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K/Night

K/Night

妖奇談

人が世に言う夏の盛り
月が消え去り真の闇となるその日
魑魅魍魎が動き蠢めく

騒ぎ騒げや、今宵は我等が主
飲めや歌えや、邪魔者は居ぬ
人間共は家の中
今宵ばかりは我等が主
騒ぎ騒げや
飲めや歌えや

その中に、一人違う雰囲気纏う女の妖
白装束を着、髪は流るるままに女が歩き、その後を彼等が追う

今宵ばかりは我等が世界
誰にも邪魔は出来はせぬ
さぁさぁ目的果たさんために
望みを叶えにいざ行かん

辿り着いたは一軒の家
女と彼等はスルリと中に入りて家主を探す

おおぃ、見付けた
此処だ此処

一つが見付けて女を呼ぶ
顔を輝かせ女は飛んでくる
そして見るは、眠り込んだ家主である男

ああ、ようやっと見付けましたわ
さあ、迎えに参りました
私と共に行きませう
我等が世界に行きませう

隣で寝ていた妻が起き、彼等を見付けてギャ、と叫ぶ
女は家主の男の頭を抱き、愛しそうに撫でてはふっ…と消えた
男と共に消え失せた
残った彼等はまた騒ぐ

今宵ばかりは我等が主
女は男を手に入れた
愛しい男を手に入れた
騒ぎ騒げや、我等が主
飲めや歌えや、我等が主
邪魔する者は誰も居ぬ

人が世に言う夏の盛り
月が消え去り真の闇となるその日
魑魅魍魎が動き蠢めく

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