カテゴリ:ブランディング・マーケティング
すっかり騙されてしまいました。
中国の[女圭]哈哈(Wahaha)という大手食品メーカーがこの6月頃、中国国内市場向けに発売を始めた『コーヒー・コーラ(珈琲可楽・Coffee Cola)』のお話です。 コーヒーっぽい味のするコーラです。これは、いかにも中国っぽい怪しげな商品だと思い、7月30日の「ぺきん日記」というブログにも書かせていただきました。北京のスーパーなどではエンドに対象にディスプレイされていて、初夏にたくさんの新商品が発売されては、数ヶ月で消えていくという中国のペットボトル飲料市場において、今シーズンのヒット商品だったと言えるでしょう。 [女圭]哈哈(Wa Ha Ha)は、フランスの大手食品メーカー「ダノン」などの出資も受け入れていますが、1998年には「中国人のためのコーラ」と称して『非常可楽(Feichang Cola)』を発売し、ナショナリズムに訴えたマーケティング展開をしてきました(表向きは....)。そんなこともあって、『コーヒー・コーラ」』こそはきっとオリジナルなのかなぁと思っておりました。 ところが、中国オリジナルと謳いつつ『コカ・コーラ』そっくりな『非常可楽(Feichang Cola)』に続いて、『コーヒー・コーラ」』も"パクり商品"だという疑惑が極めて高くなりました。 クールなウェブ・キャンペーンを探していたら、『Coca-Cola Blak』なるサイトに遭遇しました。ボトルのデザイン、特にテクスチャーのパターンとカラリングなんかは、『コーヒー・コーラ」』とほぼそっくり。もちろん、コーヒー・フレイバーのコカコーラです。なんとこの『Coca-Cola Blak』、ことしの4月下旬にはアメリカで発売を開始していたようです(コカコーラ社のプレスリリース)。 更に調べてみると、昨年2005年末には発売がアナウンスされ、2006年1月にフランスで先行発売されていたことも分かりました(「コーラ白書」/2005年12月9日)。「コーラ白書」などによると、世界的にはペプシに追い込まれているコカコーラ社が若者向けの起爆剤として、またラインナップの強化として発売を決めたそうですが、コーヒー風味のコーラは過去にもコカコーラ社以外で発売されたことがあったようです。ですから、『Coca-Cola Blak』自体がパクり商品とも言えなくも無さそうですが....。 ともあれ、ペットボトルのパッケージデザインを見る限り、Wahahaの『コーヒー・コーラ』はコカコーラ社の『Coca-Cola Blak』のコピー商品としか言いようが無い感じです。限りなく黒に近いと言ってよろしいでしょう。 前述しましたが、[女圭]哈哈(Wahaha)は中国の人たちの民族意識に訴えるマーケティングを行い伸びてきました。『非常可楽(Feichang Cola)』を発売するときは、強力なグローバル・ブランドである『コカコーラ』との対決姿勢を明確に打ち出していたはずです((Wahaha ウェブサイトの沿革を参照)。それなのに、ライバルとして戦いを挑んだはずのコカコーラ社の新商品をほぼ丸ごとパクっていたとは、何とも情けない民族のホコリと言えるのではないでしょうか....。 とは言え、見過ごせないのはこのスピード感。"パクり"と言えば、フツーは外国など他地域のマーケットである程度成功したモノを真似る、と言うのが私などの感覚です。逆の言い方をすれば、外国で流行しているものを真似るからこそ、"パクり"だとバレてしまうわけです。 インターネットをはじめとする様々なメディアを通じて外国からの情報がほとんどタイムギャップ無しで伝わってくる、いまの中国ではありますが、フランスで発売されて数ヶ月後、本土アメリカで発売されるとほぼ同時くらいに商品化されたのですから、『コーヒー・コーラ』が『Coca-Cola Blak』のコピー商品であると気づいた方は、ごく少数だったのでは無いかと思います。少なくとも私は、きのう『Coca-Cola Blak』のウェブサイトを発見するまではWahahaのオリジナル商品だと思っていました。 封切映画の海賊版DVDなども、非常に早いタイミングで市場に出回っています。配給会社がその映画のプロモーションをしている最中に、海賊版DVDを世に出せば、正規版プロモーションに便乗して売上を伸ばすことも出来るのでしょう(いっぽうで、海賊版DVDが出回ることが映画本体のプロモーションに一役買っているという観方もできなくはありません)。日本のテレビドラマやアニメも、放映1週間後くらいには中国のウェブサイトで無料で見ることが出来たりします。ちゃんと中国語で字幕までつけているわけですから、ホントにたいしたものだと感心してしまいます。 『コーヒー・コーラ』が先に出たことによって、コカコーラ社は中国市場で『Coca-Cola Blak』を出しにくくなったでしょう。きっと法的な対応など準備をしている間に、『コーヒー・コーラ』のほうが話題になってしまった、と言う状況ではないでしょうか。 トップダウンやコンパクトな組織だからこそ為せる業ではないかと思いますが、汚い技でも先手必勝なのでしょう。"パクり"は別としても、こうした中国の"スピード感"について、日本企業はまだまだ学ぶべき点が多いように思えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.10.05 19:01:06
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