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紫色の月光

第二話「逆転、また逆転」

第二話「逆転、また逆転」



 時空の狭間とも言える空間の中で、ダーインスレイヴは返答を待っていた。
 だが、サテュロスもゲイザーも唖然としてしまって、開いた口がふさがらない状態だった。

「さぁ、どうする? 『神』とやらに相談するか?」

 にやにや、と笑いながらカイトが言う。
 しかし、答えはもう決まっていた。

「OK、交渉決裂だ。君の様な愚かな男を見たことが無い……」

 サテュロスが前髪をかき上げながら、冷酷な瞳を向ける。まるで蛇にでも睨まれたかのような感覚だ。

「ゲイザー、そいつは他の戦士が始末する! 君は帰還しろ!」

「貴様が俺に命令するのか、サテュロス!」

 この会話を聞いてもらえば分るとおり、この二人はガーディアンでは同じ階級にあり、部下でも無ければ上官でもない。

「だがガラディーンは両腕を使えない。隼の剣もヴァニシングミーティアも使えない君がどうすると?」

 ゲイザーは言葉に詰まる。
 何も言い返せないのだ。

「ハッチは開けておく。早い所帰還したまえ」

 それと同時、要塞のハッチがゆっくりと開く。
 そのハッチの奥から覗く事が出来る光景は、ずらりと並んだ特機の群れだ。まるで蟻の巣である。

(流石に全員を相手にしたらコッチが持たない……)

 ガラディーンとの戦闘だけでこの有様だ。この無数の特機軍団が相手だと、恐らくは持たせても10分くらいが限界だろう。

(だが……俺は『一泡吹かせてやる』と言った!)

 確かにゲイザーには一泡吹かせられただろう。しかし彼等の大ボスである『神』と名乗る奴に、何とかして一泡吹かせてやりたいというのもまた事実である。

「……このまま逝くよりだったら、いっちょ賭けに出るか!」

 今、此処で無数の相手に囲まれようとしている時、最も効果的な戦術は何か?

 その答えはカイトなりに考えたらこうだ。

(司令塔であるボスを倒す! ……これしかない!)

 しかし、その為にはあの要塞に侵入する必要性がある。
 そこで、彼はダーインスレイヴの広域範囲の破壊兵器(スパロボで言う所のMAP兵器)を使う決意をした。

 実はシデン達を逃がした最大の理由はこの兵器にあった。あまりにも威力が高すぎ、そして広域に渡って放つために、誤って彼等まで巻き込んでしまう可能性があったのだ。

「……ヘルゲートオープン」

 しかし、今はその巻き込みたくない二人はいない。自分一人だけだから遠慮なく放てるわけだ。

「我が闇を食らい………その地獄の咆哮を放て!」

 意味ありげにカイトが言うと同時、ダーインスレイヴの胸部が展開する。
 その中から姿を現したのは巨大な銃口だ。

「!?」

 ゲイザーやサテュロス達がそれに気付くが、もう遅い。
 数秒ほどのチャージ時間を経て、胸部の銃口から巨大な光が溢れ出すかのようにして集っていく。
 
「こ、これは――――!?」

「食らえ、こいつがダーインスレイヴの――――」

 其処まで言ったと同時、彼は引き金を引いた。

 地獄の光の咆哮を轟かせる引き金を、だ。

「インフェルノ・スマッシャー!」

 銃口から巨大な光が溢れ出す。その光は銃口から放たれた後、真っ直ぐ要塞のハッチに向かっていく。

「やばい、ハッチを閉めろ!」

 ゲイザーが叫ぶ。
 だが、しかし。

「無理だ、間に合わない!」

 そのやり取りが丁度終了した瞬間、地獄の光が要塞のハッチに直撃した。

 爆発。
 
 その爆発音が響くと同時、ダーインスレイヴは要塞目掛けて最大速度で飛んでいく。

(やはりインフェルノ・スマッシャーではハッチと幾つかのブロックを潰すのが精一杯か!)

