カテゴリ:パブリックリレーションとCSR
中国民政省、中国社会工作協会と新聞『公益時報』が共同主催による「多国籍企業の中国における寄付ランキング」が発表されました(新浪網)。
誇るべき第1位はソニー。中国で寄付や社会貢献活動に5,215万RMB(8億円近く)費やしているとのことです。第2位がオランダ籍のやはりエレクトロニクス企業でPHILIPS、そして第3位がスターバックス・コーヒーと言うことです。42位まで公表されていますが、日本企業はソニーのほか、トヨタ自動車(10位)、松下電器(16位)、日立(39位)の4社がランクインされました。アメリカ企業が20社で最も多く、イギリス企業も日本企業と同じく4社がランキングされました。 以前、日本の雑誌で"ODAのごとく、中国にたかられ、寄付や社会貢献にお金を使っている日本企業"のような記事を読んだことがありましたが、ソニーを除く日本企業はアメリカ企業ほど社会貢献などにお金を費やしているとは言えないようです。 ソニーは中国で、「希望工程」とは別に独自に貧困地区の学校に黒板や文房具などの寄付を行ったり、スカラーシップを設けたり、長期的かつ地道な社会貢献活動を行っておりますが、HPでは"海賊版撲滅"のためのコンサートや北京に開設した体験型サイエンス・ミュージアム"Sony Exploration Science"なども紹介されています。この2つについては"寄付ランキング"の金額に含まれているのか分かりませんが、どちらかと言うとブランディング施策としての意味合いが強い"社会貢献活動"と言えるでしょう。 いっぽう北京大学管理案例研究中心と雑誌『経済観察報』が主催する「中国で最も尊敬される企業」の"表彰式"が4月末に盛大に行われたそうです。中国国内企業を含む25社がリストアップされましたが、その中の日系企業は広州本田汽車有限公司(HONDA)の1社のみでした(新浪網)。(外資系企業という意味ではなく)外国ブランド系企業は9社選ばれており、アメリカ系が4社、ドイツ、オランダ、フィンランド、韓国、日本がそれぞれ1社ずつでした。 「多国籍企業の寄付ランキング」で第1位のソニーは、残念なことに「最も尊敬される企業」25社の中には入りませんでしたし、トヨタ自動車も松下電器も日立も「最も尊敬される企業」の仲間入りを果たせませんでした。外国ブランドでは、HP、GM、NOKIAが5年連続で「最も尊敬される企業」に選ばれており、「寄付ランキング」第2位のPHILIPSが今回初めて選ばれたようです。「寄付ランキング」にも「尊敬される企業」にも顔を出している外国ブランドは、このPHILIPSのほか、SiemnensとSAMSUNGの2社のみです。 つまり中国では、必ずしも寄付(社会貢献活動)が多いから尊敬されるというわけでは無いようです。 では中国においてどんな企業が尊敬されるのでしょう?「最も尊敬される企業」にリストアップされた25社の傾向を見てみます。 まず第1に、コンシュマー向けの製品やサービスのブランドを持っていて、そのブランド力が強い企業です。石油資源開発や精製の中国石油(一応ガソリンスタンドもありますが)、製鉄業の上海宝鋼、発電や送電の国家電網などの大企業は選ばれていません。おそらくカテゴリーでトップ5以内の販売シェアを持つことが必要なようです。 第2に、テクノロジーや時代の潮流を感じさせる企業ではないでしょうか。新浪公司はじめ、実に15社が広い意味でのIT関連企業です。いっぽう日常的なコモンディティズ中心の企業は、杭州娃哈哈(Wahaha)と青島ビールの2社のみでした。 第3に、外国ブランドであっても何となく中国に根付いている企業。PHILIPS、Siemens、IBMなどは古くから中国で企業活動を展開しており、経営のローカル化が進んでいます。いっぽう「寄付ランキング」第2位のStarbucks Coffeeなどは外国ブランドの匂いをプンプンさせておくことが大切なので、中国にとっては"外国から乗り込んできた"というイメージが強いわけです。Starbucks Coffeeをはじめ、Microsoft、Intel、Coca Colaなどもこうした理由で「尊敬される企業」から漏れたのではないかと考えます。 第4に、過去1年以内に大きな消費者問題を起こしていない企業。「寄付ランキング」にリストアップされたソニー、Amway(安利)、Nestle(雀巣)などが「尊敬される企業」に含まれなかったのは、こうした事情もあるのではないかと推測します。 第5は中国企業に限ったことなのですが、国有企業であっても国有っぽくないイメージ形成をしたり、カリスマ経営者が居るような企業や私企業が尊敬され易いようです。例えばHaierは国有企業でありますが、張瑞敏と言うカリスマ経営者が有名ですし、新網公司は私企業です。IT関連の大企業であっても中国移動や中国網通は、国有臭を強く感じさせますし内輪揉めも多いようなので、あまり尊敬されていない、ということになりそうです。 「尊敬される企業」と言っても、大学の先生や新聞・雑誌・テレビ関係者20人によって選ばれたものなので、実際の消費者意識をどの程度まで反映できているのか疑問ではありますが、参考にはなるのではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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