テーマ:読書(9203)
カテゴリ:本
![]() ☆3.走れ外科医・中山祐次郎 ・幻冬舎文庫 ・2021年3月10日 初版発行 ・泣くな研修医シリーズ3 ♣︎雨野龍治 医者になって4年目。後期研修医になって2年経つ。 ♣︎佐藤玲 雨野隆治の先輩外科医。 ♣︎西桜寺凛子 後輩の研修医。 ♣︎向日葵(むかいあおい) 21歳。胃癌ステージ4の癌患者。 雨野隆治の先輩外科医、佐藤玲には天文学者の、澁谷晴海という 10年来の交際相手がいた。彼が2年間アメリカへ行くことになり、一緒に来てくれないかとプロポーズされた。仕事と結婚との板挟みに悩む外科医、佐藤怜の恋。 夏休みに、雨野隆治が交際相手のはるかを伴い、鹿児島へ帰省。母にはるかを紹介し、二人で父と兄の墓参りをした。 雨宮隆治のもとに急患で運ばれてきた21歳の向日葵。彼女はステージ4の癌患者だった。自分の病状を知りながらも明るく人懐っい葵。彼女には、死ぬまでにやっておきたいことが3つあった。1番は富士山に登って神様に1日でも長く生きさせてとお願いすることだった。 現役外科医が生と死の現場を圧倒的リアリティで描く。 ☆4.やめるな外科医・中山祐次郎 ・幻冬舎文庫 ・2022年4月10日 初版発行 ・泣くな研修医シリーズ4 ♣︎雨野隆治 30歳 向日葵、凛子と3人で富士登山のあと、葵からメッセージ届いている。 葵の腫瘍マーカーは上がり続けている。 はるかの誕生日、2ヶ月ぶりに会う食事の最中にも病院からの呼び出しは容赦ない。置き去りにされるはるかを思いやる余裕は隆治にはなかった。 「自分の人生と患者さんとどっちが大事なの?」 あのとき言った、はるかの言葉にかちんときていた。隆治は傲慢だった。外科医の仕事は全てに優先していいと考えていた。そして、それが医者という職業に対する唯一の誠実さだと思っていたのだ。 葵と、隆治の同僚である外科医の凛子も含めた3人でボーリングに行くことになっていた。凛子は病院からの呼び出しで参加できず、一人でも行くという葵を放り出すわけにいかず、葵と2人で行くことになった。ゲームの後食事しての帰路、電車の中で絡みつくような視線を感じた。はるかが瞬きもせずに隆治を見ていた。喧嘩をして以来、2ヶ月も連絡が途絶えている彼氏が、知らない女と二人で電車に乗っていたのだ。 大雨の中、待ち合わせ場所に現れたはるかは「何にも言わずここで別れましょ」と言い、立ち去った。はるかとの5年間は呆気なく終わった。 順調に行ったと思った手術だったが、隆治の結索ミスで出血、再手術となってしまった。自信を無くした隆治は、「外科医やめるか・・・・・」そんな考えが頭をよぎった。 その手術のあと、隆治は全ての手術から外されていた。8月も終わりに近づいた頃、彼は夏休みを取り、鹿児島空港に降り立った。 「こう言う凡ミスをやる奴に、執刀はもうさせられない」 「患者を殺す気かよ」 先輩医師の岩井の声が頭の中でこだまする。 鹿児島へと帰郷した隆治は母が唄うシマ唄を聞き、父と兄が眠る墓に詣でた。俺はどうすれば・・・。 その時だった。一条の風が墓地を吹き抜けた。風は隆治の体をぐるりと一周すると、すぐに止んだ。 「これは続けろってこと・・・・・」 隆治は誰かに「外科医を止めるな」と言って欲しかった。たまたま墓地を風が吹き抜けただけだったのだろうが、それでもよかった。 9月に入り、隆治は助手に入れてもらえるようになり、手術に少しずつ戻っていた。佐藤のはからいで、佐藤が執刀する手術の助手に入れてもらえるようになったのだ。「謹慎期間のように、1ヶ月くらい手術から離れることは外科医にはよくあること」ということだった。「まあ、禊みたいなものだから」 佐藤に言われてもよく分からない。 向日葵が死んでしまった。 雨野隆治、30歳。医者6年目。 人の死になんて、慣れない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.02.18 14:49:15
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