 本当なら要塞をまるごと破壊したかったところだが、生憎あの要塞の外壁は見た目とは裏腹にかなり頑丈のようだ。
 それならば当初の予定通り中に侵入してから、

(『神』を倒すまで!)

 サテュロスの話によると、彼等のトップである『神』は凄まじい力を所持しているらしい。そしてその力によって、彼等は高度な文明をもつ世界からの侵略を食い止めた。

(しかし、一体どんな奴なんだ? そんな強大な力を持つ奴とは……)





『侵入者は破壊したCハッチから侵入。大至急、侵入者を迎撃せよ』

 要塞の各部にサテュロスに声が響く。
 それに応じるかのようにして通路を走る幾つもの影があった。要塞の中にいるガーディアンの兵たちだ。そしてその先頭には、あのゲイザーの姿があった。

「おのれカイトめ!」

 こんな屈辱生まれて初めてだった。
 ガラディーンの速度なら要塞に侵入していくダーインスレイヴを止める事は出来たはず。だが、武器が使えなくなったお陰でそれが出来なかった。
 敵が侵入するのを黙って見ている事しか出来なかったのである。

(他の連中には渡さん。奴は俺が倒す!)

 その屈辱を拭い去るにはカイトを倒すしかない。
 今、ゲイザー・ランブルの闘志に静かな火が灯った。




「……なんか寒気がするな」

 何処かで誰かが噂でもしているのだろうか。
 兎に角何故か鳥肌が立ったカイトは今、要塞内のとある一室にいた。
 侵入した直後に、彼は邪眼副作用の強烈な頭痛と吐き気に襲われて、それを抑える薬を飲むために何処かの部屋に入り込んだ訳である。

(今は大分落ち着いたけど……毎回あれじゃあ流石に後先キツイな)

 そもそも彼の左目の邪眼は全ての生命から無限といってもいいほど発せられる恨み、妬み、悲しみ、怒りと言ったマイナスの感情を取り入れてエネルギーに変換する代物だ。そんなマイナスエネルギーを取り入れると言う事はつまり、彼の身体もマイナスエネルギーの影響を受けていると言う事になる。
 その影響こそがこの頭痛と吐き気のダブルコンボなのだ。

「しっかし……入ってきた時は薬を飲むことだけを考えていたから気付かなかったが、何だこの部屋は」

 一応、軍事要塞の内部の一室なのだから恐らく兵の誰かの一室なのだろう。
 ただ、それにしてはエラくファンシーだった。

「クマのぬいぐるみだらけって……どんな兵隊なんだ?」

 もしや、と思うがゲイザーやサテュロスみたいな年頃の男の部屋ではないだろうか。もしもそうだとしたら何か想像しただけで吐き気がする。

「こんな兵隊でーす♪」

 すると、彼の背後から弾んだ口調で声が聞こえてきた。
 振り向くと、其処にはどう見ても10代前半くらいにしか見えない少女の姿があった。恐らく、小学校高学年か中学生と言った辺りだろう。少なくとも高校生ではない。見た目的に。

