304713 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

紫色の月光

第二十一話「『起きなさい!』」

第二十一話「『起きなさい!』」


 マーティオの身に異常現象が起きていた頃、慎也達は地下のパソコンから情報を漁りまくっていた。実の話、今まで隠れてネットサーフィンをやっていたら予想外にはまってしまい、娘との連絡を疎かにしてしまったと言う恐ろしい事実があるわけだが、そこら辺は今は気にしないで貰いたい。

「……慎也、まだデータの『こぴー』とやらには時間がかかるのか?」

 隣にいる仲間が慎也に言う。因みに、彼等の村は恐ろしいほどのド田舎のため、パソコンに触れたことがある人物はかなり限られている。この場には2人の忍者がいるわけだが、この中でパソコンを扱ったことがあるのは慎也だけだ。

「ちょっと待ってくれ。今データをダウンロードしている………」

 転送率が78%から100%に徐々に近づいていっている。そして遂に、

「よし、ダウンロード成功!」

「よし、早くこんなところからはおさらば――――」

「あ、マテマテ。まだ肝心な事をやっていない」

 急いで脱出しようとした忍者は思わず振り返ると、そこには再びパソコンと向かい合っている慎也の姿があった。

「何をしているのだ!?」

「何って体験版のダウンロードだ。全部で5つもあるんだぞ」

「5つ!? 一体なんのでーたなんだ!?」

 仲間が無理矢理画面を覗き込むと、其処にはピンクの字で『メイドさんVS幼馴染』と言う奇妙な単語が出ていた。

「どうやら、イシュと言う組織は俗に言う『ぎゃるげー』でも金を稼いでいたらしい。今は最新作を入れて五本あるから、それを全部ダウンロードしないと」

「……慎也、お前もしかしてさっきダウンロードしてたのってコレか?」

「無論。それがどうした?」

 その「ぎゃるげー」とは何なのか分らないが、何となくむかついた為、仲間が思いっきり彼を引っ叩こうとした次の瞬間、突然大振動が彼等に襲い掛かった。
 
 


「しゃああああああああああああああ!!!!」

 大鎌を乱暴に引きずりながらマーティオが猛目掛けて突っ込んでいく。相変わらずその目は歪んだままだ。

「………」

 その光景を猛がじ、と睨む。
 今のサイズは間違いなくレベル4だ。彼のブレードがそう訴えている。

(問題は今の奴をどう倒すか)

 今のマーティオは理性がない状態だが、その分パワー、スピード等の身体能力が異常なまでに跳ね上がっている。
 猛が知る最終兵器のレベル4にはこんな現象が無い為に戸惑ってしまったが、まともに相対すれば恐いはずがない。何故なら、彼のブレードもレベル4だからだ。

「同じ条件ならば俺は負けはせん!」

 猛がブレードを振りかざす。そのブレードに力をこめると同時、彼の刃から凄まじい衝撃が放たれる。

「ああ~?」

 マーティオは首を傾げるが、どうやら今の彼は考えるだけで面倒のようだ。

「あああああああああああああああああああ!!!!!」

 彼が吼えると同時、サイズからもブレードと同じように衝撃が放たれる。
 
 次の瞬間、二人がほぼ同時にそれを相手にぶつける為に力任せに投げつけた。この力勝負は純粋なパワー勝負。その恐るべきパワーがぶつかる事により、半壊している塔の最上階が更に半壊するほどの大爆発が生まれた。

「―――――――」

 しかしそんな爆発の中、猛は顔色一つ変えずに、身動き一つもせずにただ立っていた。何故なら、彼の真上から大鎌を持つ死神の姿が、月の光に照らされてはっきりと映るからだ。

「あはははははははははははっ!!!!」

 サイズの曲刃が月の光を帯びて不気味に光る。その光を力に変えるサイズはそのまま曲刃の長さを光の力の分だけ長くする。

「しゃあああああああああ!!!」

 マーティオが巨大な大鎌を信じられないほどの腕力で振りかざす。
 その刃の長さは先ほどの長さの3倍はある。普通の力ではまず持ち上がらない以前に扱えないだろう。

「受けよ、我が奥義!」

 しかし、猛は恐れる様子も見せずに剣を構えた。それが不気味に光りだすと同時、刃は風を噴出しながら嵐を巻き起こす。

「石嵐!」

 その嵐は無数の石の刃を巻き込みながらマーティオに襲い掛かる。
 しかし、マーティオはそれに対して不気味に笑う。恐怖も、焦りも、憎しみも無く、ただ己の本能のままに。

