サンマの馴れ鮓(その二)
サンマの馴れ鮓を食べ終えると、「東宝茶屋」のご主人がいろいろ話をしてくれました。「なれずし」と名のつく保存食は、琵琶湖の周辺などにもあるけれど、漬けたご飯も一緒に食べるのが熊野流だそうです。以前『食べたもの紀行-紀州編』で、「熟寿司」と書きましたが、こちらでは「馴れ鮓」と書くようです。サンマのほかには、塩と飯しか使わないので、なにしろ塩加減が肝要なのだとか。発酵の進み方も、温度や湿気によって大きく変わるので、小まめに手をかけてやります。店に置いてあった、東宝茶屋を紹介する雑誌の記事によると、『鮮度が命の早ずしは、気の短い江戸っ子気質が生み出した、 いわば当時のファストフウード』―として、乳酸発酵させる代わりに酢を使ったんだそうです。『稲作と同じ頃に東南アジアから日本に伝わってきた 原初のすしは、魚肉を飯と塩で乳酸発酵させた馴れずしだった。』新宮もう一つの名物、めはり寿司も、そういえば酢飯ではありませんでした。乳酸発酵しているだけに、馴れ鮓には整腸作用があります。帰りしなにご主人が、もう一つ教えてくれました。「お腹が元気になって、おならが出るよ。」その効果は、てき面でした。神倉神社の急な石段を登りながら、プースカ…止まりません。神様、ごめんなさい。