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2009年4月1日

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2009.03.10
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カテゴリ:バック・ヤード

カウントアウト!! <第1期>最後のこの1冊


「村上春樹にご用心」 <1>
内田樹 2007/09 アルテスパブリッシング 単行本 253p
Vol.2 No.542 ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★☆

 村上春樹WHO? 当ブログがスタートして、「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」 を読むあたりまでは、身近すぎて、ほとんど関心がなかった。村瀬春樹と混同して、その違いさえ興味もなかった。麻原集団事件関連本おっかけを始めた時点で、彼にはフィクションだけではなく「アンダーグラウンド」のようなノンフィクションもあるのだと気がついた。「約束された場所で」では、さらに一歩足を進めていたことも知った。

 そのあと、当ブログのビジターからコメントをいただいたりしたので「神の子どもたちはみな踊る」も読んだりしたりし、最近では、エルサレム賞受賞のときの彼の演説に感動したりした。だけど、自称「プロの嘘つき」である小説家・村上春樹は同時代を生きているという感覚はあるが、当ブログとしての主テーマにはなりそうになかった。

 当ブログの21番目のカテゴリを締める最後の一冊、そして、当ブログの第一期を締める1566冊目の本としてこの本が選ばれたのは、特段の言われがあったわけではない。えいや!、とばかり、枕もとに積み上げられた既読・未読本の山の中から抜き取られた一冊にすぎない。

 これは村上春樹・本ではない。内田樹・本だ。「寝ながら学べる構造主義」「『街的』ということ お好み焼き屋は街の学校だ」のあとがきで内田樹という人の文章を読んだ程度だ。彼のブログ「内田樹の研究室」は累計1400万ヒットを越す人気ブログである、とのことだから、かなり有名な人なのだろう。当ブログの70倍のヒット数だが、それって多いのか少ないのか。

 これはある新聞社から2006年の10月、ノーベル賞受賞発表の前日に依頼された「村上春樹ノーベル文学賞受賞についてのコメント」である。「発表されてからじゃダメなんですか?」と訊いたら、紙面のつごうで予定原稿がどうしても欲しいということで、「ヴァーチャル原稿」を書いたのである。結果的には使われなかったが、できたらそのうちにこのままのかたちでほんとうに新聞に掲載される日が来ることを私は望んでいる。p11

 私の記憶によれば、07年も08年も、話題にはなったが、受賞はなかった。ノーベル文学賞に最も近い日本人作家と言われる村上春樹だが、なにを持ってして、それだけ世界にファンが多いのであろう。

 私見によれば、村上文学が世界各国に読者を獲得しているのは、それが国境を超えて、すべての人間の心の琴線に触れる「根源的な物語」を語っているからである。他に理由はあるまい。
 村上文学はひとつの「宇宙論」だと私は思っている。「猫の手を万力で潰すような邪悪なもの」「『1973年のピンボール』)に愛する人たちが損なわれないように、「境界線」に立ちつくしている「センチネル(歩哨)の誰にも評価されない、ささやかな努力。それを描くのが村上文学の重要なモチーフの一つである。
p10

 ここあたりが、例のエルサレム賞受賞演説で語られた「壁と卵」のたとえの源泉となるところだろう。

 国内外の批評家の中に、村上春樹の文学がどうしてあれほどの文壇的孤立にもかかわらず世界的ポピュラリティを獲得しえたのか、その理由について私に納得できる説明をしてくれた人はまだ一人もいない。p110

 その理由も計り知れないが、世界的ポピュラリティを獲得している事実さえ把握していない当ブログにおいては、この「世界的ポピュラリティ」という概念にはちょっと惹かれるものがある。

 私たちにわかったのは、村上春樹がたとえば、「全共闘運動への決別」や「80年代のシティライフの空虚さ」のようなローカルなモチーフを専門にするローカルな作家ではなかったということである。間違いなく、村上春樹はデビュー当時の批評家たちの想像の射程を超えた「世界文学」をその処女作のときからめざしていた。p181

 同じころから知的アイドルとなった中沢新一もなかなか魅力的ではあるのだが、近未来的に「世界的ポピュラリティ」になるとは思えない。難解な文体とともに、「芸術人類学」などと言って、自らの甲殻に引きこもってしまったことも影響しているだろう。島田裕巳の批判にも答える様子はない。

 批判に対してさらに批判するというのは一種の「地獄」である、と村上春樹は書いていた。「ものを書く」というのは、「バーを経営する」というのとそんなに変わらない、というのが村上春樹の考え方である。店に来た客のうち、「あ、この店いいな、また来よう」と思うのは10人に1人くらいである。
 その10人に1人を照準にして店をやるのが、経営の要諦である。
 その10人のうち8人、9人が「ごひいき」になるような店というのはありえないし、そのような店を作ろうとしても無理がある。
p192

 国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を経営していた村上らしい表現ではあるが、また「80対20の法則」を彷彿させる一節でもある。

 村上作品ではつねに「ありえないこと」が起きる。村上文学にび漫するこの「ありえなさ」は小説がその誕生の瞬間から身に帯びた本態的性格なのだろうと私は思っている。 p249

 「世界的ポピュラリティ」と「10人に1人くらい」と「ありえないこと」は、一見、相矛盾しているようだが、割とこの線は一本につながっているようにも感じられる。内政に行き詰って分裂の危機を抱えた政治家が、外交に打ってでて内政をひとつにまとめようとするマキャベリズムに似て、小説家が世界的ポピュラリテイを勝ち得るには、「10人に1人くらい」リピーターになってくれたらいいや、という割り切りで「ありえないこと」を連発する、そういう手があったのかもしれない。

 村上春樹は自らの作品の批評はまったく読まないということだから、そこまでいやらしく計算しているとは思えないが、しかし、結果論としてはそういうことになっている可能性はある。

 当ブログの<第一期>最後の一冊は、この「村上春樹にご用心」に決定した。しかし、それは偶然性に大きく支配されている。この本が最後にならなければならない理由はほとんどない。あえていうなら、枕もとに積み上げられた数百冊の中から、えいや!と抜き取られただけである。それはタロットカードの一枚占いに似ている。

 タロットカードは一枚では存在しえない。56枚なり、78枚なり、108枚なりひと組のセットの中の一枚として存在している。そしてその中から一枚だけ選びとられる「偶然性」に、「必然性」を見いだすという「ありえないこと」をやる。だからこそタロットカードもまた「ポピュラリティ」を獲得しえるのだろう。

 この本は、少なくとも当ブログにおいては、一冊としての孤立した価値はない。全1566冊の中の一冊、あるいはまだ未読分を含めた数千冊、数万冊に連動するセットの中の一冊として読まれる必要がある。

 そして、やっぱり、ここに来て最後の最後にこの本がでてきたことには、なんらかの意味があるのであろう。それほど桁外れの「ありえないこと」ではないが、やはり当ブログとしては、<ちょっとした>「ありえないこと」ではある。この「事件」は、<第2期>の、<ちょっとした>「世界的ポピュラリティ」への誘発剤になってくれるかもしれない、という期待を込めて、これで当ブログ<第1期>を締めることにする。

<2>につづく

Om Mani Padme Hum

 







Last updated  2010.01.13 20:44:22
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