「ディアナライトォっ!」

 次の瞬間、マーティオがようやくマトモな言葉を喋ると同時、大鎌の刃がまるで月の様な輝きを放ち始める。まるでビームだ。

「クラッシュ!」

 それを力任せに石嵐に叩きつける。
 その瞬間、二つの力が爆発するかのように相殺された。




「ちょっと、何がどうなってるのよ!?」

 迫り来る機械兵を驚異的なスピードで避けながら棗が叫ぶ。
 それに続いてネオンが相変わらずの無表情でアローを放つ。二人はコレで機械兵を倒していっているのだ。詰まる所、速さの勝負で後はネオンがお掃除するわけである。

「イキナリ部屋がバッサリ上の階ごと切れるわ父上との連絡は相変わらず取れないわあの馬鹿はどっかにとっ捕まるわ一体何がどうなってるのー!?」

 この連続のハプニングで棗はもう泣きそうだった。しかし次の瞬間。

「――――――!?」

 本日三度目の地震が彼女達を襲った。その揺れのお陰で機械兵達はバランスを崩して倒れていっている。今がここを一気に突破するチャンスだ。

「………れっつごー」

 ネオンのやる気があるんだが無いんだかよくわからない言葉を先頭に彼女達はひたすら前へと進む。
 
 だが、次の瞬間。彼女達の足を支える床が度重なる強烈な振動によって崩れていった。それと同時、天井も雨のように崩れてくる。

「ちょっと、洒落にならないってぇぇぇぇぇ!!!!」

 もう棗は泣いていた。床が完全に崩れては足が宙に浮いていくのが分る。ああ、感覚がある事が恨めしい。

「……乙女のぴーんち」

 本当に危機感を感じているのかよくわからないが、それでも大地に叩きつけられたら短い人生の終わりだ。

「ええい、しっかり捕まっときなさい!」

 そう言うと棗はネオンを無理矢理捕まえては上から降り注いでくる床の大きな破片に飛び移る。

「どりゃああああああああああああああああ!!!!」

 もう半ばヤケクソだった。凄まじいスピードで上へ上へと飛び移っていき、休む時間なんて全く無い。

「これで!」

 棗が降り注いでくる天井を踏み台に力一杯跳躍する。その脚はまるでバネだ。

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 カエルやウサギもビックリの大ジャンプを見せてくれた棗は塔の最上階の無事な部分に着地しようとする。
 しかし次の瞬間。

「おお、棗。パパは心配してたよ~」

 何処か気の抜けた声が聞こえてきて思わず空中でコケた。そのため、彼女とネオンは無情にも宙へと落下していく。

(ああ、死ぬ! 地面に叩きつけられて死ぬ!)

 とか思いながら棗は泣きながら落下していく。
 しかし、ぐい、と何処からか力強い手によって彼女達は急停止した。

「ああ、もう。折角父さんがアドレナリン大沸騰中の娘を冷やしてやろうかと思って軽いジョークを言ったのに」

 ふと見れば、其処にいたのは慎也だった。彼は片手で棗の腕を掴んでおり、正に間一髪の状態だった。
 しかし、娘の怒りはMAXに近づいていった。

「時と場合を考えろこの馬鹿親父!」

「ああ、酷い!」

 慎也はわざと大げさなリアクションをとってみせた。嘘泣きまでしている辺りプロだ。

「聞きましたか母さん! 私は棗をこんな娘に育てた覚えは無いのに……これじゃあ天国の母さんに顔向けできないよ!」

「何言ってるの。母上は今はアフリカで動物保護の任務についているんじゃない! 勝手に故人にするな!」

「もう、ジョークが通じない娘は父さん嫌いだぞ♪」

「言っていいジョークと悪いジョークがある!」

 取りあえず、今やるべき事は早いところ最上階に上がることだと思う。




 マーティオは別に理性が戻ったわけではない。ただ、その時の勢いで叫んだだけだった。その証拠に、未だにヘラヘラと笑いながら大鎌を引きずっている。

「…………」

 そして猛は内心焦っていた。何故なら、もうそろそろ時間だからだ。

(宇宙人の偵察部隊、か)

