2009/02/11(水)10:06
熱きアラスカ魂 最後のフロンティア・インディアンは語る
「熱きアラスカ魂」 最後のフロンティア・インディアンは語る
シドニー・ハンチントン著 /ジム・リアデン編 和田穹男・訳 2000/05 めるくまーる 単行本 329p
★★★☆☆
「リトル・トリー」や「ジェロニモ」を翻訳した和田穹男が、この本も訳している。表紙は、アラスカの大自然を撮り続けた星野道夫の写真が飾っている。「ベーリンジアの記憶」や「日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか」の星川淳が巻末に6ページほどの文を寄せている。
この本において、いつの間にか自分の中にできあがっていた、インディアンやネイティブ・アメリカンという安易な形でのプロトタイプ化した情景が壊される。南米の都市文明をつくった古代人や、北米大陸の大地にいきる人々と、また違ったアラスカの「インディアン」がここにいる。
ノンフィクションであり、1900年代のことでもあるので、現代史にも深く関わる描写がでてくる。アラスカの大自然についての表現も、力強いタッチで語られ、引き込まれる。実際にその人生を生きた本人の口から語られた記録として貴重なものである違いない。
しかし、ふと思う。このようないわゆるネイティブものなら、あえて、北米大陸やアラスカに求めなくても、もっと身近にあるのではないだろうか。ちょっと前までは、この弧状列島のあちこちの田舎や山村や島々に、これらの深い自然とのかかわりを持った古老達がいたに違いないのだ。
古老達とまでいわないまでも、小説としてなら、卑近な例でいえば熊谷達也の世界などは、かなり、この「熱きアラスカ魂」に通じるところがあるような感じがする。北山耕平の近著「ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ 」はまだ読んでいないけれど、やはり、「アメリカン」にこだわらず、ネイティブ・ジャパニーズとしての自分に目覚めながら、本当は、さらに「地球に生きる人」という原点に立ち返ることが大切なのだと思う。
そういった意味において、この本は、生きることの力強さを感じさせてくれる一冊だ。