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パソコンの中を整理していたら、1998年4月付けの"ブリーフィング・シート"が出てきました。
"ブリーフィング・シート"とは、広告主がエージェンシーに業務を依頼する際の要望書みたいなものです。その中には、広告主が捉えているマーケットの状況なども説明されていますし、広告目標や予算なども書かれています。この内容をベースにエージェンシーに対してブリーフィングが行われ、質疑等のやり取りを得て、エージェンシーは広告主のために最善のプランを準備してプレゼンテーションを行います。 この"ブリーフィング・シート"の広告主は、中国で私企業として最初にインターネット接続サービスを開始したISPでした。正直なところ、少なからぬ日本の広告主はエージェンシーに対する"ブリーフィング"があまりお上手ではありません。広告主とエージェンシーの"馴れ合い"的関係がそうさせているのかも知れませんが、8年前に中国企業が用意してくれた"ブリーフィング・シート"は欧米企業顔負けの精緻なもので、エージェンシーにとってはありがたい内容のものでした。 この"ブリーフィング・シート"から、1998年当時の中国のインターネット事情を振り返えることができて面白いので、機密に触れない範囲でご紹介したいと思います。 1997年のパソコンの出荷量は400万台で、北京市では家庭向けに50万台が出荷済だったそうです。市街地における家庭普及率は10%を超えたとされています。いっぽうインターネット・ユーザーは中国全土で62万人、北京市で約12万人でした。 当時、北京では中国郵政省傘下の国有のインターネット接続業者2社がISPとして有力でした。どちらもCHINANET(中国公用計算機互聯網)を1次プロバイダーとする2次プロバイダーで、ガリバー状態のA社のバックボンは17MB、B社にいたっては256KBだったようです。しかも当時最大シェアを誇ったA社は、インターネットなのに国内サイトにしか接続できない、と言うスグレモノでした!! わが広告主は、新参者ながら512KBのバックボンを確保し、しかも海外サイトにも繋がるISPという位置づけであったのです。 広告主ISPユーザーの80%は海外とのトラフィックという衝撃的なデータも含まれていました。当時は中国国内のポータルもISP(接続プロバイダー)のホームページくらいで、有力なサイトが少なかったようです。 わが広告主の接続サービスは、もちろんダイアルアップのみでしたが、面倒な申込み手続きが不要で、料金は電話代と一緒に請求されるという"ダイヤルQ2"タイプをいち早く採用しました。その後、A社が追従して、中国のダイアルアップ接続はダイヤルQ2"タイプが主流になっていきます。 私企業で海外サイトにも接続OK、しかも申込みの必要無し、と言う有利な条件と、多分我が社の広告戦略の効果のおかげで(?)、わが広告主は、翌1999年末にはバックボンを約60倍の32MBまで確保し、売上高でB社を追い抜き、中国No.2のISPになりました。1999年当時中国から海外への接続をほぼ独占していた、CHINANET(中国公用計算機互聯網)の国際帯域幅が291MBだったようなので、10%のトラフィック・シェアを獲得したことになります。 97年時点で62万人だったインターネット・ユーザーも、2年後には16倍の約1,000万人に達しました。 さて1998年4月の広告主の"ブリーフィング・シート"に戻ると、自社HPの"ポータル化"、"eコマース"、"ネットオークション"、"トラフィック量の平坦化"などのワードが既にあったことに驚かされます。現にこの広告主はこの年、独自の検索エンジンを開発し、ネットショッピングも取次ぎ、自社HPの"ポータル化"を推進しました。しかし、国内ニュースなどの情報量が弱点となり、A社系のポータルサイトに水を空けられてしまいます。国営メディアなどの協力関係を築くのが遅れたようで、私企業であったことがアダになってしまったようです。 接続サービスについても、電話会社が本格参入することによって、2000年以降、勢いを失ってしまいます。 2006年。中国全体で見るとパソコンの家庭普及率は5%程度と言われています。ところが北京の市街地では70%を越えています。CNNICの発表によると、2005年末のインターネットユーザーは1億1,100万人。8年間で180倍になりました(北京市は36倍)。 最近では、中国当局の禁止ワードを日本のサイトでググると、その検索サイトへのアクセス自体が一定時間できなくなる、なんて"ワザ"まで管理側は用意しているようですが、"いたちごっこ"のこの世界ですから、無駄な抵抗は止めて欲しい、と願っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.05.11 13:01:04
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