地球人スピリット・ジャーナル2.0につづく
「よくわかる!ソーシャル・ネットワーキング」 早分かり! 図解&実例
山崎秀夫+山田政弘 2004/12 ソフトバンク・パブリッシング
すでに2年前にでた本だが、2年前にでたとは思えないほど、新鮮に読んだ。私はSNSの存在価値を知ってSNSデビューしたのではなかった。いきなりリクルートされて、必要に迫られて参加したのだが、現在では退会しようにも、趣味上の、あるいは業務上のインフラとしてSNSが必要品になってしまっている。とにかくこのシステムが健全に発展していくことを望む。
この本、並み居るSNS本やmixi本から一歩抜きん出ているのは、著者が「野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部上席研究員」というところに理由があるかもしれない。いわゆるハウツー本ではなく、SNSの意義や、歴史と背景、事例、その未来についてまで言及している。
たった5人の知人の輪を介して世界中の誰とでも繋がることができるいうカリンティの洞察は、今思えば大変な洞察でした。これは今日、「六次の隔たり」として社会学上の有名な理論となり、この21世紀においてインターネット上でソーシャル・ネットワーキングの運動を引き起こした概念が始めて語られた歴史的な瞬間でした。p42
この理論は面白いが、さて本当に一人の地球人として、地球人すべてと繋がろうという欲望は湧いてくるものだろうか。たとえば、商売や政治活動などで必要以上に他者とのつながりを強調する人以外は、通常の生活なら、せいぜい数十人から数百人の人間関係で十分だろう。あるいはそれ以上は付き合いきれなくなる筈だ。ただ可能性としては、地球上の特定の誰かと、間に5~6人の知人を挟むと繋がっているという理論は、大きな希望を与えてくれる。
3.ネットで働く「基礎心理学」-その1、「そもそもなぜソーシャル・ワーキングに参加するのか」p216あたりも極めて興味深い。
そして地域のコミュニティや職縁社会では人間関係の希薄化が急速に進み始めています。フリーランスとして大量に出現した若者たち、派遣社員として働く若者達、会社を転々とする若者たち、必ずしも先の見えない会社で働く不安な若者達、自立を考え始めている若者達、母親社員としてチャレンジしている若者達は、大なり小なり心に傷を負い、インターネット上での穏やかなコミュニティに精神的な癒しを求め始めました。それがブログやソーシャル・ネットワーキングの隆盛の背景があります。p216
若者ならざる私には、若者そのものの気持ちにはなれないが、このように若者像をこのように描くことは趣味ではない。でも、なるほど、そのような見方もあるかと思う。
4、ネットで働く「基礎心理学」-その2、「お互いが現代の『聴聞僧』の役割」というところも、なかなか面白い。
中世ヨーロッパなどでは、罪を犯した人が自発的に教会を訪れて、懺悔を行い、神父様から精神的な救いをもらいました。この現代の「聴聞僧」の役割がソーシャル・ネットワーキング上に引き継がれています。ソーシャル・ネットワーキング上のブログによる「自己開示」は、時には作者の懺悔になることがあります。その場合、多くの読者が自然に「聴聞僧」の役割を果たしているのはとてもユニークです。p228
カウンセラーの端くれとして、聞き捨てならざる洞察である。たしかに「読者」が「聴聞僧」の役割を果たす可能性があるのは分かるが、実際の「聴聞僧」は、共感的受容や守秘義務など、多くの訓練が必要とされる。「自己開示」する側にとっても、その辺は十分知っていて、完全に「自己開示」しきれてはいないはずだ。まぁ、せいぜい「井戸端会議」程度ではないかなぁ、と私は思っている。
これらの「基礎心理学」については、すべてに当てはめられるとちょっと違和感も感じるが、2年前の、まだSNSが登場したばかりで参加者もいまほど多くない時代に、これだけの洞察を行なっているのだから、慧眼というべきだろう。
7、ソーシャル・ネットワーキングの未来、「1、複数の自己、複数の現実への対応」p284などは、まさに現在の私が痛感している問題だ。
「複数の知り合いの輪」を作って欲しいという要望がソーシャル・ネットワーキングの参加者から結構、各サービス会社に要望として上がっていると言われています。
たしかに「学校時代のお友達の輪」、「インターネットのブログで知り合ったお友達の輪」、「会社関係の知り合いの輪」を別々に管理し、お正月になると「会社関係の知り合いの輪」には紙の年賀状を自動作成し、「インターネットのブログで知り合ったお友達の輪」には電子年賀状を配布するというのは、面白いかもしれません。p286
年賀状作成のどたばた劇は実に、数日前の私の姿であるが、年賀状に限らず、日々の日記やブログに関しても、複数のキャラを使い分ける必要を感じる人は多いだろう。現実的に私は、趣味のネットワークと、業界のネットワークと、仮面的無名性のネットワークの三つのSNSキャラを同時に使い分けている。結論として必要に迫られてそうなってしまったのだが、もし、これが一つのサービスでできるようになったら、更新もチェックも非常に楽になると思う。
「21世紀には電脳の縁(えにし)による社交が登場する? その1」あたりも相当に面白い。面白いが、実際にそうなるかどうかは、今後の具体的なそれぞれのSNSがどのような発達をとげていくかにかかっている。この本は、そういった意味では、とても先進的であり、有効なビジョンをいくつも出してくれているが、すこしづつ現実の中で検証されてきた現在では、いくつかの訂正されるべき点もでてきているようだ。そのような点に留意して、さらに新しいSNSの進化の方向がみえてくるような予感がする。