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北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2007.06.21
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WPP、IPGと並ぶグローバル・メガ・エージェンシー・グループのオムニコム・グループが、中国の大手ネット広告会社創世奇跡(Wonder Ad)を買収した、というニュースが流れました(iResearch)。
買収価格は2,000万US$との報道ですが、きっと出資比率は34%~49%の範囲内でしょうから、プレ・バリュエーション(買収交渉時の企業価値)として、4,000万~6,000万US$(約50~70億円)の値がついた、と考えてよいでしょう。
ちなみに、この創世奇跡(Wonder Ad)の2006年の推定売上高は1億~1.3億RMB(約16~20億円)、営業利益は500万~1,000万RMB(約8,000~1億6,000万円)ですから、この会社の将来の成長を考慮せずに計算するなら、オムニコムは投資の回収に40~50年もかかることになります。

中国のWeb関連会社はもちろんのこと、ネット広告会社も、内外からの投資バブルに沸いている感があります。
記憶に新しいのは、2006年の時点で中国最大手のネット広告会社であった好邪(Allyes)が、エレベータホールのモニタ広告屋のFOCUS Mediaに、2億2,500万US$(約300億円)で完全買収された、という出来事でしょう(拙ブログ)。06年の好邪(Allyes)の売上高が推定で5億RBM(約80億円)、営業利益は2,000万~3,000万RMB(約3億~5億円)と想像できますので、投資回収に100年もかかるかもしれない、というとんでもなく高い金額で買収したといえなくもありません。

企業価値の大雑把な計算の仕方として、営業利益マルティプルというのがありますが、上述2つの会社は1年間の本業で稼ぎ出す利益の50倍から100倍もの価値が認められた、というわけで、単純に考えると、チョー"バブル"な状況になっているのです....。

こうした"買収バブル"を引き起こしている要因の一つは、中国のネット広告市場が引き続き、急成長するという期待感です。
中国のネット広告市場は2006年時点で46億~60億RMB(約740億~1,000億円)といわれていて、まだ日本の3分の1程度です。けれども、成長率は44%と日本やアメリカより大きいわけです。しかも、今後数年間は30~40%台の成長が予測されているらしく、4~5年後の市場規模は3倍から4倍になると言われてます。

もう一点は、中国の大手ネット広告会社は比較的営業利益率が高く、5~10%を超えているエージェンシーもあることです。
いっぽう、世界的にみるとメディア取引の仲介を主業務とするエージェンシーの利益はどんどん低下する傾向にあります。あの天下の電通の営業利益率は3.3%でしかありません(とはいえ、この数字がいかに放漫経営の賜物かということには、あとで軽く触れることにします)。
エージェンシー業務の中でも、メディア取引の仲介業務はあまり頭を使いません。ましてネット広告は実施や効果について客観的に"証明可能"ですので、テレビ広告を売り込むような"屁理屈"をクライアントに垂らしこむ必要性が少ないのです。ですから、若くてモチベーションの高いスタッフがいれば、案外回していけるものです。中国では、そーゆー人材の費用は、まだ高騰していないので、販売管理費を比較的安く抑えることができ、一定の営業利益が確保できているわけです。ウェブ・デザインなんかになると、そーゆーわけにも、いかなくなるのですけど.....。
ですから、大手ネット広告会社への投資は、3年先の黒字化の目処すら立たないような、中国のあきれたWeb2.0企業のスタートアップなんかより、よほど堅実にリターンが望めるとも言えましょう。

さらに、優良なグローバル・ブランドの広告主を取り込んでいるグローバル・メガ・エージェンシーの傘下となれば、更なる売上げの増大が期待できるわけです。
電通やオーバーチェアの例を引くまでも無く、メディア取引はそのシェアを拡大すればするほど、コスト競争力が高まる仕組みになっています。たくさんの広告を集めれば、メディアの仕入れ値が安くなる仕組みだからです。ローカルのネット広告会社がグローバル・メガ・エージェンシーと提携すれば、営業利益率がさらに高まる可能性が高いわけです。
ですから、日本であれほどメディアの取り扱いをかき集めている電通の営業利益率が3.3%というのは、国際的な常識から見てとてつもなく不思議なお話なわけなのです....。莫大な利益がどこかに消えてしまっているのに、そのおこぼれを授かっている持ち合い安定株主が多数派を占めているので、騒ぎにならないのでしょうかね。

このように、中国の大手ネット広告会社の企業価値=買収価格は急騰しているのは、<1>市場の拡大が見込まれ、<2>(この種の業界としては)比較的高い営業利益率が確保され、<3>資本提携やM&Aによるスケールメリットにより更なる営業利益が期待できる、という一応の理由があるからで、決して"バブル"とは言い切れない感じもするのです。

例えば、今年の売上げが2億RMB(約32億円)、営業利益1,400万RMB(約2億2,000万円・営業利益率7%)のネット広告会社でも、向こう3年間35%の勢いで成長すると2010年の売上げは
5億RMB(約80億円)になり、スケールメリットで営業利益率が10%に改善できるなら営業利益は5,000万RMB(8億円)になるという可能性を秘めていることになるわけで、50億円くらいで買収できるのであれば、かなりまともなお買い物と言えるでしょう。

こうした優良な中国のローカル系ネット広告会社には、次々と資本提携やM&Aの話が舞い込んでいるようです。
こうした話がまとまれば、創業者には一夜にして数億~10数億円のキャッシュが転がり込んでくるわけです。この種の創業者は30代前半の留学帰国組が多く、5~6年前に創業したばかりの頃には、一緒にお酒を飲み交わした知人も少なくありません....。なんと羨ましい限りぃ。

もちろん、こうした"バブル"な風潮に便乗して、ベンチャー・キャピタルに"秀水市場"並みの売値を突きつけるような悪徳ネット広告会社もたくさん存在することを忘れてはなりません。
先日訪問した、アフィリエート系のネット広告会社など、創業後3年間赤字続きで、向こう3年間も黒字化する見込みは無いというビジネス・プランを堂々とご披露しながら、中国でもアフィリエート系広告は急成長する、というだけの理由で、のほほんと1億RMB(約16億円)もの投資を求めてらっしゃいました。
いくらネット広告の成長が見込めるとしても、あぁいうのに、引っかかっちゃうと、きっと大変なことになっちゃうでしょう。





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Last updated  2007.06.21 21:20:03
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