救いたくない命・中山祐次郎
☆救いたくない命・中山祐次郎・新潮文庫・令和6(2024)年10月1日 発行 ・「俺たちは神じゃない」シリーズ、no.2♣︎剣崎啓介=麻布中央病院外科医大船駅のある地域のサラリーマンと専業主婦の家庭に育った。4歳下の弟は堅実な大手メーカーのサラリーマン。2クラスしかない小学校、やたらスポーツにばかり注力する中学校、公立の中ではトップクラスとは言え県内では公私立を合わせて10本の指に入るくらいの高校が母校である。♣︎松島直武15年の外科医生活の間、実に様々な病院に勤めてきており、手術経験値からいうとベテランの域にいるだろう。胃、肝臓、大腸、ヘルニアもなんでも手術できるオールラウンドプレイヤー。医者一族の生まれ。関西では名の知れた大きな病院の一族のひとり。♣︎新井仁義=外科後期研修医、医者4年目、30歳、♣︎瀧川京子=腕の良い麻酔科医♣︎尾根諒一=バー「The One」の店主。謎めいた人物。1.救いたくない命搬送されてきた患者は、15人を殺した無差別殺人の犯人だった。15人の中には、松島の後輩医師も含まれていた。医者にとって救いたくない命などあろうはずがない。けれど、よりによって15年の苦しい修行で培った最高の技術を、憎むべき殺人犯のために揮う・・・。執刀医である剣崎の命(オーダー)に従う松島の両目から涙が溢れていた。2.午前4時の惜別「精査の結果、膀胱浸潤、前立腺浸潤を伴う直腸癌だと思われる」との個人病院からの紹介状を持ち剣崎の前に現れたのは、高校時代のサッカー部顧問の入江一蔵だった。厳しい状況だった。「骨盤内臓全摘術」手術は終えたものの、助けられなかった恩師の顔を見守りながら剣崎は振り返る。高校時代、剣崎はサッカーに夢中になっていた。けれど、顧問の入江の古臭いやり方に納得がいかず退部。もてあました時間と情熱を勉強にあてた。その頑張りが学校始まって以来の東大医学部合格に繋がったのである。そんな自分が巡り巡って入江を看取るということになるとは・・・。3.医学生誕生4.メスを擱(お)いた男5.白昼の5分間6.患者名・剣崎啓介夏のあさ、いつもの通りシャワーを浴びて身支度している途中であった。ズボンに足を通そうとし身をかがめたとき、激しい腹痛に襲われたのだ。医師だって病気になる。けれど、外来もオペも予定がしっかり組まれている。剣崎1人が休むだけで、何十人もの患者が影響を受けてしまうのだ。