ふぁみりー・Kのおうち　別館

前回、夫の中学校の合唱祭を話題にしたので、
今度は自分の所の思い出話を一席。

同業の黒山羊侯爵さんの日記を拝見したところ、
黒山羊さんの学校は現在文化祭の演劇発表で御苦労されている様子。

クラスごとに熱の入れ方が違うこととか、
クラス内でもやる気のある子とない子の温度差が担任の苦労の種だとか、
う～～ん、これって自分の味わった苦労だよなあ。
なんて思い出してしまいました。



３年担任の時の合唱祭。
１ヶ月前のプレ合唱祭で学年ビリだった我がクラス。
他のクラスが上手に見え、まとまっているように見え、（実際はどこのクラスももめているのだが）
音程がまだ取れないと言って焦り、悩む実行委員の生徒S君。
特に男子のまとまりの悪さはひどく、指揮者がトンずらする有様。
毎日のように男子は陰険に喧嘩。
女子の実行委員はみかねて、男子パートの一つを引き受け音程を指導してくれる。
しかしやまない喧嘩。
生徒の喧嘩には口を出さない主義の自分も見かねて口を出し、
結果S君に叱られる始末。（←こわいヤツだったのさ）

３年の進路もあって、先生も生徒もピリピリしていたけど、
でもそれだけに良い合唱を作りたいという思いは次第に高まっていく。

どうにか音程が取れてきて、でも、今ひとつ自信がつかめていない様子。

よし。ここで、あ～さんまま、禁じ手を出しました。

空き時間に自分の実家近くのお寺に走り、人数分３０数個のお守りを購入。
朝のウチに生徒たちに書いてもらってあった「仲間へのメッセージ」を
小さくたたんで一個一個お守りにねじ込みました。


「いよいよ明日は合唱祭です。ここまでみんなはものすごく頑張ってきたね。
私も何かしてあげたいけど、もう祈るしかできないので、お守りを用意しました。
これは、私が大事な試験の度に買った、近所のお寺のお守りです。
大事な試験は一発合格させてくれた、御利益のあるお守りだよ。
中には、このクラスの誰かのメッセージが入っています。
これがあれば、みんなは一つだよ。
だから、大丈夫。明日はしっかり歌ってきてください。」


お守りは受験の時に買ってあげるつもりだったのですが、ちょっと前倒しで。
生徒たちは、目論んだ私がびっくりするくらいに喜んでくれました。
その日の夕方と翌日の朝練は、嘘のようにまとまった合唱だったのです。
本番では全員がお守りを握りしめて歌ってくれました。

そして本番。なんと、３位入賞！！

ビリからはい上がった、奇跡の大逆転でした。
生徒たち自身が入賞の発表の時呆然として声も出なかったほど。
私自身も「うそ～～～～～」と叫んでしまいました。
表彰式で「○○先生ありがと～～～」と女子の数名が叫んでくれましたが、
もう、お礼を言いたいのは私の方。

生徒たちが自分たちでここまで頑張ってきた成果に、
自分もちょっとだけ力を貸せたことが嬉しかったですね。
お守り作戦のタイミングがちょうど良かったんだろうなあ。
アレより早くても遅くてもダメだったと思う。
間の悪さが売りの私にしては上出来の作戦でした。


他のクラスの先生には、「やってくれたな。」「禁じ手だ。」「金で解決したな。」と、さんざんからかわれました。

お守りについて、S君は、本番で握りしめすぎて表の文字が消えたといって笑っていました。
受験にも持っていってくれた子が多かったとのこと。
有効利用ですね。（笑）

おとなしい子が多く、授業中呼吸の音さえしないといわれた、お線香のようなクラスでした。
その彼らの大爆発。
１位を取れなかったとかそんなことは誰も言わなかった。
奇跡だ奇跡だと、みんなが喜んで肩を抱き合っていた。

あのあと、１位をとったクラスも担任させてもらいましたが、
私にとっては、これが一番の合唱祭の思い出です。
この時の生徒たちの感想文は今でも大事にとってありますよ。ね、S君。


（うまく行った思い出ばかりじゃないけどさ。この100倍くらい失敗もしてるもんね～～）