文芸評論と漫画評論

2007/11/29(木)02:21

おぞけ、ホラー・アンソロジー

文芸評論(194)

リアルな「高速落下」 九人の作家によるホラー短編集。 意識的かどうかは不明だが、凄味のある作品程、おおむね後ろに配置されている。 最後に配置された泡坂妻夫著「弟の首」は、姉を慕う弟の、首だけが現れる。 この発想そのものが意外だが、さらに、結末が衝撃的だ。 草上仁著「虫愛ずる老婆」の、隣家の老婆は、すべての虫を異様に愛する。 そして、本当に愛した虫とは? この結末は卓越している。 雨宮町子著「高速落下」は、高速は問題であるという、ある意味リアルな内容を示唆している。 車で非常に高速で走ったり、飛行機で、たった一日で三大陸を股にかけたりすると、人間がおかしくなるという。 ある日、遊園地で、数人の女性が落下型絶叫マシンに乗ったりして遊んだ。 その後、彼女らの身に生じる異変とは、、、。 この「高速落下」は、現在の高速化し過ぎている乗り物社会に、ある種の警笛を鳴らしている様にも感じた。 車は、ゆっくりと走れば良いし、新幹線の高速化は、このあたりで打ち止めにしても良いと、私はいつも思っている。 本作品のホラー性の趣旨からははずれるが、これ以上の高速化の下で、もし事故が起きると、ホラーでは済まなくなる。 最初に配置されている篠田節子著「歯」は、あまり卓越してはいなかった。 本作品集は、内容がリアルだったり、結末が衝撃的だったりする。 考えさせられる作品、唸らされる作品が多い。

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