テーマ:読書(8681)
カテゴリ:本
☆神座す山の物語・浅田次郎 ・双葉社 ・2014年10月25日 第1刷発行 ・初出「小説推理」 <帯の文章より抜粋> 少年だった著者が聞いた、伯母の怪談めいた夜語り。それらは怖いけれど、惹きこまれるものばかりだった。切なさにほろりと涙が出る、極上の連作短編集。 1.神上がりましし伯父 武蔵御嶽山(むさしみたけさん) 奥多摩の山中に太古から鎮座する神社があり、母の実家は代々その山上で、神官を務めるかたわら宿坊を営んでいた。東京都だと言われても、俄には信じられぬほどの仙境である。先祖は徳川家康の関東入封を先達した熊野の修験と伝えられ、幕命によって御嶽山に上がってから、伯父で19代目を算えるという話であった。 小学生のころ、その神社の神官をしていた伯父が死んだ。父と離別したあと、2人の子を抱えて苦労していた母が恃み(たのみ)としていた長兄である。 私はその伯父の死を、知らせがくる前に知っていた。私には人の生き死ににかかわることについては、見えざるものが見え、聞こえざる声が聞こえるのだ。 通夜に始まる壮麗な神事が執り行われ、伯父は最後に私と心を通わせたのち、神上がった。 2.兵隊宿 203高地でただ一人生き残った古市一等卒の話。 3.天狗の嫁 戦地から命からがら復員した父は、新宿の闇市を足がかりとしてのし上がった。詳しいいきさつは知らないが、若い時分には立川のキャンプに出入りしていたというから、そのあと帰りがてら奥多摩に足を延ばして、宿坊の娘を見初めたのであろう。幾度も通い詰め、しまいには駆け落ちして所帯を持った。 ほどなく事業を成功させて、私が物心ついた時分には何十人もの従業員を抱える写真機材問屋を営んでいた。神田の電車通りに本社ビルを建て、新宿の三越並びには小売店舗もあった。しばしば自家用車や営業車を連ねて御嶽神社を詣で、大枚の寄進をしたのみならず、みずから世話人となって講社まで結成した。それで母との駆け落ちの決着をつけたのだろう。ともかくその時代にしか存在し得ない、横紙破りな男だった。 毛布一枚貰って復員してきた父には、我がことながら信じられぬ飛躍であったはずで、もしやこれは御嶽神社の冥加かと思ったのかもれない。 4.聖(ひじり 喜善坊という名の山伏の話。 5,見知らぬ少年 鈴木畏(かしこ)という名の少年と出会った話。 彼は母の伯父で、子供の頃に亡くなっていた。 6.宵宮の客 篠つく雨の山道を、破れた三度笠に尻端折で登りつめてきた客の話。 7.天井裏の春子 狐に取り憑かれた美しい娘の話。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.11.14 15:40:33
コメント(0) | コメントを書く
[本] カテゴリの最新記事
|
|