 もし、こんなトンデモバトルを宇宙人に見つかったりしたらそれこそ危険対象として攻撃されかねない。
 ウォルゲムの情報によると、宇宙人勢力は偵察部隊でもディーゼル・ドラグーン10体分の戦力はあるという。詰まり、地球の都市は簡単に破壊できるのだ。

(こっちは今、ディーゼル・ドラグーン自体無い状態だ。と、なれば俺がやるしかないわけだが)

 なのだが、目の前に狂った破壊兵器がいる以上、コイツの相手もしなければならないだろう。だが、流石に宇宙人勢力が巨大な事も考えると先にマーティオを片付けた方がやりやすい。

 だが、そう上手くいかないのが現実って物である。
 先ほどから彼は以前と同一人物なのか疑わしくなるほどに恐ろしい戦闘能力を誇っている。これには何とかして対処するのが精一杯で、致命傷を与える事が出来ないのだ。

「ひゃっはああああああああああああ!!!!」

 マーティオがイカレた目で襲い掛かって来た。




「ちょっと、何がどうなっているの?」

 棗は唖然としながらマーティオの変わり果てた姿を遠くから見ていた。あの叫んだ姿もそうだが、目の色が銀色の変色し、耳が俗に言うエルフ耳のように尖がっており、何よりも理性と言う物が感じられない。まるで野獣を見ているようだ。

「分らん。我々が着いた時はもうベルセリオン殿はあんな感じだった」

 慎也が偉くマジな顔で言った。そして、その横でネオンが震えながら呟いた。

「………月」

「月?」

「……サイズから力が無理矢理マーティオに流れていってる。その力の源は月」

 マーティオと猛以外のその場にいる全員が上空に輝く満月を見上げる。

「……つまり、今のベルセリオン殿は大きすぎる力に耐え切れない状態にある、と?」

「……そう。レベル4を扱うだけの力を取り戻したけど、それでもあの力は制御できない」

 力の源があるのなら、それを壊してしまえばいい話だがそれが月となれば打つ手が無い。地球から月を壊す手段が今の彼等には無いのだ。

「と、なればあれを止める方法は一つ」

 慎也が言った言葉にまたしても全員が振り向いた。

「ベルセリオン殿からあの大鎌を一回取り上げるしかない」

 考えてみれば、サイズから力が流れているのならその力の流れを止めるにはサイズを取り上げればいい。
 しかし、そうも簡単にはいかない。今のマーティオは見境なく攻撃してくるだろう。しかもその戦闘能力がもう洒落にならない。

「……どうやって取り上げるの?」

「我ながら情けないとは思うが……此処は敵さんに賭けてみるしかないだろう」

「はぁ!? あの男に任せるっていうの!? 大体敵じゃん」

 棗の言う事ももっともだ。

「だが、考えても見よう。お前に今のベルセリオン殿を止めるだけの実力があるか?」

 それを聞いた棗は言葉に詰まった。

「悔しいが、私にも、雪月花殿にも無理だろう。と、なれば同じくレベル4とやらを扱えるあの男がどうにかするのを見ているしかない」

 慎也がぎり、と歯を噛み締める。しかし、その隣でネオンが慎也の服を引っ張った。

「……私、できる」




 更にパワーを上げやがったな、と猛は思った。
 今のマーティオは先ほどから徐々に身体能力を高めていっている。これもサイズのレベル4の影響だろう。

 しかし、それにも欠点がある。その高すぎる能力に果たしてマーティオの体がついていけるのか、と言う事である。
 少なくとも、人の体なのだから限界はあるはずだ。そうとくればそのレベルになるまで耐えたらいい話なのだが、ところがどっこい其処まで猛が耐えられる事ができるのか、と言われたら言葉に詰まる。

 現に今も押され気味で、疲れが見えている。

「ひゃっはあああああああああああ!!!」

 大鎌をマーティオが振りかざす。今度の一撃は先ほどの『ディアナライト・クラッシュ』よりも更に輝きが増している。

「ディアナライト―――――」

 其処まで言った瞬間、マーティオ目掛けて光の矢が飛んできた。それはいかにも気付いてくださいとでも言わんばかりの凄まじい音を立てながら飛んでいく。

「――――!」

 その音で思わずマーティオが飛び退く。その直後、先ほどまで彼がいた場所に派手な音をたたせていた矢が突き刺さった。
 床が破壊されないところを見ると、音はマーティオをこちらに気付かせる為だけの見せ掛けだろう。

