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カテゴリ:危機管理・PRとメディア
![]() ソフトバンクが投資しているエレベータ広告に引き続き、広告業界ネタです。 バスの車体全体に広告を描いたラッピング・バスが、東京で見られるようになったのは5年ほど前からです。それまで日本では、都市景観を損なうなどの理由で許可されませんでした。でも私が北京に勤め始めた8年前には、バスの車体広告は中国のいたるところで見られました。その頃北京では車体全体を広告メディアにできるバスが少なく側面に大きなステッカー広告を貼ったものが主流でしたが、この4~5年で車体全体を広告メディアにするラッピング・バスの比率が大きくなりました。 数年前まで日系広告主の大多数は、ラッピング・バスの広告にネガティブでした。テレビや新聞などトラディッショナル・メディアへの過信が大きな理由ではあります。 ほかにもブランドにマイナスの印象を与えると言う懸念もあったようです。北京あたりだと埃っぽくて車体がスグに汚くなります。物損事故で車体自体が凹んでいたり、塗装が剥がれているのに、そのまま運行する場合も多く、キレイで完璧な広告表現が再現できないのでブランド・イメージにマイナスと思われたりしたのです。 さらに路線バスでも故障や事故が多いので、修理などのため予定されていた走行期間が短くなってしまうなど、管理面での懸念も指摘されました。 この2~3年で、そうでもなくなりましたが、中国で広告メディアと言うとテレビや新聞に固執する日系企業はまだ多いようです。 中国の消費者は多様かつ多層的ですから、特定の消費者層に絞ってコミュニケーションをする場合、テレビや新聞などのメディアが非効率になります。むしろ、エレベータ広告やラッピング・バス、バスストップ広告などが、特定の消費者層に対して広告効果が高くなる場合が多いのです。インターネット上の広告などはその際たるものです。 そのネット広告とともに、バスなどの交通広告を含む屋外広告の収入の成長率は、テレビや新聞などを上回っています。 北京でラッピング・バスの広告を扱う「流動伝媒(Magic Media)("Viacom Outdoor Beijing"に社名変更)」を、アメリカの大手メディア・グループ「バイアコム」が買収しました(Net Ease、実際はバイアコム傘下のアウトドア広告会社が買収)。12月11日に中国における広告業の1外資規制が完全撤廃されましたから、中国ではシンボリックなニュースとして報道されています(北京発新華網、新浪網、など)。 「バイアコム」と言えばMTVの制作・放送で有名ですが、アメリカ3大テレビネットワークのCBSやパラマウント映画などを傘下におさめる、世界3大メディア・グループの一つです。そんな会社が北京のラッピング・バスなんて、ちょっと意外かもしれませんが、そこにはアメリカ企業の"実利優先"型中国ビジネス戦略が見えてきます。 メディアを切り売りするのは"権利ビジネス"と言えます。テレビ局から広告時間帯、新聞社から広告紙面の権利を譲り受け、広告主に販売するビジネスを一般的に「メディア・レップ」と言います。日本の広告業界の場合、実質的には一部の大手広告会社がこうした権利を独占的に利用しているわけです。 「流動伝媒(Magic Media)」も北京のバス会社から車体に広告を掲載する権利を譲り受け、広告主に販売する会社でした。 では、テレビや新聞のメディア・レップを外資広告会社が堂々とできるかというと、これらトラディッショナル・メディアの場合、政府や党の影響力が強いため、権利を外資広告会社に渡したがらず、現実的にはまだ難しいのです。 ところがバス広告などの屋外広告は、メディアそのものを私企業が所有している場合が多く、政治的影響力も相対的には小さいので、外資が比較的ビジネスをしやすいテリトリーと言えます。また、屋外広告の"メディア・レップ"はローカル資本の中小企業がほとんどですから、M&Aなども比較的容易と言えます。しかも需要に応じて新たにメディア(広告枠)を"創出"することさえ、テレビや新聞よりは可能性が高いのです。そして何より、都市型屋外広告は"成長領域"の中にあるのです。 もちろん以前から外資メディア・グループは、中国での展開に積極的に挑んできました。「AOLタイムワーナー」がCETV(華娯電視)に出資したり、「ニューズ」が青海衛星テレビの広告枠を買い占めようとしたりしましたが、表向き"ビッグ・ビジネス"だと中国的な障壁も多くなり、その成果のほうは"スモール"になる傾向があるようです。 「バイアコム」もテレビ番組などコンテンツの中国への売り込みは積極的にやっているようですが、まだまだ"地ならし"の段階でしょう。私にはラッピング・バスのほうが、短期間でリターンが望め、しかも将来展開の障壁も少ないビジネスのように思えます。 例えばメディア業界なら、CCTVや人民日報や新華社といった中国では最も著名な相手と共同でビジネスを始めたりすると、日本では話題になりニュースでも大きく取り上げられたりするのでしょうが、ビジネス的には疑問符がついてしまいます。これは他の業種でも言えるのではないか、と。 あなたの投資先や合弁相手は、著名な国有企業系である必要は無いのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.01.04 18:33:30
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