
「driver」 2009 march 3-5
八重洲出版
Vol.2 No.526★★★★☆
新型インサイト
衝撃の低価格で新登場!

数日前についにホンダのハイブリット車の新型インサイトが発売された。高級化を志向するトヨタのハイブリッド車のプリウスのモデルチェンジを5月に控えて、ホンダはついに189万円という価格を達成。世界恐慌の足音が高鳴る中、各評論家は、これは売れると絶賛。我が家でも中古車の車検が終わったばかりなので、あと二年はないが、もし台替えするなら、まずは候補車の筆頭にあがるだろうと、大注目。
つまりは大衆車フィットの足まわりに、初代インサイトやシビック・ハイブリッドに載せていたエンジンを据え、現行プリウス似のボディをややコンパクト化して載せたモデルというわけだ。市場にでて一般ユーザーにどのように評価されるのか、それを見極めないことにはなんとも言えないが、出るべくして出た車と言える。
発表されたのは3年前、当時、車業界はまだまだ好況を博していた。特にアメリカ市場ではホンダ車もまだ元気がよかった。開発から発売までこれだけの時間がかかったわけだが、絶好調のライバル・プリウスを睨んで、低価格化を図ったホンダの意図は、ここに来て、ズバリ的を射たものになる可能性も出てきた。
トヨタは、プレミアム・ブランド志向のレクサス・チャンネルを満を持してスタートさせたが、車はラインナップしていくのだが、いまひとつ意気が上がらない。もちろんレクサス車は魅力的ではあるが、購入意欲となると、ユーザーの評価は必ずしも芳しくない。
車は趣味なのか、見栄なのか、実用なのか、まずはこの入口が問題となる。実用として考えた場合、ちょっといびつな存在ではあるが、軽自動車はまずは選択肢の第一歩となる。経済状況が逼迫しているなか、軽自動車は売上台数を伸ばし続けてきた。
しかし、軽自動車にも問題点がないわけではない。税金や保険が安いという最大限のメリットをよそ目に、こちらも高級化志向。次第に車自体が高価格化してきてしまっている。装備も重層化し、コンパクト・カーとなんら変わらない装備をラインナップ。これだったら、軽のほうがいいじゃん、と思わせるが、もともとのアンバランスなボディサイズに、小さなエンジンで走るので、燃料効率が悪い。ましてや事故に巻き込まれたりすれば、いつも悲惨な目にあいそうなのは、軽自動車だ。
三菱などは、ここにきて50万円台の軽ミニカを大宣伝しているが、この辺こそが軽自動車が生きるべきエリアであって、こうであってこそ存在意義があろうというものだ。近所への買い物や駅までの送り迎えには超便利なアイテムと言える。しかしそれは二台目、三台目としてなら、という限定がつく。一家に一台、といった場合、低価格な軽一台では、なんとも心もとない。もちろん、ステータスも問題となる。
だから、一家に一台のプリウス、という選択肢はあったのだが、いかんせんプリウスのボディは、日本で動かすには少しだけ大きい。一回り小さくして低価格化してほしいというユーザーからの要望は強いものがある。ところがトヨタは、ハイブリッドはまだまだ儲からないと見ていた。だから、ハイブリッドはイメージ戦略に使い、クラウンやエスティマといった高価格車に付加価値としてプラスするという戦略を取り続けてきた。
車を趣味や見栄として乗るなら、それも悪くない。そのような乗り方もぜひともしてみたいものだ。しかし、現実には、世界はもう車は飽和状態にあるのではないか。これからまだまだ台数が見込める中国やインドなどのアジア市場はともかくとして、アメリカや欧米や日本では、特に若者層は、自動車に過大な期待を持つ時代は終わっている。アメリカのGMを抜いて、台数で世界のトップに躍り出たのもほんの一瞬、万全のように見えていた巨大トヨタの戦略は、ここにきて、一気に危ういものになりつつある。
車を道具として割り切った見方で考えることができるとすれば、今度のインサイトは、とても魅力的だ。ボディサイズ、走行性能、安全性能、ステイタス、経済性、話題性など、全方向において、まずは合格ラインぎりぎり越えを果たしているのではないだろうか。あとは半年、一年かけてのユーザー・テストの結果がどうでるか、だろう。
当ブログでは、「スピリット・オブ・エクスタシー」カテゴリを中心として、車の話題もおっかけてきたが、その中からハイブリッド関連記事を拾ってきてリストを作っておいた。
「自動車革命 クルマもついに変わる!?」
「燃費優先クルマ選び特集」
「ハリウッドスターはなぜプリウスに乗るのか」
「トヨタはどうやってレクサスを創ったのか」
「レクサス トヨタの挑戦」
「『レクサス』完璧主義者たちがつくったプレミアムブランド」
「『レクサス』が一番になった理由(わけ)」
「レクサスのジレンマ」
「トヨタ・レクサス惨敗」
「レクサスとオリーブの木(上)」
「レクサスとオリーブの木(下)」
「間違いだらけのクルマ選び 最終版」