地球人スピリット・ジャーナル2.0につづく
<1>からつづく
「ウェブ人間論」<2>
梅田望夫 平野啓一郎 2006/12 新潮社★★★★★
この本が出るというニュースを聞いてから、心待ちにしていた。先日から紀伊国屋にも店頭に並ぶ日を確認して、早速昨日購入してきた。寝る前に半分、早朝目が覚めてから半分、一気に読み終えた。
前作はちくま新書からでていたが、今回は新潮新書である。続編という位置づけだ。平野側からの強力なラブコールにより、成立した対談集。
1960年生まれ46歳の梅田、1975年生まれ31歳の平野。ふたりとも相当に若い。特に平野は私の子どもの世代にあたる。しかしながら、二人の対談について、私自身は、特にジェネレーション・ギャップというものを感じない。
統計などを見ると、ネット社会を形成しているのは、30歳をピークにしている年代だ。50歳代のわりには私はネットになじんでいるほうだが、この30前後の人々の感覚に触れることがいままでも多かったので、特に違和感というほどのものはない。いや、むしろこの二人、逆にすこし老成しすぎているのではないか、とさえ思った。保守性すら感じる。
私は梅田の前作を読んだ時に、一冊まるまんま一月かけて読み直し、ひとつひとつコメントしてみた。内容によっては、今回もそれをやろうかなぁ、と思っていたが、その必要はなさそうだ。理由の一つは、この本の内容が、私の理解範囲を大きく超えていた、ということではないこと。二つ目は、「人間論」というジャンルについては関心があるが、当ブログで展開しようという方向性が、この本とは別な形で出始めていることにある。
特筆べきことがひとつある。私は自分のSNSにこの本を読み始めるよ、と昨日予告しておいたら、梅田自身が私のSNSページに来ていたということが足あとから分かった。彼は前作についての評価についても1万くらいの評価を読んだというし、私が彼のページにトラックバックした時も受け付けてくれたので、たぶんこのページも読んでいるだろう。そういうネットの双方向性の凄さをあらためて感じた。
そういう思いもこめて、今後、しばらくの期間は、この本を叩き台として使うことが多くなるだろう。本全体を評価することは、私には不向きだから、まずは箇条書きにして、いくつかのこと書いておく。
■まず良かったこと、賛同したこと、ポジティブなこと
1)ブログについていろいろ書いてあった。私は梅田の前作を読んで自分のブログの展開を加速したのだが、今回この本を読んで、ますますブログを書こう、と思った、ということ。
2)Googleという会社には、どうやら「スターウォーズ」が好きな連中が集まっているらしい。私は、あまり映画をみないし、「スターウォーズ」はどちらかというと嫌いだ(いつもの食わずぎらいだが)。ところが、あるブログで盛んに「スターウォーズ」について書いてあったので、気にはなっていた。これから、ちょっと集中的に「スターウォーズ」の世界をみてみようかな。
3)PCの世界を開いてきたスティーブ・ジョブスやビル・ゲイツなど1955年生まれ(私も1954年生まれだが)を第一世代として、1975年生まれのmixiの社長や、「はてな」の主宰者や、平野などを第二世代といて扱っている。異論はない。ただ、次世代が成長し始めていることに共感を持ちはするが、まだまだ、旧世代も「目が白くなっているわけではない」。
■どちらかというと物足らなかったこと、否定したいこと、ネガティブなこと
1)人間論、というからには、もうすこしリアルな「理想とする人間像」のようなものを期待していた。その点は期待はずれだったが、誠意がこもっている本であり、細かく文句をつけるところは少ない。逆説的ではあるが、もうちょっと前作のような挑発的な言動があっても良かったのではないか。
2)対談というスタイルであるがゆえに分かりやすく、またそれゆえに、逆に突っ込みが足らない。前作を補足するような形でこの本が存在するのであろうが、どうしても私はWeb2.0どころかWeb3.0的なものを期待してしまう。それをこの本に期待してはいけない。
3)平野ついては今回初めてその存在を知った。昨日図書館にいって検索したら、沢山の著書が蔵書されていた。全部貸し出してあったが・・・。まだ、平野の本を読んでいない。彼の代表作や近作を読んでみたいと思うが、31歳の現代青年というよりは、むしろ保守的なイメージがある。ロックやアート、現代思想などにおいても、もっと「ぶっとんでいる」アバンギャルドな連中はいるのではないだろうか。
■とりあえず心にとめておくこと、ニュートラル、備忘録。
1)中国においてのGoogleの対応。中国政府の注文を受け入れていること。Googleの「腰砕け」状態について、今後すこし調査してみたい。
2)翻訳システムの開発状態。やはり、これが完成するにはまだまだ時間がかかる。これからも英語力を高めていくことは絶対に必要だ。
3)Youtube Mixi はてな、などのユーザーの拡大について、この本でも大きく取り上げられている。しかし、あまりに過大評価に流れることなく、原寸大にとらえて、次にでてくる新しい潮流にも、キチンと目配せしておかなくてはならない。
4)オープンソフトについての取り上げ方は、ちょっと中途半端。
新書というスタイルは、読みやすいが、中身が不足するということもある。あまりないものねだりしてはならないだろう。とにかく、今年を象徴するような一冊であった。
<3>につづく