『仮面ライダー大戦』白倉伸一郎に聞く、"平成vs昭和"のファン投票と結末を描く理由 「こんなに昭和が元気だとは思わなかった」
3月29日に公開される特撮映画『平成ライダーVS昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』の平成対昭和の結末を決めるファン投票が、3月1日より全国の劇場でスタートした。2月終了時点では、平成ライダーが77万1,824票(39.9%)、昭和ライダーが116万3,833票(60.1%)と昭和がリードしているが、これは2月9日より本作の公式サイト上でスタートしたインターネット投票のみの結果。ここに3月1日からの劇場投票が加わり、29日の公開初日に、平成ライダー勝利、昭和ライダー勝利という2パターンのエンディングのうち一方のみが上映され、その結末が明らかとなる。「ファン投票で映画の結末が決まる」という今回の企画は前代未聞であり、映画史上初の試み。しかもそれが、日本を代表するヒーロー『仮面ライダー』における平成と昭和の"勝ち負け"をあえて描くということもあり、発表直後から大きな話題となった。ファンの間でも「仮面ライダー同士を本気で戦わせる理由も勝ち負けを描く必要もない。VSシリーズは共闘でいい」「子供はこれまでのVSシリーズで、皆が力を合わせて悪を倒すという構図で満足」「昭和と平成では正義の定義も変化しているのだから面白い」「こういう企画は『仮面ライダー』にしかできないこと」など賛否両論だったが、約1カ月で200万近くの投票が集まり、結果として本作は大きな盛り上がりを見せていくことになる。ファン投票企画の発表時に東映の白倉プロデューサーは「仮面ライダー同士が戦うことに対しての反対意見もあります」と話し、賛否両論が起こることは想定していたという。では、それでいてなぜ平成と昭和の"勝ち負け"を描くことにこだわったのだろうか。白倉プロデューサーは、次のように語っている。「オール(『仮面ライダー大戦』)は、本当は勝ち負けを見せたいわけではないんです。今回は、投票していただくためのきっかけとして、勝ち負けを描こうとしています。ではなぜ投票なのかというと、平成ライダーとは何か? 昭和ライダーとは何か? という定義が明確ではないからなんです。後付け的に、1号からJまでが昭和、クウガから鎧武までが平成、とざっくりと分けていますが、なぜそう分けなければならないのか、どこが違うのか。内容的、思想的な違いは劇中で描いていきますが、それは見ていただいてのものであり、言わば抽象論ですから、口で言ってもしょうがないところもある。平成、昭和という呼び名はファンの方々から生まれたものなので、その定義をファンの方々に決めていただくことが一番いいなと思い、今回の企画を考えました」しかし、平成ライダーと昭和ライダーの定義を明確化するだけなのであれば、"投票"にこだわる必要はない。ファンに投票させるということにどのような狙いがあるのか。白倉プロデューサーは続ける。「"投票"ということは、各々の方々が改めて各作品を意識することになります。平成だ、昭和だと言ってるけど結局なんだっけ? 自分はどちらを応援しているんだっけ? どの作品が好きなんだっけ? と。もちろん世代的なことが一番大きくて、昭和ライダーを見て育った方は昭和に思い入れがあるし、今も平成ライダーを見ている方は平成に肩入れするということはあるでしょう。そういう中で、例えば平成ライダーに肩入れしている方には、改めて昭和ライダーって何だろう? というように、平成ライダーと昭和ライダーを今一度立ち止まって考えていただけるのかなと。お客さんに対してのオチ系かもしれないですが、それを構えてやってしまうのも無責任。ですから、"投票"を一種のお祭りイベントとして企画し、本当の目的はちょっとオブラートに包ませていただいて、という感じですね」そうして始まったファン投票は大きな盛り上がりを見せ、2月終了時点で、平成ライダーが77万1,824票(39.9%)、昭和ライダーが116万3,833票(60.1%)と昭和側が優勢。もっともここまではインターネット上のみの結果であり、『仮面ライダー』の主要層である子供たちの投票がすべて反映されているわけではない。だが、それでもこの昭和優勢の結果は、白倉プロデューサーにとっても想定外だったという。「正直ちょっと予想外の展開だったんですけども(笑) こんなに昭和派が元気だとは思わなかった(笑) ネットのユーザーは全体からすれば年齢が高めで、30代~40代が中心と聞いていましたが、そういう傾向もあるかなくらいの感覚でした。なので、テレビで告知した途端に平成派が覆すと思っていたんです。しかし、蓋を開けてみたら、思いのほか昭和派が活気づいていて。うちはどちらに肩入れしているわけでもなく、どちらにもがんばっていただきたい。(3月1日からの)劇場で投票が始まったら平成が有利になってくるんじゃないかなとは踏んでいますが、こうなるとちょっとわからないですね」この投票結果が、企画発表時に白倉プロデューサー自身が語っていた「平成の方が戦い方もバラエティ豊富で進化している分、当初は平成の圧勝かと目されていました。しかし藤岡弘、さんのご出演でそれは一転しました」とリンクする部分もあり、本郷猛/仮面ライダー1号を演じた藤岡の出演、そして昭和優勢という現時点の勢いは、作品にも伝わっているという。「だいぶ変わったと思います。この間、近所の定食屋で飯を食っている時に、隣に座っていた中年くらいの方々から、昭和ライダーが、平成ライダーがと聞こえてきて。『本郷猛が、サイクロン号が』とか『平成には負けないよな』ということを熱く語っていたんですよ。おっさん連中があの頃の熱い想いを未だに持っている――『仮面ライダー』って本当に根強いなと改めて感じています」では、もし昭和ライダー側が勝つという結果になった場合、子どもたちが信じているヒーロー、例えば現在放送中の『仮面ライダー鎧武/ガイム』へ少なからず影響はないだろうか。白倉プロデューサーは、次のように考えている。「投票は厳正にやっていますので、このまま昭和が勝ってしまうと、現行の作品もありますし、困る部分もあります(笑) ただ、平成が昭和を打ち負かせば子どもたちの夢が守られるということでもないし、親世代に子供世代が負けるというのは子供向け映画としてどうなのかということもあります。とはいえ、いいんですよ。逆に言えば、『仮面ライダー』が子どもたちだけのものではない、ということが改めて証明されるということもあるので」最後に白倉プロデューサーは、子どもたち、そして『仮面ライダー』のファンたちに以下のメッセージを送っている。「勝ち負けを決める、どちらかのエンディングが決まると、平成が勝った、昭和が勝ったとなりますが、作り手としてはどちらに転ぼうと、本当は昭和も平成もないんです。『仮面ライダー』というのは、平成も昭和もなくて、子供も大人もなくて、大げさにいうと全国民のものだという意識でやっております。この映画、この企画をきっかけにして平成や昭和という垣根がなくなるといいなと思っています」本作には昭和ライダー側から藤岡弘、が演じる仮面ライダー1号/本郷猛、速水亮が演じる仮面ライダーX/神敬介、菅田俊が演じる仮面ライダーZX/村雨良、そして平成ライダー側から半田健人が演じる仮面ライダーファイズ/乾巧、井上正大が演じる仮面ライダーディケイド/門矢士、白石隼也が演じる仮面ライダーウィザード/操真晴人など、過去作からも多数のライダーが出演。平成対昭和、本作の結末は完全にファンの手に委ねられる形となり、投票の結果は、3月29日の公開初日に明らかとなる。インターネット投票の締切は3月25日23:59、劇場投票の締切は3月19日。投票箱が設置されている劇場一覧は、本作の公式サイトまで。(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映AG・東映マイナビニュースより引用しました。