カテゴリ:ブランディング・マーケティング
中国には「愛国者」というITブランドがあることを前回書きました。でも考えてみると、日本の松下電器が使ってた"National"というコミュニケーション・ネームは、ある意味で「愛国者」と似ているような気がします。"national"という英単語には、「国民の」「国家の」「国を象徴する」という意味がありますが、"nationalism"に派生するように「国粋主義的」「国家主義的」強いては「愛国主義的」という意味を背景に持っています。中国の「愛国者」というブランドに、私たち日本人はドキっとされられますが、松下電器がコミュニケーション・ネームを"National"と呼んでいたとき、英語のネイティブスピーカはどんな想いを抱いていたのでしょうか....
松下電器は白物家電も含め、ブランドを"Panasonic"に統一し、"National"は松下電工が日本国内のみで利用するローカル・ブランドになったようですが.... 中国の大手PCメーカー/ディストリビュータである「聯想」は、かつて英文表記に"LEGEND"を使っていました。と言うより、ここの創業者は「伝説」を創るべく、英語の"legend"を会社名にし、その中国語の音訳として「聯想(レン・シァン)」の文字をあてた、と聞いたことがあります。「聯想」が中国から英語圏に羽ばたこうとした際、この"LEGEND"というコミュニケーション・ネームが使えないことがわかったのです。この種の普通名詞は、どこの国でも既に商標として登録済みだからです。そこで、"LENOVO"というブランド名を開発して、世界のブランドを目指すことになったのです。 家電メーカーの「海爾(ハイアール)」は、元々会社名ではありませんでした。ドイツの家電メーカーの協力で製造した冷蔵庫に、その会社名の一部を中国語表記にして「海爾」と付けたのが始まりだったそうです。その後、ハイアールのCEOが世界に打って出るためのブランドとして「海爾」を定着させ、社名にもしていったのです。 「海爾」の英文表記は"Haier"で、例のドイツメーカーのスペリングとは異なります。"Haier"は「海爾」の中国読み(ピンイン)そのものです。 アメリカに進出したとき、多くのアメリカ人が"Haier"をどう発音するかわからなかったそうです。そこでアメリカでの広告に、"Haier, Higher"と言うコピーをつけることにしました。"higher"は"high"の比較級。「より高い(崇高、上等)」の意味を付加したかったのでしょう。しかも英語の"higher"の発音は、「海爾」の中国語の発音に極めて近いのです。このコピーが浸透して行き、アメリカ人も"Haier"をハイアール、つまり"higher"の発音で呼ぶようになり、ブランドとして定着していったのです。 グローバル企業を目指すローカルの新興企業にとって、ブランド・ネームは極めて重要になります。韓国のLGグループは、グローバル化を推進し始めた数年前に大規模なCIを実施し、"LG"にしたのです。その前は"Lucky Gold"でした。いかにも英語を母国語としない国の企業がつけそうな英語の名前です。"LG"のような短い文字の羅列は覚えやすいのかもしれませんが、商標登録できません。それを逆手に取り、必ずあのニコちゃんマークのようなロゴ・マークとともに企業名を打ち出すことによって、ブランド浸透を見事に成功させました。 中国で言うと、TCLやMidea(美的)あたりが、グローバル展開を目指したブランド・ネームを採用していると思われます。 そうそう、"National"で思い出したのですが、中国の大手家電量販店である「国美電器」の昔のブランド・マークは、昔の"National"のブランド・マークそっくりでした。数年前、この「国美電器」もようやくロゴマークを新しくしています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ブランディング・マーケティング] カテゴリの最新記事
|
|