カテゴリ:本
![]() 虚ろな十字架・東野圭吾 ☆虚ろな十字架 ・光文社 ・2014年5月25日、初版発行 11年前、当時広告代理店に勤務していた中原道正は、一人娘の愛美を強盗に殺害された。妻の小夜子が買い物に出たほんの少しの間の出来事だった。 帰宅した自宅の周囲には黄色いテープが張り巡らされ、立ち入り禁止になっていた。彼は家にも入れず、パトカーに押し込められ、警察署に連れて行かれた。中原は娘の遺体に対面すらさせてもらえず、小夜子は取り調べのため一両日拘束する必要があるという。 警察は「小さい子供が変死した場合、故意あるいは過失で、親が死なせてしまっていたというケースが珍しくない。真実を明らかにするためには、それ以外の可能性を潰しておく必要がある」というのだ。小夜子の拘束もとけ、ようやく愛美の遺体が戻され葬儀を行ったものの、二人が抱く気の遠くなる様な喪失感の行き場はどこにも無かった。小夜子への疑いは晴れたが、その後も刑事は度々やって来た。 事件発生から9日目、全く別のところで起きた事件がきっかけで、犯人が逮捕された。強盗殺人罪で無期懲役の判決を受けていた犯人は、仮出所中の身だったという。裁判を通じて知ることになったその男を、中原と小夜子は許すことが出来なかった。中原と小夜子の執念が実り、死刑が確定した。裁判が集結すれば何かが変わるかと期待した二人だったが、何も変わらず喪失感が増すばかりだった。苦労して手に入れたマイホームも手放し、二人は別れた。 それから11年後、叔父のあとを継ぎ、ペットの葬祭業を営む中原の前に、あの時の刑事が現れ「小夜子が殺害された」ことを伝えた。間も無く犯人が自首して逮捕されたが、警察は小夜子との接点を見つけられずにいた。 親にも内緒で、出産したばかりの子供を殺害、青木ヶ原の樹海に捨てた二人の高校生。その後、女子高校生、井口沙織は、殺人を犯した自分は生きていく価値が無いと自分を責め続け、万引きを繰り返していた。 そして相手の男子高校生、仁科史也は小児科の医師となり、偶然出会った自殺寸前の妊婦、花恵を救い結婚。生まれて来た子供を我が子として育てていた。小夜子を殺した犯人町村は、その花恵の父だった。 殺人犯を死刑や無期懲役にしたところで、模倣犯として仮釈放された場合、働く場がないと又事件を起こす可能性が高いという。「殺人犯」という重いテーマを、加害者と被害者側から捉えた作品。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.01.13 14:21:19
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