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紫色の月光

第三十五話「ツイン・ウェポン」

第三十五話「ツイン・ウェポン」



 マーティオ・S・ベルセリオンは容赦のない男だ。敵ならば女子供でも容赦なく殺す事だって躊躇わない。
 しかし、後に何か引きずるのは嫌だった。ゆえに、彼はネオンにこう質問した。

『おい、今度俺が猛と会った時、手加減はしねぇぞ。殺していいんだな?』

 空港から出発する直前に言われたこの質問。突然だったが、ネオンは相変わらずの無愛想さで答えた。

『……構わない』

 だって、と彼女は続けた。

『パパはもう、私を見てくれないから……』

 その顔は何時ものように無愛想。そして何時ものように何を考えているのか分らなかった。
 
 だが、これだけは分った。


 何時もより、悲しい目だ、と。






 自由の女神の上空。大鎌を片手に猛を見下ろすマーティオ。
 前に戦った時は理性がなくなり、討ち損なった。

 だが、今は違う。

(もう俺を縛るものは何もない……このサイズと、翼がある限り!)

 そう、何処までも羽ばたいて見せよう。例えどんな強敵が現れたとしても、斬り捨て、飛び越え、そして羽ばたいてみせる。

 最初の障害は、女神のたいまつの上に佇むあの男。
 嘗て京都で自分に絶対的な屈辱を味あわせた憎い男。相澤・猛。

「ぶっ殺おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっす!!!」

 まるで台風のような雄叫び。
 空気が声に反応し、振動していくのが肌を通じて分る。

 直後、黒の翼が大きく展開。まるで蛹の様にマーティオを包み込むと同時、一つの塊となって猛に突撃する。

「ふん」

 だが、猛は鼻で笑った。顔に余裕があるのだ。始めて京都で出会った、あの時のように。
 
「暫く見ないうちに随分と変わり果てたな、小僧。だが、俺とブレードの前では、役不足だな!」

 ブレードを構えると同時、その刃が不気味な光を放ち始める。最終兵器のレベル4発動の合図だ。

「うおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 光が放たれた状態のまま、猛はブレードを一薙ぎ。
 マーティオを包み込んでいる黒い塊に斬りかかった。

「む!?」

 凄まじい金属音がぶつかり合う、鈍い音。
 そして同時に、猛はある事実を認識した。

(この翼、石にならない!?)

 ブレードのレベル4は石化能力だ。嘗て京都でも、サイズのレベル3を石化したこともある強力な物である。
 だが、コレを防ぐ、と言うことは、

(この翼、ブレードでは砕けぬ!)

 そう思ったと同時、黒の翼によって包まれたマーティオが一気に翼を開き、猛に襲い掛かる。

「散れ」

 零距離、とも言えるほどの至近距離での無数のナイフ攻撃。大鎌の柄を無数に分裂させて作り出したウィザード・ナイフの雨である。

「っ!」

 距離があるのなら全て切り払う。だが、今回のように零距離ならば、避ける方法がない。

「だが、防ぐことが出来る」

 直後、ナイフの雨が猛の身体に命中。
 しかし、それは猛に突き刺さることなく、彼の肌によって弾かれる。

「何!?」

「京都で俺が生きていた理由を忘れたか、小僧! 俺は自分の身体ですら強固な石とすることが出来るのだぞ!」

 全身を硬い石にした常態のまま、猛が笑う。
 ウィザード・ナイフは全て命中したが、どれも石の猛には致命傷を負わせられずに終わったのだ。

「次は自分の身を心配する番だぞ、小僧!」

 猛がにやつくと同時、マーティオはあることに気付いた。

(サイズは? サイズは何処にいった!?)

