「スピリットの森から」
内なる変容とエコロジー
おおえまさのり 1992/7 柏樹社
この本をあらためて開いてみると、まずこの本が脱稿されたのが1992年の4月で、SPSが終了して数ヶ月後にでていたことがわかる。そして、この本の中にSPS関連のレポートが40ページ以上に渡って書いてあることに気づいた。もし心ある当時のスタッフ達とデスカッションするとしたら、この本をテキストを元に進めるのもいいかな、と思ったが、もうすでにこの本は絶版になっている。全文を転記することは不可能なので、気になるところにちょっとづつ触れることになるのだろうか。
全文で210ページ余り、第一部「スピリットの森から」、二部「神のパズル」に分かれており、第一部は、第一章「売ってはいけないもの」、二章「森のスピリット」、三章「場の精神」、四章「わたしの自然」となっている。そして、この第三章がほとんどSPSのレポートになっており、1)自発的簡素p94、2)スピリット・オブ・プレイスp111、、3)ダダイスト・イトイカンジp121、4)スピリットの潮流p130、となっている。
90年前後の著者を囲むさまざまな事象がエッセイ風に綴られているので、著者に関心あれば、実に面白い一冊といえる。ここではSPSにフォーカスしていくので、割愛する。
スピリット・オブ・プレイス(場の精神)という国際シンポジウムが仙台であった。
スピリット・オブ・プレイス仙台は、アメリカの環境心理学者ジェームズ・スワンさんによって1988年に提唱された5年連続シンポジウム「スピリット・オブ・プレイス」の、4回目の一部のシンポジウムを仙台で催すことになったものだった。仙台出身でアメリカ在住の建築家須田文夫さんが話を持ち帰り、90年にぼくたちが長野で開いた「アース・ギャザリング」に参加して「来年仙台でやろう」と言っていた「仙台ぐりんぴーす・かたつむり社」の加藤哲夫さんなど、仙台草の根市民ネットワークの人たちが中心となって運営された。
スピリット・オブ・プレイス・は「かつて自然と共生する知恵を有していた文明様式や、自然と調和して生きる先住民の文化に学びつつ、現代科学や思想の最前線と照らし合わせて現実的な自然調和型の文明体系を模索する」ものとしてはじめられたという。
それは「ネイティブ・スピリット」、「自発的簡素」、「ハーモニック・デザイン」、「癒し」、「フラクタル・コスモロジー」、「ネイチャリング」、「エコビジネス」、「有機的社会システム」、「自然(じねん)」といった分科会に加えて、それぞれのゲストによるワークショップ、討論会、舞踏パフォーマンス、都市建築デザインコンペ作品展示、ポスターセッション、そしてコンサート「喜納昌吉&チャンプルーズ」、ミュージカル「TAROH」といった盛り沢山の、クロスオーバーの企画だった。
ぼくが担当したのは「自発的簡素」の分科会だった。 p93
とても綺麗に求めていただいている。内部の渦中にいて雑事に振り回された私としては、なかなかこうはまとめることはできないのだが、ゲストとして参加した著者が、逆にここまでまとめてくれていたことに感謝した。
「かつて自然と共生する知恵を有していた文明様式や、自然と調和して生きる先住民の文化に学びつつ、現代科学や思想の最前線と照らし合わせて現実的な自然調和型の文明体系を模索する」という視座は、今でも正しく、もっとも必要とされているのではないか。ややここから「スピリット」という言葉へたどり着くまで時間がかかるかもしれないし、またインターネットやウェブ2.0と言われるテクノロジーに支えられた集合知の在り方とは、多少の趣を異にするかもしれないが、めざしていたものは変わるものではない。
分科会の名前や内容はあくまで、SPS独自で考えられたものだ。私が友人達とともに担当したのは分科会「ネイティブ・スピリット」と「コンサート・喜納昌吉&チャンプルーズ「アース・スピリット」だった。
つづく