千の風になって 新井満
「千の風になって」 新井満 2003/11 講談社 単行本 70p ★★★★★ 腰は曲がったものの、普段は薬も飲んでいない85歳の母が、腹部に激痛を感じて緊急病院に運ばれたのがもう10日前。どうやら近々手術が必要だが、幸い他の臓器は健康で、今は体力増強に励んでいる。お見舞いにきてくれた叔母もすでに70歳を超えているが、彼女のおかげでだいぶ母も元気になった。 この二人で話していて、もう40年以上前に亡くなった母にとっては弟になる叔父のことが話題になったらしい。命日なのに自分は入院しているので、弟のお墓参りにいけない、と嘆いた母に、叔母は、「千の風になって」の話をしてくれたという。別にお墓にいかなくたって、ここにいてここでお祈りすればそれでいいのよ、と。 この歌、何気なく聞いていたが、日本語の詩や曲は、この本の著者・新井満がつくっているのだった。「千の風になって」は、著者の友人が妻をなくした時に、その追悼文章集に載っていた詩だったという。若くして妻を亡くしたといえば、奥野卓司や正木晃、ケン・ウィルバーなどを思い出した。 この詩は、いつからか多くの人々に愛されており、マリリン・モンローの25回忌の時や、映画監督、テロの犠牲になったイギリス青年や、あるいは9.11の犠牲になった人々の葬儀などにおいても朗読されているという。著者はネイティブ・アメリカンの歌ではないかと推測している。 思えば、今年で6回目になる9.11が過ぎ去り、まだ1000名を超える犠牲者の遺体も発見されていないという。あらためて、この「千の風になって」をおくることが、なにかの追悼の意を表わすことになるだろうか。a thousand windsDo not stand at my grave and weeps;I am not there, I do not sleep.I am a thousand winds that blow.I am the diamond glints on snow.I am the sunlight on ripened grain.I am the gentle autumn's rain.When you awaken in the morning's hush,Im the swift uplifting rushOf quiet birds in circled fight.I am the sogt stars that shine at night.Do not stand at my grave and cry;I am not there, I did not die.