地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2009年4月1日

地球人スピリット
・ジャーナル2.0


へ引越しました。

2008.08.22
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カテゴリ:アンソロポロジー


「裸形のチベット」 <1> チベットの宗教・政治・外交の歴史
正木晃 2008/07 サンガ 新書 279p
Vol.2 No.0246 ★★★★☆

 ある意味で、本書は、チベット・ファンの期待を裏切ってしまう可能性がある。しかし、事実を知らずに、ただ「かわいそう!」と単純な動機から同情するだけでは、チベットを救うことはできない。私たちに何ができるのか? それを考えるためには、なににもまして、事実を知ることだ。そこからしか、真の意味では、なにごとも始まらない。p9

 「チベット」とはなにか、チベット「国」とはなにか、チベット「人」とはなにか、チベット「仏教」とはなにか。漠然とわかっているつもりになっているようなことでも、ひとつひとつのことについて、いかに曖昧にしかイメージを持っていないかが痛感される。

 しかし、それはもっともなことだろうと思う。それはチベットに限らない。アジアのほかの国や地域や民族についてであれ、あるいは中東やアフリカ、あるいはいずこの先住民たちについてであれ、ものごとを知ろうとしたら、それはただごとではない。地理も歴史も言葉も文化も、深くゆっくりと理解しようとしなければ、決してわかるものではない。

 世にチベット本は数あまたあれど、日本語文献として、当ブログがめくってきたチベット関連本の中では、正木晃が関わる本は、ベストと言っていいのではないだろうか。この本もまた今年のFREE TIBETの動きを丁寧に反映しながらも、決して緊急避難的なジャーナリステッィクな好奇心を満たすためにだけ書かれているのではなく、真実のために事実を知ろうという姿勢を推奨する一冊だ。

 もし人間に少しでも気づきがあるならば、チベットは解放されるべきだ。それはこの2000年の時を、何もすることなく、瞑想のなかにより深く入ってゆくことに捧げてきた唯一の国なのだ。そしてそれは全世界が必要としている何かを教えることができる。 「Om Mani Padme Hum」Osho#1

 本書に「チベットの宗教・政治・外交の歴史」というサブ・タイトルがついている限り、政治や外交の歴史も獏とはしながらも、決して善的側面ばかりではなかったことを踏まえておかなくてはいけない。でもそれでもなおチベットが人類史において切り開いた地平は稀有なものがある。とくに「宗教」において。

 チベット密教の中核をなす後期密教の理論では、仏教の最高真理たる「空」は、至上至高の性的快楽というかたちで、心身に把握される。性的快楽を、特殊な技法を駆使して、極限まで高めていけば、そのかなたに「空」が体得できるはずなのだ。ただし、性的快楽は、どこまでいっても性的快楽にすぎず、そのまま「空」を体得できるわけではない。性的快楽は、「空」へと次元を超える跳躍をするための、いわばジャンプ台なのだ。しかし、このあたりを曲解ないし誤解すれば、性的快楽が即、真理の把握につながるという幻想を生む。事実、そのような傾向が多々みられたことは否めない。あるいは、チベット仏教が、中国やモンゴルの権力者たちに、自分たちの存在意義を売り込むために、あえてそういう手段に出た可能性もある。p226

 現在のチベットのことを考えると、単にこの60年ほどの中国共産党とのつきあいだけではなく、清やモンゴルとの長いつきあいを思い出さなくてはならない。モンゴルについては、同時代人として優れた研究をしている
杉山正明を思い出す。 

 21世紀という「とき」の仕切りに、はたしてどれほどの意味あいがあるものなのか、わたくし個人にはよくわからない。しかし、人類社会もしくは地球社会という空前のあり方のなかで、生きとし生けるものこぞって、ともども生きていかなければならない時代となった。たしかに、「いま」は、これまでの歴史とは画然と異なった「とき」に踏み込んでいる。かつてあった文明などといった枠をこえて、人類の歩みの全体を虚心に見つめ直し、人間という立場から共有できる「なにか」をさぐることは、海図なき航海に乗り出してしまったわたくしたちにとって、とても大切なことだろう。それは、一見、迂遠な道におもえるが、実はもっともさだかで有効なことではないか。「疾駆する草原の征服者」 杉山正明 p374

 杉山については、わずかしか読んでいないが、貴重な存在だと思うので、リストを作成しておく。

「遊牧民から見た世界史」 1997/10  日本経済新聞出版社

「逆説のユーラシア史」 2002/09 日本経済新聞出版社

「疾駆する草原の征服者」 2005/10 講談社

「モンゴル帝国と長いその後」 2008/02 講談社

 本書巻末には「さらに深くチベットの歴史を知るための読書案内」がついており、10ページに渡って日本語文献がリストアップされている。「モンゴルを知るために」ではやはり杉山正明が紹介されている。当ブログでも数百のチベット関連本をめくってはきたが、図書館に収められている分だけでもとてもとても読み切れるものではない。しかし、このように正木晃の手によってリストアップされていると、全体像が見えてくる。当ブログとしても、今後は、このリストからすこしづつ補完すべき書をピックアップしていくことにする。

 白洲信哉の「『日本の神』とは何か」という投げかけに対して、当ブログが「かつてあった『日本の神』は、未来の『地球人スピリット』へ成長していく過程にこそある」と毒づくとするなら、「チベット密教」についても、同じ態度をしめさなくてはならない。One Earth One Humanity  一つの地球上にあって、その地球に生きる地球人の意識には深く通ずる共通点があるべきだ。もし地球人としてひとつの人間性が求められるとすれば、広く開かれた隣人への愛と、深く静かな瞑想への道、その体現こそが究極の姿なはずだ。

 ヒステリックなパワー・オブ・バランスの中で、いたづらに自らの生命力を擦り減らしてはならない。つたない言葉でしかないが、「チベット密教」にとってもまた、未来に生きる「地球人スピリット」への中へ飛翔し溶け込んでいくことこそ、現在抱え込んでいるジレンマと問題の解決策であるように見える。

 いや、チベット密教こそ、新たなる21世紀以降の「地球人スピリット」をリードしていく先見性を持ち得ている。そのような視点があればこそ、チベット人ならぬわが身でありながら、なぜにこれほどまでチベットに魅力を感じ続けるかの意味が解けてくる。

<2>につづく







Last updated  2008.08.31 11:12:04
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