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北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2005.04.04
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ことの始まりは、新華社傘下の新聞「国際先駆導報」が3月24日付けで掲載した記事(中文)でした。

新華社の日本特派員署名入りのこの記事は、「アサヒビールは日本の歪曲した教科書に賛助している」というショッキングなタイトル。ここで"歪曲した教科書"とされているのはご存知「新しい歴史教科書をつくる会」により扶桑社が出版している教科書のことです。「つくる会」の"賛同者"はホームページで堂々と公開されており、その中に中国で活動を行っている日本企業の関係者も多数いますが、アサヒビールが大きく取り上げられてしまいました。なぜでしょうか。
まず、このビール会社の名誉顧問である中條さんは、「つくる会」の会報『史』(平成16年7月号)に投稿した随筆の中で、"国事行為たる戦争の犠牲者を祀る靖国神社に詣でる事をしない政治家に、国政に参加する資格はない。"と書いていたのです。また、"賛同者"名簿に関係者の個人名が掲載されている他の企業の多くは、一般消費者が購入するような製品を中国で販売しておらず、中国の消費者にとってはなじみの薄い企業でした。さらに、それとこのビール会社は、中国の著名な企業と合弁会社をつくって中国市場参加しています。
そうしたことから、この会社の名前だけが大きく見出しに踊ってしまったのだと思います。

中国の新聞、特に地方紙は転載記事を多く掲載します。特に新華社傘下のいわゆる"全国紙"は権威性が高いので、「国際先駆導報」の記事は中国の各地方都市の新聞にどんどん引用されていきます。そして反日感情が強いと言われる東北エリア吉林省長春市のとある一商店主がその記事を目にして、日本ブランド商品を販売棚から引き上げてしまったようです。このことを、地元の地方紙がネタとして取り上げました。そしてその記事が転載されたり引用されたりして"不買運動"が各地に広がったようです。長春の地方紙の記事はまずネットに掲載され、それを見た地方紙の記者が後追い取材に動いて記事にして、そのエリアの一部の商店が日本ブランド商品を棚から引き上げ、その様子をまた記事に取り上げていく...ほぼ1週間で"不買の動き"は中国各地に広がり、新聞やネットでどんどん報道されるようになりました。

このビール会社では、3月31日に主要メディア、"誤った認識の"記事を掲載したメディアに「声明文」を配信し、自社のHP(中国語)にも掲載しました。
この「声明文」のポイントは3点。
(1)企業として資金援助はしていない
(2)中條さんの記述は個人的なもので、企業としては支持しない
(3)企業の歴史認識は1995年のいわゆる村山談話に沿うもの
「国際先駆導報」の報道が"正しくない"ことを直接は言及せず、"正しくない"論拠となる"事実"のみを簡潔に伝える内容でした。

この日の中国外交部(外務省)の定例会見の質疑応答で日本メディアの記者が、一部の地域で発生している日本ブランド不買の動きについての中国政府の見解を、このビール会社の声明文を引用する形で質問しました。これに対し、外交部の劉建超報道官は、「(日本側の間違った歴史認識から発生した問題とは言え)政治問題が経済に波及するのを望んではいない」と明言(SINA=中国語)
この政府見解は、ビール会社の"声明"とともにこの日の夕刊紙からさっそく掲載されるようになりました。

ところが、週刊の「国際先駆導報」は既に3月31日付けの続報のために取材活動を済ませていて、このビール会社に的を絞った第2弾を掲載(中国語)
4月1日以降は、「国際先駆導報」のこのビール会社に対する"批判的な内容"の記事と、外交部コメントとこのビール会社の"声明"から成る"抑制された内容"の記事が、中国各メディアに転載・引用されているという状況で、報道総量としては随分減ってきている感じがします。

日本ブランド不買の動きは、日本における中国製製品不買の動きに結びつく、そうなると中国経済が被るダメージのほうが大きい、そうした考えから、中国政府は政治的問題をこれ以上経済問題に波及させたくない、と言うのが本音でしょう。外交部劉報道官の応答もそうした方針から来ていると思います。政府がこうした方針を示している以上、政府に近いメディアほど徹底してその方針に沿った報道を行うのが中国です。中央政府のコントロールが行き届きにくい広東省などの一部のメディアを別にして、教科書問題と特定の日本企業とを結びつける記事は少なくなる傾向にあります。

とは言え、火の付いてしまった"末端"の人民はなかなかおさまりません。先週末には各地で反日デモが繰り広げられました。日本の国連安保理常任理事国入りに反対するのがデモの目的なのですが、一部では日本企業が標的にされたりしたようです(Asahi Com・ただこうした反日デモや集会について、中国国内報道はかなり抑制されているようです)。

また4月1日付けの産経新聞朝刊に掲載された「日系企業いじめ・報道『歪曲』不買を扇動」と言う記事が、中国メディアを強く刺激してしまったようです。「日系企業いじめをしかけたのが中国当局の宣伝機関とされる新華社系新聞社」と名指しで攻撃された「国際先駆導報」は、産経新聞の取材に対して「来週の続報に注目してほしい。より事実に即した報道をする」と答えたそうです。(なぜかこの記事、Webに掲載されていないようです....)

ご存知の通り、は「新しい歴史教科書」の出版元も産経新聞もフジサンケイ(+ライブドア?)グループに属していますから、産経新聞の気持ちも分らなくは無いのですが、ここはひとつ丸くおさめていただきたいと、中国で働く日本人は思っているのではないでしょうか。





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Last updated  2005.04.04 23:18:35
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