグは言った。 『シーナ姫は私の物だ。それに伴い、国王の座を渡してもらおう。邪魔をするのなら容赦はしない』 大切な姫を攫われてしまった王は嘆いた。 姫を取り戻したいが、自分の一存で民を巻き込む事などできなかった。隣国だって巻き込むかもしれないのだ。 王の様子を傍近くで見守っていたセルヴェイスは、王の元に跪いた。 『エイグを打ちましょう。必ずやこのセルヴェイス、エイグの首を討ち取ってきましょう』 『しかし・・・そんな事をすればこの国だけではなく、フェルメリア大陸全土が危険に晒されるかもしれないのだぞ。シーナ姫の命だって危なくなるやもしれぬ』 『大軍で行けば、火種は大きくなりましょう。しかし精鋭で、姫の救出とエイグ討伐の二手に分かれれば、如何にかなるかもしれません』 セルヴェイスの言葉に、王は急いで、しかし静かに触れを出した。 『腕に覚えがある者を求む。シーナ姫の救出、エイグの首を討ち取った者には褒美をとらせよう』 触れは辺境の地、カルメリアにも届いた。 「では、行って来ます。師匠」 ブラインドネス・レイはある墓の前で頭を下げるとその場を離れた。 そしてその触れは、ピグオンにも届く。 「じゃ、行って来るな」 ワンアーム・ロンドも街の皆に声をかけてラングレス国に向かった。 こうして、ラングレス国に人々は募ったのである。 |