元彼の遺言状・新川帆立
☆元彼の遺言状・新川帆立発行所 宝島社2021年10月20日 第1刷発行宝島社主催「第19回『このミステリーがすごい!』大賞」の「大賞」を受賞<おもな登場人物>♣︎剣持麗子28歳。弁護士。400人以上の弁護士を抱える大手事務所勤務。自分がお金に貪欲なのは自覚している。♣︎剣持雅昭麗子の父。経済産業省勤務。官庁が世界の中心だと思っている節がある。♣︎剣持雅俊麗子の兄。厚生労働省勤務。♣︎森川栄治大学の先輩で、在学中に3ヶ月だけ付き合って別れた彼。森川製薬の社長・森川金治の次男。<あらすじ>麗子の年収は2,000万円近いが、それで十分だと思ったことは無かった。年に一度の人事面談で、1年間の働きぶりのフィードバックをもらうと同時に、ボーナス額を伝えられるのが通例になっていた。意気揚々と面談室に入ったが、去年は400万円だった金額が今年は250万円。「よく働いてくれたがチームをまとめるとなるとそのギラギラした感じが怖いという人もいるんだ。ま、目減りした分は勉強料だと思って・・・」という言葉が、麗子の地雷を踏み抜き、そのまま事務所を辞めてしまった。麗子は、携帯の画面に浮かぶ文字に、眠気も吹っ飛んだ。大学時代3ヶ月だけ付き合った森川栄治が死んだというのだ。ゼミの先輩で、栄治とも交友のあっ篠田に連絡すると、彼の方も相談したいことがあると言う。彼は、栄治の親族の1人が投稿したという動画の画面を見せた。栄治の顧問弁護士という初老の男が登場し、栄治が作成したという遺言書を読み上げた。1.僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る。1.犯人の特定方法については、別途、村山弁護士に託した第2遺言書に従うこと。1.死後、3ヶ月以内に犯人が特定できない場合、僕の財産はすべて国庫に帰属させる。1.僕が何者かの作為によらず私に至った場合も、僕の財産はすべて国庫に帰属させる。麗子は相続専門の税理士ではないが、その内容は実に不可思議なものだった。共通の友人の篠田に、栄治は殺されたのかと聞くと、インフルエンザで死んだと言う。「僕がインフルエンザをうつしたのかもしれない。僕は60億円もらえるだろうか。僕の代理人になって、この件を調べてくれないか」といったのだ。麗子は「嫌よ」と言下に断ったが、その遺言書のことは瞬く間に世間に広がった。それらの「まとめサイト」を読むうちに、「ここは一つ、私も調べてみるか」きわめて気楽に、そう考えた。実際、英治にはどれくらい資産があったのだろうか。麗子は時間を持て余していたのである。篠田がいうよりもっと多いことが分かり、成功報酬は半分を条件に麗子は依頼を引き受けることにした。麗子は美人で魅力的な女性なのであるが、金に目がない女性敏腕弁護士なのである。・・・・・・・・この小説を執筆当時、著者が現役の弁護士であり、豊富な知識に裏付けされた、有りそうで無さそうなストーリー展開にも、不思議な説得力があり、一気に読み進めてしまいました。軽く読めるのに中身が濃い、これまでにない新鮮な作品でした。