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2025.02.21
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テーマ:読書(9181)
カテゴリ:


☆5.悩め医学生・中山祐次郎
・幻冬舎文庫
・2023年4月10日
・泣くな研修医シリーズ5

雨野隆治が、医師を目指し薩摩大学に進学。国家試験に合格して、東京の病院の研修生としてなるまでの日々を描いた作品

♣︎雨野隆治
実家は地元ではそこそこ知られたさつま揚げ屋といえども裕福ではない。
♣︎指宿真子(いぶすきまこ)、甲北高校、入学生総代
♣︎伊佐錦太郎
医者の子である伊佐は、小さい頃から医者の嫌なところをたくさん見てき医者になるのをやめようかと思っているという。

雨野隆治は一浪して薩摩大学医学部に合格した。さつま揚げ屋(薩州あげ屋)が休めないからと、入学式には隆治の両親は当然来ていない。予備校は成績が良い隆治を特待生と受け入れ、授業料はほぼ免除されていた。医学部合格者は102名。半数は県外からの合格者である。

3年生になった。
解剖学 田村教授、解剖実習
隆治は医学部キャンパスに通うもすっかり慣れ、金髪の西、途中から学士編入学をしてきたエミリと親しくなった。エミリは父親がイギリス人の美人で、慶應義塾大学法学部卒のエリートというだけで皆が敬遠している。
医学部3年生は2週間に一度のペースの試験で、否応なしに勉強し続ける必要があった。それも無事合格し、3年生の後期を迎えた。

4年生の4月。法医学の講義が始まった。
雨の季節が明け、今日は特別な日。初めて白衣をもらえる日だった。受け取った袋には白衣が3着と聴診器が入ってる。業者が持ってきたカタログを見て、各々が好きなものを選んで購入したのだ。苦しいほどに憧れた特別なコスチュームだった。
白衣に手を通したとき、浪人中、模擬試験の志望校を書く欄に、「医」学部、「医」学科と書くだけで胸がドキドキした日のことを、両親に初めて「医学部を目指す」と言った晩のことが浮かび、気がつくとボロボロと涙を流して泣いていた。その日、彼は白衣を枕元に置いて寝た。

隆治は夏休みはどこへも行かず、医学部4年生のために開放されている大学の講義室で勉強していた。9月には、6年生になって受験する医師国家試験のミニ版ともいえる公的なテストが控えていたのだ。

その日、田村教授は、「晴れてスチューデントドクターとして臨床の場に立つことを許された諸君」と呼びかけた。「・・・勝ち続けた者たちへ、賛辞と心からの敬意を表するものである。」更に「・・・第一に、生活の全てを患者の治療に捧げよ。第ニに、その生活の全てを自身の知識、技術の向上に捧げよ。第三に、診察上知り得た情報は、決して他言してはならない」
あの聡明な田村教授のことである。時代錯誤であることはきっと承知で言っているのだ。隆治はそう捉えた。荘厳とも言える雰囲気は、隆治たち医学生に覚悟を植え付けるのに十分だった。最後に、「賞状」と小さいケースに入った「スチューデントドクターのバッジ」が手渡された。雨野隆治、23歳。

5年生になった4月、小児科に始まり、内科、外科など14の科を回る臨床実習が始まり、白衣を着て毎日病院に行く日々となった。産婦人科実習では、隆治は双子の胎児が一人だけ体内で死亡するという辛い場にも立ち会った。
その日、隆治は自ら希望した消化器外科の医局にいた。外科医になりたいという隆治に、先輩医師は「一度は東京へ行け、東京には日本で一番上手い外科医が集まっていて、互いにしのぎを削ってる。医者になったら自分の人生は自分で切り開くしかないんだ。お前は東京で外科医になれ」と言った。

隆治は浅草近くの牛ノ町(うしのまち)病院の会議室にいた。
カンファレンスが終わり、あとに残ってプロジェクターを片付けているのは、未だ若手の女性医師だった。隆治は、名を聞いた女性医師の驚くほど整った顔に思わず見入ってしまう。
「よろしく。私は佐藤怜。外科に入って1年目。研修から牛ノ町病院だからいま3年目ね。うちでの研修を考えているの?」という問いに「考えてます」と答えた隆治に、「そういう時は『希望してます』というんだよ」。
返事も聞かずさっさと歩いていく佐藤の背中は小さい。が、どことなく威厳があった。その日は夕刻にも外科医、内科医のカンファレンスがあった。話を聞きつつ隆治の頭は徐々に傾いていった。「この病院、もしかして教育に熱いのかも・・・」。明らかに発熱している頭で、そんなことを考えていた。