「…………へい、マーティオ。起きてる?」

 そしてそれを放ったのはアローを展開しているネオンだった。
 そしてその後ろには心配そうにこちらを眺めている神谷親子の姿も見える。

「……ホントに上手くいくのかしらねぇ?」

「全ては雪月花殿次第。果たして彼女には如何なる策が……」

 二人が真剣に話をしている時、猛とマーティオの鋭い視線にビクつきながらもネオンは呟いた。

「………レベル4、行きます」

 その瞬間、彼等がいる空間を光が包み込んだ。




「――――――!?」

 光に包まれた瞬間、マーティオは自分一人だけがこの場に存在している事に気付いた。猛もいないし、先ほどの無愛想な白髪の少女もいない。

 だが、この空間には違和感があった。
 まるでダイヤモンドの中にでも閉じ込められたかのように『鏡』で覆われているのである。しかし、月の光を吸収して力に変えるサイズの能力が続いている所を見ると、幻影だろう。

「………いっつ、しょーたいむ」

 何処からかネオンの声が聞こえてくる。それと同時、ガラスの破砕音と共に覆っている鏡が砕け散った。

「!?」

 だが、その鏡の破片がマーティオの周囲を回転していく。マーティオを太陽とすると鏡の破片は無数の衛星だ。

「……ごめん」

 それだけ聞こえてくると同時、マーティオの目の前に浮かんでいる鏡にネオンの姿が映った。しかも矢を構えている状態で、だ。

「!」

 鏡の破片から矢が飛び出してくる。突然の出来事にマーティオは思わず横に回避した。

「……逃がさない」

 しかし次の瞬間、彼をとりまく360度の視界に漏れなく入る鏡の破片全てにネオンの姿が映り、そこから一斉に矢が放たれた。

「!」

 そのうち一本がマーティオの腕を掠める。それと同時、彼は痛みを感じた。
 この異常現象は決して幻影ではないのだ。

 それを身を持って知ったマーティオは、それならばと言わんばかりに思いっきり跳躍する。鏡の破片をネオンごと叩き潰すつもりなのだ。その歪んだ瞳が鏡を睨みつける。

「ルナライト・クラッシャアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 光が大鎌に集い、それが広範囲にわたって床に叩きつけられそうになる。だが、その直後、鏡が一斉に集い、一つの巨大な壁となってルナライト・クラッシャーを、

「弾き返した!?」

 これには慎也達も驚きを隠せなかった。
 そして次の瞬間、遂に彼等が待っていた瞬間がやってきた。

 暴れまくるマーティオにようやく『攻撃の隙』が生まれたのだ。

 棗が走る。今のマーティオは大きな攻撃を弾かれた反動でまともに動けない状態だ。そうとなればチャンスは今しかない。

「!?」

 背後に気配を感じる。しかしもう遅い。棗は既に『武器』を振り上げていた。

「起きなさい、このアホ!」

 その直後、ハリセンがマーティオの脳天に炸裂した。そしてその瞬間、衝撃でマーティオはサイズを手放した。



 かん、とサイズが床に落ちた音が響いた。その直後、気を失ったマーティオが床に落ちる。

「……」

 その瞬間、ネオンのレベル4が静かに解除された。そして目の前にいる猛と目が合う。

「……アローよ、再び来たか」

 その猛の威圧感がこめられた言葉の前に、ネオンは消えてしまいそうな声で答えた。

「……パパ」

 その言葉を聞いた瞬間、場が静まり返った。


 
 続く



 次回予告


マーティオ「……なーんか頭が痛いな。しかも知らないうちに結構破壊されてるし……誰がやったんだ? ――――え、俺様? んー、全く記憶に無いぞ。しかし、何だか恐るべき事実が明らかになったようだな。色々と複雑な事情がありそうなんだが、生憎俺のリベンジは終わっちゃ居ない。悪いが、俺がやらせてもらうぜ!

次回『これぞ恐怖の血まみれ殺法!』

レベル4が使えないからどうだってんだ!」






第二十二話へ


Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.