紫色の月光

2006/11/12(日)02:20

『火焔の義兄弟』パート9(最終話)

アトラス。何故こんな真似をした? ヴィクターやエリゴルを連れて俺とのサシの場面を作っておきながら、なんであんな自殺行為をした? ………分らない、分らないんだよ…… 何? 最後の時、俺は確かに拳を突き出そうとしていた……だけど、気付いたら思っていたんだ。『ああ、義兄さんの攻撃に当たらないと』って。 なんでそんなこと? 多分、心のどこかで……分ってたんだ。『俺は間違ってる』って……俺は、貴方に炎を鎮火して欲しかったんだ。 ……… (だが、生きる為に組織に入り、何の為に並列世界を破壊するのかを考える為には理由が必要だった) (そこで考え付いたのが『ジーン抹殺』……自らの種を恐れ、最終的には多分、自分も死ぬつもりだったんだろう) (しかし、それでもあいつは『覚悟』出来なかった。兄弟を殺すと言う罪の意識に囚われてしまったんだろうな) (しかし、そんな時にカイトと出会った。結果、奴は『自分を止めて欲しい』と言う理由で、自らの死を願ったんだ。……本当ならとっくの昔に死んでいるはずの男の、借金返済と言う奴か) (そして皮肉な事に、その相手として選んだのはそんな自分達を助けたいと願い、心身共にボロボロになりながらも命を賭けた男だった………それが自分の義兄、神鷹・快斗) 義兄さん………俺、やっぱ狂ってるのかな? 何? ジーンナンバーは10から1まで精神になんらかの異常を持っている………俺は、俺は…… ただ、皆で普通に生きたかった……それが俺の願いだった。だけど、こんな事になるんて………やっぱ、俺狂ってるのかな?  ……よく聞けアトラス。 …… この世に完璧な奴なんていやしない。だからこそ、生きる奴はそれを補う為に何かを必要とする……そしてそれを無限に繰り返して行くんだ。最初から完璧な存在なんてあるはずがない。 安心しろ、アトラス。お前は普通だ。狂ってなんかないよ……少しずつ、歩いていけばいい ………あ、り……がとう。……ごめんなぁ、エリゴル、ヴィクター。こんな事につき合わせて。 いや、気にする事はない。 後は、お前の好きにすると良いさ……最初からそうする予定だったしな。 ………すまない。 なんだ、行くのかお前達? アトラスに免じて今日は消えておいてやる……だが勘違いするなよ。我々の戦いは、まだ終わらないのだ。 行っちゃいましたね…… 義兄さん……あなたに会えてよかった。 ……… あの時……あの冷たい牢屋に入れられた時、ずっとあなた達が来るのを待ってたのに……なんで俺は最後まで待てなかったんだろう。なんで、あの時組織に入るのを拒めなかったんだろう。ずっと、願っていたはずだったのに……! もういい。喋るな。 ……義兄さん。頼む……助けてあげて。まだ苦しんでいる奴がいるんだ。 何? 彼も……彼女も、きっと貴方を望むから……あ―――― おい、彼に彼女って誰の事だ!? おい! ……! ―――――― ………さよなら、アトラス。火焔の義弟。―――――さようなら。 たったの数分後だったんだ、アトラスが組織に入った後、シンヨウ君が彼がいる牢屋にたどり着いたのは。 たったの数分……それだけで運命はこうも大きく変わるんだね。 ……マスター。 ……今は、そっとしてあげておいてくれ。今、あいつに必要なのは時間だ。 ………く! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! SS第二話「火焔の義兄弟」  完

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る