「……………ガーディアンってのは確か優秀な人材は大歓迎だったな。と、言う事はお前さんは此処の奴か」

「正解だよ侵入者さん。シンシア・オールディって言うんだ。こう見えてもゲイザーやサテュロスとタメ口で会話できる階級なんだよ?」

 と、言う事はそれほどまでに優れている、と言う事だ。
 あのゲイザーと同じ階級と言う事は彼女もそれだけ凄まじい存在なのだろう。

「悪いね、これも任務なんだ。大人しくお縄についてね?」

 可愛らしい笑顔でシンシアが言うが、カイトは笑えなかった。寧ろ、冷たい目で彼女を見ている。

「そういう割には物騒なモン持ってるじゃねぇか」

 シンシアは銃を握っていた。引き金を引けば何時でも発射できる状態である。

「保険だよ。因みに、小型のレールガンでさ。光の速さで鉄の塊を発射するんだって」

「成る程、どう足掻いても光の速さからは逃げられないってことか」

 やれやれ、とわざとらしくリアクションをつけてからカイトは両腕を上げる。ホールドアップと言う奴だ。

「ご理解いただけたようで満足です、侵入者さん」

「悪いが、こう見えても最後まで悪足掻きさせてもらうタイプでな」

 すると次の瞬間、カイトは靴を素早く蹴り上げた。
 それは完全に不意を突かれたシンシアの手に直撃し、思わず彼女はレールガンを手放してしまう。

「く!」

 素早くレールガンを拾おうと手を伸ばす。
 しかし、そんな彼女の顔面に小型の銃口が突き付けられた。

「チェックメイトだ」

 カイトが勝ち誇った顔で、靴を履きなおしながらレールガンをシンシアの顔面に向けている。

「……!」

 しかし、シンシアの顔面で火を吹くかと思われたレールガンは、彼女を撃とうとはしなかった。
 代わりに、カイトは真後ろにいる新たな敵へと放つ。

「おっと危ない!」

 しかしその敵は壁に隠れて弾丸を回避した。

「ちぃ!」

 舌打ちしてから、カイトはその壁に回り込む。
 しかしその瞬間、突然彼が持つレールガンが大きな音をたてて破裂した。

「!?」

 思わず右手を庇ってレールガンを手放す。しかし正解だ。持ったままだとその右手が使い物にならなくなっていただろう。

「いや、中々いい反射神経だ。あのゲイザー・ランブルを退けただけの事はある」

 男の声が聞こえた。
 それと同時、何故か場に音楽が流れ出す。しかもクラシックだ。

「これは……」

 突然の事に事態が把握できなかったが、これは間違いなく有名な『第九』である。しかも音量は最高レベルなので、大合唱がやけに耳に響く。

「ああ、済まない。自己紹介の前に音楽を流してしまうとは失敗だった。許してくれ」

 すると、第九の音量が下がった。丁度スーパーで流れる音楽のレベルなので、会話は聴き取れる。

「私の名はアシュロント・ネリアス。侵入者よ、私の手により美しく死するがいい」

 カイトの前にいる金髪男、アシュロントは口に薔薇をくわえていた。そしてその背景は何故か薔薇で覆い尽くされている。

「………」

 あまりに予想だにしない男が現れたため、カイトは唖然としていた。やっぱ一人はいるんだ、こういうタイプの男が。

「ふふふ……私の美しさを前に恐れいったか、侵入者よ」

 はっきり言って違う。と言うか、その自信の根拠はなんなのだろうか。

「だが、この美しき薔薇と美しき音楽と美しき私の顔に賭けて! 君を倒す!」

 すると、アシュロントは何と咥えていた薔薇をカイトに投げつけた。

「!?」

 カイトはそれを後方に跳躍する事で回避。
 すると次の瞬間、先ほどまで彼がいた場所に薔薇が突き刺さり、その薔薇が五秒もしない内に爆発を起こした。まるで手榴弾である。

「何!? 何処が美しいんだあの薔薇!」

 同感だ。しかしコレに対してアシュロントは、

「貴様、私の美しい薔薇に対してその侮辱の言葉。許さん!」

 どうやらお怒りのようである。
 しかし、爆発薔薇なんてのに美しい、と言うのもちょっと抵抗がある。敢えて言うなら散り様か。

「こんなところで――――死ねるか!」

 カイトは上着の中に両手を突っ込むと、その中から爪を取り出した。それは左右の五指全てが刃になったかのような漆黒の爪である。

「ダークネイルブレード、一気に決める!」

 カイトが一気に駆ける。そのスピードはまるで弾丸のようで、目で追うアシュロントには全くと言ってもいいほど見えなかった。

(速い!)

