2011/02/02(水)13:37
初春文楽公演『染模様妹背門松』
大雪の後、除雪してあるにもかかわらずガッタガタの道路をパリダカみたいな勢いで(天井やら窓ガラスにアタマをぶつけながら)運転しています
道のところどころで雪にはまって抜け出せなくなった車を、後ろから押して動かすためにどこからともなくわらわらと人が現れては救出していく様を見ると、
「まだまだ世の中すてたもんじゃないな~」と心が温まる思いです。
っていうか、実際問題自分の前を走っていた車が立ち往生していると、全く前に進めなくなるので救出するほか仕方がないというのが実情かもしれません。
それでも(自分の通行とは関係のない)反対車線のドライバーまで出てきて押しているのを見かけます。
で、運悪く(?)アタクシの車の進行方向でタイヤ下の雪をショベルでかいている爺様を目撃してしまい・・・
アタクシも善意の心でもって、一人で(←他に通行者はなし)車を押してあげましたとも。
アタクシに実は秘めたパワーがあるのか、車というのは意外に軽いものなのか定かではありませんが、なんとか救出いたしました。
慣れない怪力を使い果たしたせいか、両腕が筋肉痛で昨日背中を洗うのが大変でした(-公- ;)
大雪のショックで頭の中まで真っ白になりつつあるので(←言い訳)、特に印象的だった文楽のオモシロ場面を書き留めておくことにします。。(※通しのきちんとした文楽レポは藤紫さまのところで読めます♪)
「これを見に来たと言っても過言ではない」今回のアタクシと藤紫さんで勝手に決めたメイン演目。
『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』
かの有名な油屋の娘お染と使用人の久松との心中事件のお話・・・なのに。
この「油店の段」はやたら面白い。やたら笑える。
使用人の久松と両想いながら、身分違いの恋は許されず山家屋清兵衛のところへ嫁入りすることが決まっているお染。
婚礼衣装を見るのもイヤだからいっそのこと(せっかく縫ったばかりの着物を)ほどいちゃってくれればいいのに・・・と駄々をこねています。
そこへやってきたのが番頭の善六。
こいつがまぁ曲者で、どうしようもない小悪党なのです。善六という名前なのに、善のカケラもありません(笑)
〈善六の悪事とその結果〉
1.嫁入り前のお染に「小さいころからあれこれ面倒をみてやったじゃないか?山家屋に嫁ぐ前にちょっと情けをかけてやってくれ。」(←あくまでもニュアンスで、本当はもっと下劣なことを言っている)と無理やりラブレターをねじ込む。
↓ 結果
同じセリフで下女のりんにせまられ、あえなく失敗。
2.芸妓の身請け金を必要としていたお染の兄、多三郎に偽物の色紙をつかませ、イカの墨で書いた(時間がたつと消えるらしい)証文を渡し、質屋と結託してだます。
↓ 結果
たまたま来ていた許嫁清兵衛に見破られて失敗。
3.久松がお染に宛てたラブレターを公開して、2人の不義を暴き清兵衛に恥をかかせようと企む。この時の得意気な態度がまた小憎たらしい(爆)
↓ 結果
清兵衛によって、いつのまにか久松のラブレターを善六が書いたものとすり替えて、自分の身が危うくなり墓穴を掘る。自分で自分の書いたラブレター(兄の悪口も書いてある)を音読する羽目になり、慌てふためく様が最高
他にも本物の色紙を盗み出そうとしたら、久松によって違うものにすり替わっていたり、まぁことごとく失敗続きなんですわ。
タイムボカンシリーズの悪役みたいな感じで悪党なのにおっちょこちょいで憎めないというか。
すり替わったはずの恋文がなぜか今回の文楽公演のパンフレットになっていたり、(ちゃんと義太夫節で読み上げたりする)お騒がせ歌舞伎役者エビゾーの名前が出てきたり、アドリブっぽい演出も盛りだくさんで面白かったです。
こう見ていると、許嫁の清兵衛ってのはかなり賢くて頼りがいのあるいいヤツじゃないですか?
「お染よ、一時の気の迷いで久松と駆け落ちするより、清兵衛と結婚したほうが安定した幸せな人生が送れるんじゃないか?早まるな!」と忠告してあげたくなります。
次の「蔵前の段」では、
2人を引き離そうと蔵に軟禁されている久松に会うため、こっそりと行灯を持ってしのんできたお染に遭遇した善六。
「オレが蔵の鍵を持っているから、金目のものを蔵から盗んでオレと夫婦になろう。」(実際は久松のことを乳臭いと言ったり、何やらエロいことを言ったりして口説いている)としつこく迫ります。←めげないヤツ。
↓ 結果
扉の前で待ち構えていた久松に当身を食らい気絶(爆)
その隙にお染と久松は逃亡
書いていると、この話の主人公は善六のような気がしてきました(笑)
実際、善六の人形を遣っていたのが勘十郎さん。コミカルな動きで圧倒的な存在感がありました。
勘十郎さんは他の演目『小鍛冶』では、稲荷明神が化身した狐の精霊というか神様の役もやっていて、それはそれで素晴らしい動きだったのです。
今回「3枚目の役もできる一流役者の演技」を見たような感じでした。