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K/Night

K/Night

夜街・太陽と月と僕

【夜街】
月の無い空
街を照らすのは色とりどりの人工的に造られた光り
見渡して見るのは人と影
あちらでは、オリジナルソングを歌う声
こちらでは家路に向かう人々の後ろ姿
そちらではまだまだこれからと、陽気な笑い声

車の往来
電車は頭上を通過する
自転車が慌ただしく眼前を走っていく

其所はまだ、昼間の様な賑わい
けれど昼間とは全く違う表情

夜街
それは夜の自由な時間が在る場所

【太陽と月と僕】
自分探しの旅に出た
旅のお供はは太陽と月
オレンジ色の砂漠を歩き、自分探しの旅は始まった

始めに見たのは暗い夜の中、太陽の光で輝く緑の扉
開けて見ようとしたけれど、錠が掛かって開かない
「君は何の扉だい?」
僕が扉に聞くと、扉は錠を鳴らしながら、静か声で僕に言った
「この扉は居場所を捨てた者が入る場所。君の旅はまだ始まったばかり。ここに入るのはまだ早い」

砂漠を歩いて次に出会ったのは、ひしゃげて曲がったビルの町
何があるのかと近づくと
「入るな。入るな」
響く声が僕に言った
「どうして入ってはいけないのかい?この町は何の町だい?」
ビルは僕に響く声で言った
「ここは自分を捨てた者が暮らす場所。お前の旅はまだ始まったばかり。ここで暮らすはまだ早い」

青い空が月が照らす
僕は道なき砂漠を歩いていく
本当にこの道で合っているのか?
僕は何故ここにいるのか?
元居た場所でずっと暮らしても良かったのでは?
1人歩く寂しさにふとそんな事を考える
いくら太陽と月が旅のお供といっても、彼らは自分の居場所から僕を見ているだけ
同じ道を共に歩き、苦難を分かち合う、そんな供ではない

僕はずっと歩き続ける
太陽と月は僕を見守る

ある日僕は太陽に言った
「君は何故泣いているのかい?」
嬉し泣き?悲し泣き?
ある日僕は月に言った
「君は何故笑っているのかい?」
微笑み?嘲笑?

旅を始めてから初めて僕は何もかもに疲れてその場に座り込んだ
もうどうなっても良いととさえ思った
遠くからは扉が開く音、自分を呼ぶ響く声が聞こえた
その中に
「旅人さん。旅人さん」
自分を呼ぶ別の声を耳にした
「旅人さん。もし良かったら私と一緒に自分探しの旅に行きませんか?」
驚いて顔を上げると、彼は笑顔を向けた
「今まで会った旅人は、1人を寂しいと思っても、それでも1人で歩き続けた。でもあなたは違う。同じ道を共に歩いてくれる供が欲しいと思った。だから私はあなたと行きたい。私も同じ気持ちだから」
僕は手を伸ばす
彼はその手を取る
新しい『友』を僕は見付けた

自分探しの旅はまだ長いのだろうか?
もしかしたら見付からないかもしれない
でも僕は歩き続けられるだろう
同じ『友』を見付けたから

太陽は涙を流した
暖かい涙を
月は笑った
微笑みで

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