 この素早い動きに薔薇で対抗するのはほぼ不可能。そうとなれば、懐にしまってあるレーザーナイフしかない。

「来るがいい、美しく散れ!」

「生憎、薔薇は趣味じゃなくてな!」

 凄まじいスピードでカイトが迫る。まるで稲妻のようにジグザク進んでいくその動きを、アシュロントは中々捉えられない。

「遅い!」

 気がついたときには既に懐にもぐりこまれていた。

(いかん!)

 右の爪がアシュロントの顔面に迫る。しかし、アシュロントはこれをぎりぎりで回避。
 ダークネイルブレードの一撃は彼の右頬を掠っただけで終わった。

「!」

 すぐさま次の一撃を放とうとするカイトだが、アシュロントは空いている手で薔薇を持っていた。
 それを見た彼は大きく後退。そのまま通路の奥の闇の中へと消えていった。

「おのれ侵入者めぇ……!」

 仕留められなかった、と言う事もある。
 しかし、侵入者は自慢でもあり、誇りでもある自分の美しい顔に傷をつけてしまった。

「許さん……この屈辱は必ず倍で返してやる!」

 思わず手に持つ薔薇を力強く握り、トゲが皮膚に突き刺さるが、そんな痛みはどうでも良かった。



(……殺されてた)

 一方、シンシアは自室で放心状態になっていた。完全に油断しきっていた、と言うのもあるのだが、靴投げで一気に形勢逆転されてしまったのだ。信じられない以前に屈辱だった。
 もしあの時、アシュロントが来なかったら確実に殺されていただろう。

「……許せない。たかがネズミ如きがこの私を此処まで追い詰めるなんて!」

 その歪んだ瞳が見開かれた瞬間、彼女のエリートとしてのプライドが爆発した。





 通路では一方的な銃撃が行われていた。ゲイザー率いる兵達がカイト相手に発砲しているのである。

「出て来いカイト! 貴様に逃げ道なんか無いぞ!」

 確かに、と壁に隠れながらカイトは思った。
 引き返そうにもダーインスレイヴはダメージを受けているし、何より今は引きかえれそうにない。

「シンシアと言い、アシュロントと言い、ゲイザーと言い……大歓迎みたいだからな!」

 しかし、どうにかしてこの大歓迎を突破しないと話にならない。
 そもそも此処に来た理由は『神』を倒す事であって、彼等の様な一兵士ではない。一々相手をしていたらキリがないという物だ。

(どうする? 邪眼を使って身体強化を図り一気に突破するか?)

 しかし、向こうには同じく邪眼使いであるゲイザーがいる。そう簡単には通らせてくれないだろう。

(もしくは………別ルートから行くか)




 妙だな、とゲイザーは思った。先ほどから壁際に隠れているはずであろうカイトが何もしてこない。

(アレほどまでに攻撃的な男が、何もしてこないはずがない)

 下手をすればこの要塞ごと破壊しようとも考え兼ねない男だ。逆に何もしてこないと帰って不気味である。

(別ルートで逃げるにしても、向こうは行き止まりのはず)

 其処まで考えた瞬間、銃を持つ先頭の兵が叫んだ。

「よーし、追い詰めるぞ」

 その言葉を合図にして、素早い動きで兵士達が壁際に銃を向ける。しかし、其処には誰一人としていなかった。

「何!?」

「だ、誰もいません!」

 予想外の展開に全員が困惑する。
 しかし、ゲイザーは一人、ある物を見ていた。それは行き止まりの壁の前に置いてある、

(燃えるゴミ……!)