 分裂した柄は既に一本の大鎌に戻してある。だが、それを手中にしているはずなのに、それを『感じ取ることが出来ない』。

 だが次の瞬間。彼は気付いた。

 感じることが出来ないのではない。もっと簡単な理由があった。
 鎌を持つ腕が『石化』されているのだ。

「翼は石には出来ない。だが、貴様自身はまだブレードのレベル4を無力化できないようだな!」

 外からが駄目なら、中から攻めればいい。考えても見れば、これほど簡単な理屈もない。

「ちっ!」

 思わず舌打ちするマーティオ。一旦空に後退しようと翼を広げるが、

「逃がさん!」

 ブレードが更なる光を発すると同時、マーティオの足を石の鎖が束縛する。羽ばたいて空に逃げようとしても、完全にロックされてしまったのだ。これでは自由に移動できない。
 しかも、鎖を砕こうにも腕は両方とも石にされている。これではサイズを自由に振りかざすことが出来ない。

 文字通り、成す術なし、である。

「くそ!」

 悪態をつきつつも、必死に羽ばたくマーティオ。しかし石の鎖はびくともせず、この場から離れることが出来ない。
 
「チェックメイトだ」

 喉元にブレードを突きつけられる。
 少しでもこの刃が動けば、マーティオの首は一瞬で吹っ飛ぶことだろう。

「此処までよく足掻いてくれた。褒めてやるぞ……最期に言い残すことはあるか? 聞いてやるぞ」

 すると、マーティオは迷うこともなく言い放った。

「テメーは殺す……必ずだ」

 ぎらぎらとした殺意の目を突きつけつつ、マーティオは猛を睨む。
 それと同時、猛はブレードを一旦引く。

「戯言を残す余裕があるとはな。じゃあ、あの世で直に会う友達とアローと仲良くしろ」

 言い終えると同時、猛の刃が、マーティオの喉に襲い掛かってきた。
 




 狂夜は牙を剥き出すと同時、一気に竜神に襲い掛かってきた。その俊敏さ、跳躍力、そして獲物を追う目。全てが以前の彼を上回っている。

「成る程、自身に隠された最終兵器を剥きだした事で、自身を強化したというわけか」

 だが、この地面で戦う以上、自分の優位さは変わらない。
 自身の最終兵器、アックスのレベル4は土を操る能力。例え地面がコンクリートで固められていようと関係無しで扱えるこの能力の前では、身体能力の違いなど小さなことだ。

「ほうら、地面の上でいる限り、どいつもこいつも私のテリトリーの中にいるのと同じだ」

 直後、コンクリートの上を走っていたはずの狂夜の足が、突然コンクリートごと『沈んだ』。まるで沼にでもはまったかのように、だ。

「そのままコンクリートの底なし沼に沈んでいけ」

 竜神が勝ち誇った笑みで言うと同時、狂夜は動いていた。

「ぬ……! くぬ!」

 必死に這い上がろうとするが、一度はまったら抜け出せないと言うのが底なし沼の恐ろしさだ。いかに狂夜の体が最終兵器を宿しているのだとしても、出来ることと出来ないことと言うものがある。

「だが、これならどうだ!」

 ソードを沼に突き刺すように沈めたと同時、その刃が不気味な輝きを放ち始める。

「これは! この輝きはまさか―――――!?」

 アックスと同じ輝き。
 それはつまり、レベル4発動を意味している。
 だが、ソードのレベル4は未だに不明。データがない、未知の兵器である。何が起こるのか見当もつかない。

 しかし、竜神には一つの確信があった。

「この状況で何が出来る。貴様が沈んでいくのは変わりがない!」

 例えレベル4で自分を倒せたとしても、狂夜の沈んでいく身体をどうにかできる訳がない。竜神はそう判断していた。

「そうかな?」

 だが、それに対して狂夜は笑みで答える。
 直後、コンクリートの底なし沼の中から、何かが現れだした。

「ん?」

 余りにも小さく、弱弱しいために最初は気付かなかったが、徐々にそれが増えていくとなると話は別だ。
 それは明らかにコンクリートや土とは違う色をしており、まるで自分たちを覆うようにして周囲に増殖しているのだ。

「これは……!」

 植物。
 
 植物の根が、恐ろしいスピードで生え始めて来ている。
 根が竜神の足に絡み始め、沼の周囲には植物色の『緑』で染まっている。挙句の果てには自由の女神にすら根が生え始めているではないか。