年が明けて2月、国家試験が始まった。この試験の受験者数は全国で約1万人、合格者は9000人。合格して当然というのもプレッシャーだった。法学部を出て法曹の道に進む者は一部だが、医学部を出て医師免許を取らない者はまずいない。
3月末、隆治は無事合格した。
大騒ぎする両親を見て隆治は涙ぐんだ。この2人を置いて東京へと移り住むことへの寂しさでいっぱいになった。

隆治の友人たちは軒並み合格していた。指宿真子は港区の病院、大学をやめて一足先に上京していた伊佐と一緒に住むそうだ。エミリは法医学を学ぶべく東京の私立大学の法学部教室に入った。ギリギリの点数で合格した西は隆治の病院の近く文京区の都立田端病院での研修となった。



☆6.外科医 島へ・中山祐次郎
・幻冬舎文庫
・2024年1月15日 初版発行
・泣くな研修医シリーズ6

・雨野隆治、31歳。医師歴7年目の外科医。
・瀬戸山医師、外科医歴10年で神仙島に来て、島での勤務歴32年。
・半田志真(はんだしま)。看護師、神仙島出身。

雨野隆治は離島の診療所の交代常勤医師として、神仙島へ約6ヶ月間行くことになった。神仙島は三宅島の隣にある、集落が二つしかない離島である。診療所は島の規模の割に透析設備もあり、なかなか設備が整っている。医師住宅は一軒家の古い大きな平家建てだ。
この島では本当に「なんでも診る」ことが求められる。専門家に相談することもできない。息苦しいような気がするが、この負荷がきっと自分を成長させるのだ。そう信じるしかない。

工事現場で、ショベルカーとトラックの間に腹部を挟まれた患者が救急搬送されてきた。島でできることには限りがある。都立病院へ搬送するヘリの到着を待てずに患者は腹腔内出血による出血性ショックで死んでしまった。
もっと、何かできたのではないかと思い悩む隆治に、瀬戸山医師は言う。
「・・・年に5人は、ああやって搬送が間に合わずに死ぬ。島に来て島で暮らす。ここの住民は、この豊かな島で、都会とはちがう時間の流れの中で、ゆっくりと過ごすことを選択してるんだ。都会のど真ん中のような医療は受けられないことを承知の上で、だよ」と。
瀬戸山が島に来てすぐに、立て続けに2人の若い患者が亡くなった。それも信じられないほど呆気なく死んでしまったのだ。彼は半年で帰るつもりが、島に残る道を選んだ。そして、この島の医療を少しでも良くして、島外に搬送できるようにして、なんとか死亡者を減らそうと頑張ってきたのだ。

隆治はまだ慣れないことが多かったが、ついてくれる2人の看護師のおかげで困ることは減っていた。何より困ったことは、なんでも瀬戸山に尋ねれば解決してくれるのだ。離島における医療は、こういう超人的なスキルのある医師の、超人的な献身によって成立しているのだと理解した。
彼は自分がこれまで学んできた領域が、医療という大海の中でいかに「小さな島」でしかなかったかを、痛烈に実感させられる日々であった。

祭りの日の夜中、神社の脇の竹藪のなかで、女性の死体が発見された。怪我をして診療所に入院中の恋人に容疑がかかり、警察に引き渡されるという事件もあった。

志真は優秀な看護師であった。以前は東京の病院で看護師をしていた。腎臓病を患い、医師である恋人と分かれ島に戻る道を選んだ。彼女は透析を受けながら看護師として働いていた。その志真が倒れ、心臓停止。隆治の必死の心臓マッサージとAEDで蘇生したこともあった。

隆治にとって瀬戸山医師は尊敬できる医者であった。いつか彼のような医者になりたいと思った。

「雨野せんせ、お久しぶりですぅー」
東京に帰る日があと4日に迫った9月の終わり、西桜寺凛子が隆治の後任として島にやってきた。凛子は牛ノ町病院の後輩外科医である。





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Last updated  2025.02.21 16:35:14
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