 
 


 要塞のてっぺん。西洋風の城の奥には、要塞内で一番広い個室がある。それがガーディアンのトップである『神』の部屋だ。
 そしてその部屋には今、一人の青年がいた。

「………」

 静かな瞳、何者をも飲み込んでしまう光の様な白い髪。そして白のローブを着ている。
 そんな彼は、部屋の出入り口に目をやった。

「やぁ、カイト君」

 其処には、ジージャンを羽織っており、長い黒髪を紐で縛って一纏めにしている青年の姿があった。

「サテュロスにも言ったはずだ。気安く『君』付けするなって、な」

「コレは失礼した。……しかし、わざわざゴミ箱の穴に飛び込んでゴミ処理の大広間へと大移動を果たしてから此処に真っ直ぐ向かうとは……少しは清潔感を持ちたまえ」

「喧しい。そっちの部下がもう少し穏やかならゴミ箱なんて手段は使わなかった」

 カイトの目つきは人間の物ではなかった。例えて言うなら獲物を見つけた『ハゲタカ』の目である。……だがゴミの異臭が臭うのはちょっと痛い。

「惜しいね。君は是非部下として働いて欲しいんだが……」

「冗談じゃ無い」

 大体断ってからそうも時間が経ってないというのにまた勧誘するか普通。

「どうも俺は他人の言う事をハイハイ聞くのが根っから嫌いなタイプでな。それに、並列世界の破壊っていうのが気に入らない」

「ならばどうするというのかね?」

 余裕な笑みを浮かべながら『神』が言う。
 だが、返答はやはり一つだ。

「死んでもらうぜ。あんたが俺の仲間たちを殺さないうちにな」

 仲間達、というのはシデンにエイジだけではない。
 彼が今まで行った事がある様々な世界。其処で出会った大切な仲間達。そして溢れんばかりの思い出。
 嫌な事もあったが、それをこんな訳の分らない連中に破壊されるのを、黙ってみていられなかったのだ。

「大体なんだこのガーディアンとか言う組織は。『やられる前にやれ』みたいな事言ってるけど、本当は自分達のエリートぶりを証明したいだけなんじゃないのか?」

「何?」

「此処に来る前にガーディアンの精鋭達何人かと戦った。その殆どは最初俺と会った時、油断していた。それは俺に『負けるはずがない』と言う絶対な自信があったからだ」

 しかし、と彼は続ける。

「そんな根拠は何処にある? 今まであの自称エリート達は平凡な連中を叩きのめす事で快感を得ていた。だが、どうだろう」

 彼はシンシアがレールガンを自分に構えているだけで有利になっていると思っていた事を思い出した。
 そしてアシュロントが余裕な笑みで音楽を鳴らしながら派手な登場をしてきた時もそうだったし、ゲイザーが最初に出てきた時もそんな感じのオーラが出ていた。

「いざこの最強の欠陥品が襲来したら倒せなかったぜ」

 『神』は無表情な顔でカイトを見ていた。正直、何を考えているのか分らない。

「この組織は確かに『やられる前にやれ』と言う方針を入れて活動しているが、実はもう一つあるのを知っているか?」

 不意に、そんな事を彼は言ってきた。

「簡単に言うなら『天罰』」

「!」

 其処で理解した。
 彼等の目的はただ破壊する事ではなく、『神』と言う絶対的な存在になりきって他の世界を圧倒する事。
 彼等が『神』として全ての並列世界に天罰を下すつもりなのだ。恐らく、人類同士の戦争を始めとして何らかの理由をつけて。

