末摘む花の雑記帳

2018/01/20(土)13:49

神隠し・藤井邦夫

本(195)

☆神隠し・藤井邦夫 ・秋山久蔵 御用控 (一) ・文藝春秋 ・2012年3月10日 第1刷 秋山久蔵 南町奉行所吟味方与力。“剃刀久蔵”と称され、悪人たちに恐れられている。何者にも媚びへつらわず、自分のやり方で正義を貫く。心形刀流(しんぎょうとうりゅう)の使い手。普段は温和な人物だが、悪党に対しては情け無用の冷酷さを秘めている。 弥平次 秋山久蔵から手札を貰う岡っ引。柳橋の船宿『笹舟』の主人でもある。“柳橋の親分”と呼ばれる。若い頃は江戸の裏社会に通じた遊び人だった。 幸吉 弥平次の下っ引。 夜鳴蕎麦屋の長八。鋳掛屋の寅吉。飴売りの直助。托鉢坊主の雲海坊=弥平次の手先 伝八 『笹舟』の船頭。 神崎和馬 南町奉行所常町廻り同心。秋山久蔵の部下。20才過ぎの若者。 第1話 神隠し 呉服屋『近江屋』の17歳の娘おさよが、桜見物に行き行方知れずになった。おさよには来年祝言をあげる許嫁がおり、仲も良く身を隠す必要もなかった。そのおさよが3日間姿を消し、町駕籠に乗って自分で戻ってきた。その間のことは何も覚えてないという。着物髪や着物も酷く乱れており、おさよは怯えていた。何かあったのは間違いないのだが「神隠しに十手持ちの出る幕はないと…」そう言う弥平次の意を汲み、南町奉行所吟味方与力秋山久蔵は、表向きおさよ失踪事件を神隠しで始末した。 だが、弥平次は手先を使っておさよ失踪を調べていた。「勾かしで、おさよの身体に他人には言えない弱味を付けて帰し、それをねたにいつまでも脅しをかけて金を巻き上げる。悪辣な手口ですよ」秋山久蔵に話す弥平次の目には怒りが滲みでていた。弥平次は、近江屋とおさよにこれ以上の傷をつけず、事件を終わらせようとしている。久蔵は浮かぶ笑みを隠すように酒を飲んだ。 旗本の「部屋住みの当主の弟」の企みだと知った久蔵は、旗本は町方の支配違いではないかと案ずる弥平次に「神隠しの報いは、神隠しになるしかねえだろう・・・」と、不敵に言い放った。 ☆第2話 伽羅香 その夜、南町奉行所与力秋山久蔵は検使与力として、夜烏一味の隠れ家に踏み込んだ。ところが家はもぬけの殻で、押入れの下の抜け穴から逃げた後だった。情報が漏れていた。盗賊に内通する者が町奉行所の中にいるのだ。久蔵は確信した。 早朝、北町奉行所定町廻り同心岡本新八郎の死体が発見された。久蔵は、顔見知り、それもやくざか遊び人の犯行と読んだ。秋山の弔いの日、喪主の席に座っている妻、美奈に悔やみを述べた秋山は、変わった…と思った。しばらく見ぬうちに美奈は大人の美しさと艶やかさを漂わせた女に変わっていた。 久蔵の屋敷を美奈が訪れた。夫殺しの探索と弔いの折の礼を述べる美奈の、銀簪が揺れて煌めき、高価な伽羅香の匂いが微かに漂った。美奈には何かある…。 美奈は不忍池の畔にある料亭蔦屋で男と会っていた。相手は武士であり美奈が帰る時には既に姿を消し、部屋の淀みの中には微かに伽羅の香りが残っていた。どんな男だとの問いに、女将は「着流しで…何となく旦那のような…」と答えた。 その蔦屋から密かに出て行った秋山久蔵に似た男を、探索中の飴売りの直助が見かけ、てっきり秋山様だと思って声をかけようと思ったら人違いで、服部左門だったと話した。 「服部様は北町奉行所与力の御家人、あっしら岡っ引の出る幕はねぇものかと存じますが……」という弥平次に「ああ、だがな親分、身分相応の裁きにかけねえ方が良い時だってあるんだよ」久蔵は服部を評定所扱いにせず、己の手で裁くつもりなのだ。それは、久蔵の優しさに他ならない。 服部は北町奉行所の御用部屋で「切腹して果てた…」 美奈は「自らの懐剣で胸を突き死んだ…」 ☆第3話 切放し ☆第4話 狐憑き ☆第5話 幽霊 挿し絵をお借りしました

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る