「ソードのレベル4は植物の異常活性化……我の望むままに、自然は動いてくれる」

 言い終えると同時、狂夜の身体が沼から這い出てくる。何事か、と思い沼を見ると、信じられない光景が視界に飛び込んできた。

「ば、馬鹿な!」

 沼から轟音と共に巨大な大木が出現。コンクリートの大地を突き破って、力強く思えるほど太い枝に狂夜を乗せた状態で天まで伸びる。

「底なし沼から大木を育て上げたと言うのか……!」

「そうだ!」

 枝から飛び降り、竜神の真後ろに着地する狂夜。

「嘗てソードに取り込ませた宇宙の木、ディマイスの神木……その神木の力がソードに加わり、レベル4の力を更に増加させたのだ」

 そのディマイスの神木と言う物が何なのかはよく分らないが、一つだけいえることがある。もうこの男に、底なし沼は通用しない、と言うことだ。

 振り向き、すぐに次の攻撃に移ろうとするが、

「無駄だ」

 先程コンクリートの大地から突き出て自分の足に絡み付いていた植物。その根が更に勢いを増して自身の身体に巻きついてくる。

「こ、これは―――――!?」

 身体に巻きついてきたこの植物の根は、振りほどこうにも振りほどけない。がっしりとこちらを締め付け、その力は徐々に強くなっていく。

「そのまま締め付け、粉砕せよ。―――『緑の骨粉砕』」

 何かがひび割れる鈍い粉砕音。
 それと同時、強力な力で身体を締め付けられた竜神の悲痛な叫びが上がる。

「流石にしぶとい………」

 既に骨の何本かはへし折れているはず。それだけで気を失わないとは大した物だ。
 
 そう思った、その時だった。

「!?」

 植物の根と根の隙間。そこから僅かに見える竜神の血走った眼光が不気味に光ると同時、骨を折られても尚話さないアックスの刃に、同じような不気味な光が点る。

「これで終わると思うな………最後に笑うのはこの私だ!」

 直後、狂夜を挟むようにして左右のコンクリートが展開。表面に幾つもの鋭い棘が出現し、まるでネズミ捕りのトラップのようにして左右同時に襲い掛かってくる。

「!」

 面積が巨大すぎて逃げられない。
 棘の隙間は殆どなし。隙間を掻い潜って回避する、と言うのも不可能だ。
 しかも、ソードのレベル4には困ったことにチャージ時間が必要であり、それが完了するまで待ってくれそうにない。

「くっ―――――!?」

 眼を大きく見開いたと同時、左右の棘地獄が、まるで拍手をするかのようにして狂夜を叩き付けた。







 大地という素材で完成した超大型のネズミ捕りトラップ。そのトラップで完全に狂夜の息の根が耐えたのか、竜神に撒きついていた根の力が弱くなり、一気に枯れていく。

「くっ……流石の人間最終兵器も、此処まで見事に挟まれたら生きてはいまい」

 だが、こちらのダメージも大きい。先程の締め付け攻撃で骨を何本か持って行かれたようだ。

「だが、まだ動ける」

 ダメージが体に残っているため、ぎこちない足取りで巨大ネズミ捕りに近づいていく。ソードの回収をするためだ。
 邪神復活にはどうしても十の最終兵器が必要。当然、ソードもその中の一つだ。と、なればこの巨大なネズミ捕りからソードを回収しなければならないのである。

「さて、頼むぞアックス」

 ネズミ捕りの隙間。鋼の如き強度を誇るこの大地の隙間だが、そこが一時的に柔らかくなり、内部からソードを取り出してくれる。

 すると、数秒もしないうちにソードの柄が隙間から出現する。その部分だけでも生々しい血と肉の部分がついており、ソードを全て引き抜くと、切っ先にまでべっとりと血がついていた。

「さて、これでソードが戻ったか……」

 一つ肩を撫で下ろし、一仕事終えた感触を楽しむ竜神。



 
 だが次の瞬間。




「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 大地の隙間から狂夜が血まみれの状態で飛び出し、動く暇を与えずに竜神の首元に噛み付く。
 噛み付かれた竜神はその瞬間、身体中が麻痺したように動かなくなっていき、力も徐々に吸い上げられているのを手に取るように感じることが出来た。