「少し違うな。なりきるのではなく『なっているんだよ』」

「!?」

 心を読まれた。
 不意に、冷たい感覚がカイトの身体を支配する。

「まさか、私がただ『神』を名乗っているだけだと思っているのかね?」

 サテュロスは言っていた。
 ガーディアンには自分達に想像も出来ないような凄まじい力を持つ『神』がいる、と。

「あの世で後悔するといい。この『ゼウス』であるゼロムスに逆らった事を!」

 ガーディアンのトップ、『神』の力を持つ男ゼロムスが、かっ、と目を見開くと同時、その場に凄まじい衝撃波が生み出された。

「――――!」

 気付いたら、宙を浮いていた。そして体全身に痛みを感じる。自分がゼロムスにぶっ飛ばされたのだと気付いたのは、床に叩きつけられてからのことだった。

「が―――!」

 まるで台風でも襲い掛かってきたかのようだった。
 
 しかし、それでも彼は立ち上がろうとする。勝てないにしろ、せめて一泡吹かせるくらいはしないと逃がしたあの二人に顔向け出来ないと思ったからだ。

 だがしかし。立ち上がった瞬間、再び床に叩きつけられる。まるで見えない力に押し潰されてしまうかのように。

「実力差を分ってもらえたかな? カイト君」

 目の前には嫌な笑みを浮かべているゼロムスがいる。

「き……や………す……く………君を……つけるな……!」

「神に向かってその態度。どうやらもう少しお仕置きした方が良いかもしれない」

 ゼロムスが右手を力強く握ると同時、カイトを押しつぶそうとする力が更に強まった。カイトを中心として、床が一気にへこむ。

「ぐあああああああああああああ!!!!」

 凄まじい重力によって、カイトは力無く倒れた。
 そしてその目の前にはやはりゼロムスが余裕な笑みを浮かべながら存在している。

「意識はあるのか知らない。だが、ここまで私を相手に無礼な行いをしてきた君にはいい事を教えてあげよう」

 すると、ゼロムスは懐から一枚のカードを取り出した。

「これは我々の世界に12枚ある『オリンポスカード』。あの日、我々の世界が他の世界から侵攻を受けた時、私達はこのカードを偶然見つけ、究極の力を手に入れた。そして今に至る」

 そこで、ゼロムスは気付いた。
 目の前でボロ雑巾状態になっているカイトが不気味に笑っているのを、だ。

「何が可笑しい」

 しかし、それでもカイトは笑うのを止めようとしない。

「クククッ……焦って損したぜ」

「どういう意味だ!」

「貴様らは所詮、そのカードがないと何にも出来ない『ただの人間』って事だろうが!」

 その瞬間、ゼロムスが握るカードから激しい光が発せられる。まるで怒っているかのように。

「私は神だ! このゼウスカードがある限り、私は神なのだ!」

「いいや、違うね! ただそのカードに縋って生きる事しか出来ない――――」

 ただの人間だ、と言う直前。
 カイトはカードから発せられた大きな光を受けた。
 その衝撃波の大きさは、城を半壊させるのには十分すぎる力を示しており、彼を戦闘不能な状態にまで追い詰めるには容易かった。





「……誰かいるか?」

 ゼロムスがそういった瞬間、入り口の前に一人の男が現れた。

「は、サテュロスは此処に」

「其処のボロ雑巾を始末しろ」

 ゼロムスがそう言うと、サテュロスはズタズタになっているカイトを担ぐ。意識は無いが、まだ心臓は動いているようだ。

(対して生命力だ)

 サテュロスはそう思いながらも、部屋から静かに消えていった。

「なんと言う男だ……!」

 ゼロムスは誰もいなくなったのを確認した後、自分のカードを見る。

「奴め……最後の一瞬、攻撃を仕掛けてくるとは!」

 幸い、その攻撃を受ける前に自分が放った光が彼をぶっ飛ばした訳だが、今回ほど冷や汗をかいた事はない。

 何せ、彼は自分ではなく、カードを狙ってきたのだから。




 続く



次回予告



カイト「後一歩、と言う所で俺は彼等に捕まり、牢屋に入れられた。どうやらゼロムスに逆らった連中が入れられる場所で、此処で死刑になるまで待たされるんだそうだ。だが、俺はこの牢屋で新しい仲間と出会う事になる。共に並列世界からやって来た俺達は、脱出を試みる事になるのだが、又してもあいつ等の邪魔が入るようだ。

 次回、スーパーロボット大戦Final・X第三話「ANOTHER TIMEDIVER」

 切り裂け! そして打ち砕け!」




第三話「ANOTHER TIMEDIVER」 前編 ~秘密兵器BONTA~へ  


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