カテゴリ:ビジネス習慣
日本的感覚で「怪文書」と聞くと、大物政治家や大企業の社長のスキャンダルに絡む話で、一般ピープルには直接関わりの無いイメージでしょう。ところが中国でビジネスをしていると、「怪文書」はとても身近なモノになるはずです。
もしあなたが中国の現地法人でマネージメントの立場にあれば、社員に関する「怪文書」があなた宛に届くことがあるでしょう。「○○課の△△さんが、会社のお金を使い込んでいる」など、同僚や上司の不正行為を暴く内容のものが多いと思います。当たり前のことですが、こうした「怪文書」には発信者名は書かれていませんし、その内容は事実か事実でないかのどちらかです。 こうした類の情報は一切無視する、というのも対応の一つだと思います。無かったものとして処理すると言うことです。 でも気になるようでしたら、できるだけ悟られないように、まず発信者を特定してみてはどうでしょうか。発信者を絞り込めば、「怪文書」の当事者との関係が推定されます。多くのケースの場合、発信者と当事者の間には、何らかの利害関係が存在します。こうした場合、私は無視したほうが良いと思っています。 なぜ無視するのか、と言いますと、こうした「怪文書」のほとんどは、正義感で発信されたものではなく、ライバルや上司や部下を蹴落とす目的で発信されている場合が、圧倒的に多いからです。ご存知の通り、いまの中国は日本と比較にならないほどの競争社会です。自分がのし上がるということは、誰かを蹴落とすこと、とも言えます。実力が無いスタッフ、実力があっても評価されていないスタッフは、何か別の方法を使ってのし上がることを目指す場合も多いはずです。 もし、自分自身で正当で正義感に満ちていると思っているのであれば、中国人の性格的には匿名にしたり文書にしたりせず、直接話をしたがるはずです。 それでも多くの日本人は、事実関係を知りたいという衝動に駆られるでしょう。でも、その「怪文書」の当事者や発信者と推定されるスタッフを"クビ"にしてもいいくらいに思っているのでなければ、止めたほうが良いと思います。 そもそも真実を暴くことは簡単なことではありません。真面目に突き詰めて行けば、莫大な労力が必要ですし、その調査にあたって秘密主義を貫こうとしても多くのスタッフを巻き込むことにもなりかねません。 「怪文書」に書かれた当事者の不正が、たとえ事実と判明したとしても、私の場合は発信者も"同じ穴のムジナ"だと疑いを持ってしまいます。実際、発信者も似たような不正をしていたりするケースが多いのです。 「怪文書」が元となって人事的な処分が下されたことを、直接関わりの無いスタッフまで知ることになるはずですから、「怪文書」は"有効な手段"として認識され、後と絶たなくなってしまうでしょう.... あなた自身が「怪文書」の当事者になるケースも想定しておく必要があります。あなたがオーナー社長でもない限り、日本の本社の社長や役員に、あなたが知らない間に「怪文書」が送りつけられることも覚悟しておくべきです。 中国の現地法人で、不当な評価を受けていると思っているスタッフ、ライバルが厚遇されていると思っているスタッフ、或いは解雇した元社員など、あなたの周りには「怪文書」の発信者候補がうようよしています。 「(日本人マネージャー)○○さんは××さんとデキていて、不当に厚遇している」のような密告書が、メールやFAXで日本の本社の社長宛にダイレクトに送られることもあるでしょう。「火の無いところに煙は立たない」と言いますから、何か"思い当たる節"がある場合も多かったりするでしょう。もちろん、怪文書攻撃に曝されないために、身の回りをできるだけキレイにしておく努力は必要です。とは言え、聖人潔白であり続けることなど、並みの人間では困難でしょう.... こうした場合も、無視を決め込むのが一番だと思います。日本の本社のお偉い方は、中国に駐在させている日本人スタッフを信じてあげてください。中国には全幅の信頼を寄せらる人材を送り込んでください。それと、少しくらいは目をつむる、という寛容な態度で、中国駐在のスタッフを見てあげてください。都合の良い話に聞こえるかもしれませんが.... 「怪文書」の中には、「(日本人マネージャー)○○さんの仕事の進め方は間違っている。これでは業績が上がらない。」と言うような、現地法人の将来を見据えた積極的な提案書のように見えるモノまであったりします。当事者に祀り上げられた日本人マネージャーのやり方を否定するだけではなく、改善方法を具体的に提示しているものは別とすれば、そうした「提案書」の多くも、「会社」のためではなく「自分自身」のため、に発信されています。受け取った「提案書」に書かれた具体的な改善策が、冷静に判断して合理的に思えるようでしたら、現地の日本人マネージャーにそれとなく諭してあげれば良いのではないでしょうか。 いずれにしても、中国で「怪文書」の類は日常茶飯事です。その多くは、発信者自身の利益獲得のために出されます。「怪文書」の内容が事実である場合も多いでしょうが、日本流にキチンと対応すると莫大な労力が必要なばかりか、組織に与えるダメージも大きいはずです。「見て見ぬ振り」をするのは潔いとは思えないかもしれませんが、動じることなく冷静に対応するのが一番かと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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蝦夷の末裔さん
確かに「怪文書」と言えるかもしれない.... 中国の政府系通達文書なんて、(爆(爆(爆の「怪文書」だったりします。 こちらこそ、今年もよろしくお願いします!! (2005.01.13 18:07:30) |
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