 しかし、何も出来ない。

 今の自分に出来ることと言えば、この吸血鬼に血を吸われながら、自由の女神を見上げるだけだろう。

「あ………あ………!」

 狂夜が噛み付いていた首元から牙を抜くと同時、竜神が力なくその場に倒れこむ。限界まで血を吸い取ったのだ。もう動くことは二度とないだろう。

「ぺっ!」

 竜神の血が混じった唾を吐き捨てると同時、狂夜は言い放つ。

「不味い……不味すぎるぞギース氏! 吸血鬼は血が好きだから血を吸うのではないのか!?」

 悪態をつきながらも、彼はソードを拾ってから歩き出す。
 目的地はずばり、

「さて、我も最終決戦の仲間入りをさせてもらおうか……待ってろエリック。傷の治癒が終わったらすぐに行くぞ」








 はて、どうにもおかしい。
 今、自分のブレードは確かに身動き取れないマーティオの喉に突き刺さったはずだ。
 それなのに、

「何故生きている……!」

 マーティオは今、石の鎖に繋がれて身動きが出来ず、喉にはブレードが突き刺さっている状態だ。
 いや、正確に言えば、ブレードの切っ先の動きが喉のギリギリ手前で『停止』したのだ。

 その動きを止めているのは光の反射体。俗に言う『氷の塊』だ。

「『あいつ』が……助けてくれた!」

 両腕は完全に石になっているが、肩の関節は動く。それだけで十分だ。
 
 後は左腕に自動的に装着された最終兵器『クロー』で加速をつけ、一気に石の鎖を切り落とす。サイズのように大きな動きは必要ないため、すぐに切り離すことが出来た。

「なっ!? ――――クローだと!」

 何故お前がそれを装着している。

 その問いには、口で言う前に本人が答えてくれた。

「『アイツ』は、俺を受け入れてくれた! それだけだああああああああああああああああああああああ!!!」

 最終兵器、リーサル・クロー。
 今はもういない愛しい人。
 何時までも大切していたい大事な宝物。
 それらを歪ませ、最悪の場面を自分に見せ付けた憎い存在。

(なんだ!?)

 猛の視界には、奇妙な光景が映し出されていた。
 マーティオの姿がぶれて見えるのだ。一瞬、京都で見せた分身の術かと思ったが、よく見たら違う。

(女―――!?)

 マーティオの隣に女が見える。まるで優しく彼を包み込むようにして抱き寄せ、何者も近づけさせない冷気のオーラを放つその姿は、マーティオを守護しているかのようにも思える。

「く……認めん! 認めんぞ小僧!」

 一瞬とはいえ、その冷気の前に押されてしまった自分がいる。
 それだけでも猛には我慢ならないことだった。

 だが、一瞬とはいえ、怯んでしまったのだ。

「俺『達』の勝ちだ」

 しかし、それだけで十分だ。
 この最終兵器クローの前で怯んでしまうと言うことは、一瞬とはいえ身体や心を冷気でやられてしまうのに等しい。
 身をもって体感しているマーティオだからこそ、それが理解できる。

「……気持ちが分らないこともない」

「!?」

 不意に、マーティオがそんなことを言ってきた。
 どこか虚ろで、何処か悲しい瞳をした眼で猛を見てくる。

「俺をそんな眼で見るな! 俺を哀れむんじゃない!」

 気持ちが分らないこともないのだ。
 それぞれ形が違うとはいえ、大切な宝物を失い、再びそれを求めたのは事実。

 しかし、最終兵器を使って戻ってきた彼女たちは、あまりにも変わり果てていた。元の彼女たちの姿が見えなくなってしまうほどに、だ。
 その光景にショックを覚えてしまったのはマーティオも猛も同じだ。

「だが!」


 それでも、同情はしない。


 してたまるか。


 奴は絶対にぶち殺す!


「京都での借り、此処で返す!」

 しかし、猛は胴体を真っ二つにされても、身体を石化させることで元に戻ることが出来る。つまり、猛を倒すためには、

(奴とブレードを放す必要がある……)

 しかし、猛とてそれは十分承知の上だろう。京都の戦いではブレードがなければ死んでいたのだ。そう易々と手放すことはないだろう。

 ゆえに、マーティオは実行する。

「その剣、手放してもらう!」

 黒の翼を開き、飛翔。
 その位置から一気に獲物目掛けて襲い掛かる。

「小僧、俺がそんな単調な攻撃で倒されると思うか!?」

 反射的にブレードを構えなおす猛。
 向かってくるマーティオは稲妻のようなじぐざくで、尚且つ不規則な動きをしているが、余裕で対応出来る。

 それを見越していたのか、速度を上げて一瞬で瞬間移動したかのようにして消えたマーティオ。
 だが、猛はそれでも『見えている』。

「そこだ!」

 真横で無理矢理鎌を振りかざすマーティオ目掛けてブレードをスイング。風を切裂き、サイズを振り下ろすのよりも早く動いてくる。狙いはマーティオの腹。

「そこから真っ二つになってしまえ!」

 だが次の瞬間、

「!」

 猛のブレードを持つ右手が、何者かの手によって完全に固定され、動けなくなっている。いや、『そう見える』だけだ。実際は猛の右手が勝手に停止しているだけである。

「言ったはずだ、『俺たちの勝ち』だって」

 一体何が起きているのかは猛には理解できないだろう。
 
 だが、マーティオの目にはしっかりと映っている。





 ヘルガが―――――今はもういないはずのヘルガが、弱弱しく、か細い両手で猛の強靭な腕を掴んでいるのだ。
 見ていれば今にも折れてしまいそうなヘルガの白い腕。しかしその腕は猛に壊されることはない。

 何故なら、ヘルガが掴んで離さないように『見える』物は、クローのレベル4で猛の腕を凍らせた物だから。

 そして、それを壊すのは他ならぬ自分の役目だから。

「ぬがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 その凍った腕の上にマーティオは舞い降りる。
 直後、彼は右足をかざし、思いっきり蹴り上げて氷の腕を粉砕。その場に氷で出来た光の破片が飛び散った。
 そして同時に、猛とブレードをつなぐ唯一つの塊を破壊したのである。

 しかしマーティオは止まらない。
 腕を粉砕したままの姿勢で一回転。綺麗な弧を描きつつ、猛の首に加速の横薙ぎキックを叩き込む!

「ぐおあ!」

 腕の粉砕の際、猛の意識は完全に吹っ飛んでいた。更に加えての回し蹴り。普通なら避けられるかもしれなかった一撃だが、無意識の内に受けた攻撃をかわした事にすることなど出来る筈もない。

 しかも、此処は自由の女神の一番高い場所。たいまつだ。そこから吹っ飛ばされた猛は、物理的に考えるまでもなく、コンクリートの大地に向かって落下していく。
 見下ろすマーティオの視界ではどんどん小さくなり、点のようにしか見えなくなるその姿。

 そして次の瞬間。

 とうとう猛の身体が大地に力強く叩きつけられ、バウンドしてもう一度叩きつけられた。

 この高さからモロに落ちたのでは、全身強打で生きてはいまい。もし仮に生きていたとしても、腕が粉砕されているのだ。

「苦しみながら死んでいけ。そして、もう二度と俺の前に現れるな」

 そういうと、腕の石化がようやく解けたことを実感するマーティオ。恐らく、猛がブレードを手放したがために効力が切れたのだろう。

 一回腕を回してみる。

 大鎌を振り回すのなら支障はない。寧ろ、これで本調子だ。

「ったく、妙な真似しやがって」

 直後、彼は猛が落下した方向に唾を吐き捨てた。
 それと同時、彼の腕に装着されていたクローが、何かを言いたげに輝きだした。

「まだ終わってない……ああ、まだ終わってないんだ」

 空を見上げる。
 太陽が光り、曇り空を押しのけるかのように青空が輝いている。

「今日中に片付ける仕事が、まだある」

 生きてるだろーな、あの馬鹿。

 そういうと、彼は再び羽ばたき始めた。







 ポリスマンの鉄拳が貞子ファッションの拳と激しくぶつかり合う。金属と金属が激しくぶつかるような嫌な音が周囲に響き渡り、近くにいるジョンの耳を刺激させた。

「うわ!?」

 だが、彼が驚いたのはそんな物ではない。
 
(け、警部のパンチをパンチで押さえ込んだ!?)

 長いことネルソンの相方を務めており、尚且つ彼の無茶振りに付き合わされた経験があるジョンには、ポリスマンことネルソンの拳の威力をよく知っている。はっきり言うと、彼の拳ほど『鉄拳』の二文字が似合う物はないと思う。
 しかし、そんな奴が今、ポリスマンと対峙しているのである。

(拳の威力は警部とほぼ同威力!?)

 いや、よく見れば貞子ファッションの方は、拳の甲がポリスマンの拳の威力で破れている。破けて中身が見えている状態な訳だが、どういうわけか普通の人間のものとは違って見える。
 寧ろ、何か小さな物がその破けた後から放出されているように見える。
 空気中に散布されているあの物体の正体は、

「粉!?」

 ポリスマンの拳によって破けた皮膚の中から粉が溢れ出している。最初は大した事のない大きさだったが、時間が経つにつれて溢れていく量が増えていっている。

「い、いかん………!」

 意識が回復したアルイーターが呟く。しかし、貞子ファッションに受けたダメージが大きいためか、表情に苦痛の色が伺える。

「奴は洗脳装置そのものだ……迂闊に攻撃して粉を漏らしていくと、人類は皆奴の操り人形だ」

「奴……?」

 アルイーターが言う『奴』と言うのが誰を指すのか分らないが、洗脳装置や操り人形という単語が出てきている以上、無視することは出来ない。

「むむ、ならば手段はオンリーワン!」

 そしてその会話はポリスマンにも届いていたらしく、彼は一旦貞子ファッションとの距離をとって構える。

「警部!? 何か手段があるのですか!?」

「無論。俺に不可能はない。要は速攻で奴を叩きのめせばいいのだろう?」

 断言する辺り凄いと思う。不安じゃないのかと言われたら頷くが、状況が状況なだけに此処はポリスマンに任せるしかなかった。
 ぶっちゃけ、何かすんごく不安になってきたけども。

「さーくーらー、さーくーらー」

 すると、何故か突然ネルソンが歌い始めた。しかも周囲に桜なんて無いにもかかわらず、だ。

「皆さん!」

 何の前触れも無くパワードにモードチェンジし、ハイパーシューズの加速力で一気に貞子ファッションの背後に回りこむ。

「本日は!」

「!?」

 貞子ファッションが反応して振り向こうとするが、間に合わない。
 その動きよりも早く、ポリスマンが背中に拳を叩き込み、更には上空に蹴り上げたからだ。

「『超警官ポリスマン』視聴、どうもありがとう!」

 そのまま自身も上空に跳躍。貞子ファッションに空中で追いつくと同時、凄まじいラッシュの雨を全身に浴びせていく。

「画面の前の良い子の皆! 来週も見てくれ!」

 次の瞬間、今度は地面に向けて蹴り落とす。
 その激しい連続攻撃を前に、貞子ファッションは成す術なく地面に叩きつけられ、

「ジャスティスキィィィィィィィィィィック!!」

 そのまま落下してきたポリスマンの蹴りを腹部にもろに受ける。
 その衝撃がコンクリートに伝わり、貞子ファッションを中心にして小規模なクレーターが出来上がる。

「ヘッドクラッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 しかし、このままでは終わらないポリスマン。
 一瞬にしてその身体を空中回転。今度は硬いヘルメットで覆われた頭での強烈な頭突きを頭部に食らわせる。

 だが、やはりまだ終わらないポリスマンの攻撃。
 頭突きを終えたと同時、バク転の要領で再び回転。その勢いを利用し、再び跳躍。

「スーパー、ナッコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 連続攻撃のダメージで動けなくなっている貞子ファッションに、自慢の鉄拳を思いっきり叩きつける!
 ダメージの反動で身体が飛び跳ねる貞子ファッション。それと同時、小規模だったクレーターが更なる威力の追加で更に広がっていった。

「勇気、爆発!」

 叫ぶと同時、ポリスマンが再び跳躍し、ジョンたちの前に戻ってきた。
 後ろの倒れたままの貞子ファッションがまた再び動き出さないでこのまま停止してくれるのを祈るばかりのジョンだったが、幸いな事にそんな気配は無かった。

 あくまで現時点では、の話だが。



 続く



エリック「遂に始まる俺VSウォルゲム。だが、圧倒的な能力差は縮まらず、しかも宇宙人の皆さん大襲来!? このタイミングが悪すぎる決戦の中、俺たちは最後にしてお約束の手段、合体技に全てを賭ける!」

ネルソン「次回! 『僕等のデンジャラス・ウォーズ!』」

フェイト「さあ馬鹿軍団! 最後の力振り絞ってグレイトに終わろうじゃないか!」





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